スギホールディングス<7649>は27日、関西を中心に調剤薬局事業を展開するI&H(兵庫県芦屋市)を子会社化すると発表した。28日にはドラッグストア大手のウエルシアホールディングス<3141>とツルハホールディングス<3391>が経営統合に向けて協議を始めると正式に発表。今年に入って調剤薬局・ドラッグストア業界のM&Aの発表は3件目。年間18件のペースで、2021年から3年間の平均6件を大きく上回る。その背景は?
例年を上回るペースでM&Aが進行
スギHDが買収するI&Hは直近の売上高が2230億円、営業利益が42億6000万円、純資産が84億円。スギHDが同社株式の61.89%を8月30日に取得する予定だ。取得価額は非公表。I&Hは562店舗(2024年2月1日現在)の調剤薬局を展開するほか、介護・福祉、ヘルスケア、医師開業コンサルティングなども手がけている。
スギHDグループは関東、中部、関西、北陸、信州エリアで1703店舗(2024年1月末現在)を展開。約4000人の薬剤師と約500人の管理栄養士を擁し、調剤併設型ドラッグストアを強みとしており、買収によるシナジー効果を期待している。
今年は1月11日にファーマライズホールディングス<2796>が東名阪地域で調剤薬局を運営するGOOD AID(名古屋市。売上高31億4000万円、営業利益8100万円、純資産△5億3800万円)を完全子会社化すると発表したばかり。同業界では2カ月連続で買収があったことになる。
大手「狙い撃ち」の調剤報酬引き下げで危機感
調剤薬局・ドラッグストア業界で上場企業による同業の買収は、それほど多くない。2021年から2023年までの3年間で上場企業による調剤薬局・ドラッグストアを対象とした買収は、2021年が5件、2022年が6件、2023年が7件と微増しているが、2ケタには到達していない。なぜここに来て同業界の再編が加速しているのか?
2021年以降の大手調剤薬局・ドラッグストアによるM&A
公開日 | 取引総額 | 内 容 |
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2021年1月5日 | 非公表 | クオールホールディングス<3034>、調剤薬局11店を経営する勝原薬局を子会社化 |
2021年2月22日 | 非公表 | ココカラファイン<3098>、都内で調剤薬局2店舗展開の雅ファーマシーを子会社化 |
2021年7月15日 | 非公表 | クオールホールディングス<3034>、鹿児島・宮崎で調剤薬局8店舗運営のケーアイ調剤薬局を子会社化 |
2021年7月16日 | 未確定 | ウエルシアホールディングス<3141>、中国・四国でドラッグストア123店舗展開のププレひまわりを子会社化へ |
2021年7月27日 | 非公表 | ココカラファイン<3098>、三重県で調剤薬局経営のイー・ウェルなど3社を子会社化 |
2022年1月18日 | 217億3100万円 | ウエルシアホールディングス<3141>、ドラッグストアチェーンのコクミンなど2社を子会社化 |
2022年5月9日 | 非公表 | アインホールディングス<9627>、調剤薬局経営のファーマシィホールディングスを子会社化 |
2022年7月1日 | 非公表 | エフビー介護サービス<9220>、子会社のスマイル薬局をクオシアに譲渡 |
2022年7月22日 | 非公表 | ウエルシアホールディングス<3141>、沖縄県に初進出|ふく薬品を子会社化 |
2022年9月1日 | 非公表 | サンドラッグ<9989>、四国のドラッグストアチェーンの大屋を完全子会社化 |
2022年11月7日 | 非公表 | クオールホールディングス<3034>、関西で8店舗を運営する北摂調剤を子会社化 |
2023年1月6日 | 非公表 | クオールホールディングス<3034>、栃木県を中心に調剤薬局38店舗を展開するパワーファーマシーを子会社化 |
2023年10月30日 | 非公表 | ツルハホールディングス<3391>、長崎県五島市の福江薬局を子会社化 |
2023年11月17日 | 非公表 | ウエルシアホールディングス<3141>、長野県中信エリアで調剤薬局21店舗展開の「とをしや薬局」を子会社化 |
2023年11月21日 | 非公表 | クオールホールディングス<3034>、鹿児島県で調剤薬局経営のアートなど3社を子会社化 |
2023年12月1日 | 非公表 | メディカル一光グループ<3353>、調剤薬局子会社のエファーをキセンに譲渡 |
2023年12月8日 | 非公表 | クオールホールディングス<3034>、鹿児島県で調剤薬局を5店舗展開のケーアイ調剤を子会社化 |
2023年12月26日 | 非公表 | スギホールディングス<7649>、漢方相談薬局を全国16店舗運営の薬日本堂を子会社化 |
2024年1月11日 | 非公表 | ファーマライズホールディングス<2796>、東名阪で調剤薬局を運営するGOOD AIDを子会社化 |
2024年2月27日 | 非公表 | スギホールディングス<7649>、阪神調剤薬局を運営するI&Hを子会社化 |
2024年2月27日 | - | ツルハホールディングス<3391>、ウエルシアホールディングス<3141>を株式交換で完全子会社して経営統合 |
理由は大手調剤薬局での業績の伸び悩みだ。直近の売上高営業利益率は日本調剤が前年比0.51ポイント減の1.91%、アインホールディングスが同0.28ポイント減の4.18%、スギHDが同0.19ポイント減の4.55%と、軒並み落ち込んでいる。これは22年4月に調剤報酬が引き下げられた影響が大きい。
とりわけ300店以上を運営する大手調剤薬局では、調剤基本料が下げられたため深刻だ。スギHD、I&Hともに300店超を展開しており、調剤報酬の引き下げが再編を後押ししたと言えるだろう。高齢化が進み、政府は医療費圧縮に躍起になっている。大手調剤薬局は経営に余力があるため、一層の「狙い撃ち」も懸念されそうだ。こうした「逆風」を受けて、同業界の再編が加速していく可能性は高い。
この3年間で最も買収件数が多かったのはクオールホールディングス<3034>の6件。次いでウエルシアホールディングスの4件、ココカラファイン<3098>とスギHDの各2件の順だった。
文:M&A Online