総括
FX「いつも蜜月ドルと人民元。米中関係悪化、中国株下落を厭わず」人民元見通し
(通貨4位、株価13位)
予想レンジ 人民元/円20.6-21.1
(ポイント)
*1993年以来の高値をつけてドルとともに反落
*中国、米に対するWTO紛争解決手続き開始
*習国家主席が米経済界代表と会談
*1-2月工業企業利益が回復
*最優遇貸出金利据え置き
*1-2月鉱工業生産と小売売上高は予想を上回る
*中国の1月米国債保有高は減少
*2月若者失業率は15.3%
*あいまいな香港国家安全条例が成立
*1-2月貿易は輸出入ともに増加
*2月消費者物価は上昇
*成長目標は5%、インフレは3%
*預金準備率に下げ余地
*米中対立は続いている
*米国はメキシコ経由の中国車の流入を避けようとしている
*中国への直接投資 前年から80%以上減少
*米国の輸入、中国が15年ぶり首位陥落
*格付見通しをネガティブにしているムーディーズの動きも気になる
(1993年以来の高値をつけてドルとともに反落)
年間4位で対円5.36%高、2位のドルが対円7.34%高と、いつものように寄り添って推移。人民元がドルを主軸としたバスケット制度をとっていることによる。3月はドルが6位と人民元は8位。対円では3月20日に1993年以来の21円台を一時つけた。
連続陽線は9日で終え、ドルの下落とともに人民元も下落。上海総合指数は0.61%高、香港ハンセン指数は3.84%安(年初来)。10年国債利回りは2.393%。
(上海総合指数は反落)
3月27日の上海総合指数は反落。3000ポイント割れ2993.14で大引けした。人民元安に伴う資金流出懸念に加え、中国政府のWTO提訴を受けた米中対立リスクが重しになった。両市場で9割の銘柄が値下がりした。米制裁懸念が燻り、半導体・再エネ・電池・EV・AI株などが軟調。一方で1-2月の工業企業利益の増加などが支援材料になり、医薬・食品など消費財関連株の一角が上昇した。
(中国、米に対するWTO紛争解決手続き開始)
世界貿易機関(WTOWTO)の中国政府代表部は、電気自動車(EV)産業における自国の利益を守るため、WTOで米国に対する紛争解決手続きを開始したと発表した。
中国は、米国のインフレ抑制法(IRA)に基づく「差別的な補助金」に異議を唱え、IRAにより、中国や他のWTO加盟国の産品が締め出されていると主張した。
(習国家主席が米経済界代表と会談)
習国家主席は米国のビジネス界、学術界の代表者らと会談した。
習主席は米中両国が分離する必要性はないと考えており、米国企業の中国への投資を望んでいると述べた。国内経済の問題も認め、当局は問題に対処できるし、中国経済はまだピークに達していないとした。
中国政府は外国企業を歓迎していることを示そうとしているが、米政府との激しい緊張、不安定な経済回復、コンサルティング会社への強制捜査が投資家の熱意を弱めている。
習主席は、中国と米国は「軽微な問題については相違を留保しつつ、主要な問題については一致点を探るべきだ」と述べた 。さらに、両国国民間のさらなる交流を期待すると述べた。
米のCEO グループには、クアルコム のアモン氏、フェデックスのサブラマニアム氏、ブラックストーン・グループ のシュワルツマン氏が含まれていた。
(中国工業企業利益が回復)
1-2月の工業部門企業利益は前年同期比10.2%増加した。不動産セクターの低迷が続いているにもかかわらず、景気回復の勢いが増していることを示唆している。
2023年通年は2.3%減だった。
年初の鉱工業生産が上振れ、さらに工業部門利益が回復したのは、経済が昨年の底入れを経て実際に緩やかな回復を遂げていることを示す新たなシグナルだと指摘されている。製造業の回復が続けば、今年の成長率目標達成に寄与する。
テクニカル分析(人民元/円)
1993年以来の21円台を付けた後、ドルとともに伸び悩む
日足、連続陽線は9日間で終わる。ボリバン2σ上限から中位へ。3月25日-27日の上昇ラインがサポート。3月22日-27日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く、20日線横ばい。
週足、3月18日週は、93年以来の高値更新、一時21円台。今週は3月18日週をここまで超えられず。1月1日週-3月11日週の上昇ラインがサポート。ボリバン2σ上限が上値抵抗。5週線下向く、20週線上向き。
月足、1月、2月は大陽線だが、3月は米ドル下落で人民元(米ドル主軸のバスケット制)も下落。ほぼ寄り引き同時。7月-1月の上昇ラインがサポート。ボリバン2σ上限が上値抵抗。
年足、4年連続陽線。22年-23年の上昇ラインがサポート。昨日、1993年以来の21円台のせ。
チーファンラマ
IMF専務理事の提言
IMFゲオルギエワ専務理事は中国は過去に機能してきた政策を堅持するか、それとも質の高い成長の新時代に向けて政策を刷新するかという「分かれ道」に直面していると述べた。
専務理事は「市場寄りの改革の包括的なパッケージがあれば、中国は現状維持シナリオよりもかなり速いペースで成長する可能性がある」と述べた。「不動産セクターをより持続可能な基盤に移行し、地方政府の債務リスクを軽減することなど、中国にとって最も差し迫った短期的課題」と強調した。
中国への海外投資の流れが枯渇する中、当局者らは外資系企業に対するさらなる保護を約束したと伝えられている。中国政府が今年約5%の成長目標を追求するためには、外国投資家や企業の信頼を高めないといけない。