ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「世界は柔軟な為替相場を支持。日本だけが口先介入を実弾に変えるのか」

ドル円=152-157、ユーロ円=162-167、ユーロドル=1.04-1.09

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨11位(10位)、株価2位(2位)、世界は柔軟な為替相場を支持。日本は口先介入が実弾に変わりうるか、貿易収支は改善」
 中東情勢の緊迫化で先週は一時円高に振れる局面もあったが、週足は陽線、年初来では12通貨中、11位で最下位のトルコにも迫られている。有事の円買いの面影はないが、有事の株安はあり、先週の日経平均は6.21%安で世界で最弱の株式市場となった。有事の円買いが消えたのは貿易赤字の影響だ。


さて世銀IMF総会、G7、G20財務相・中銀総裁会議へ現在の円安是正にため乗り込んだ日本だが結果は出なかった。

①日韓米財務相会合=円安懸念共有、協議を継続
②G7声明、お決まりの為替文言挿入だけ
③G20は声明無し=議長はドル高は問題なれど介入には否定的

さらにIMF日本担当者は、「円安は日本の経済成長にプラスの影響を与えた」、また最近の急激な円安によって日本当局の介入は正当化されるかとの質問に対しては「柔軟な為替相場が世界経済に役立っていると確信している」と述べた。


介入は「過度な投機的な動きに限られる」のだろうが極めて主観的な文言で曖昧だ。介入は実施したとしても持続性はないだろう。日本が本当に日本経済に恩恵があるかどうかがわからない円高を望むなら、貿易赤字を縮小しなければならない。3月貿易統計が黒字となったことは円安を抑制する兆しとなる。

今週は日銀政策決定会合、月例経済報告、日銀の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」の発表がある。植田日銀総裁は、「日銀が慎重に政策を進めるとしながらも、基調的な物価トレンドが改善すれば、さらに金利を引き上げる公算が大きい」と指摘している。


*米ドル「通貨首位(2位)、株価(NYダウ)13位(16位)、ドル高で弱音を吐かなくなった米国。今週はGDP」
ドルが、2年連続最強通貨であったメキシコペソを抜き去りトップへ浮上した。中東緊張での有事、商品価格上昇、FRB利下げ観測後退などのドル買いが続いた。ただ株価は「利下げ後退」観測で日経平均ほどではないが先週は弱かった。

ただ以前、例を挙げれば1ドル110円台であった2017年のベージュブック(ユーロドルはほぼ同じレベルだった)ではドル高の弊害が、製造業や観光業に及んでいるという表現であったが、現在の150円台のドルについては何も触れられていないのは驚きだ。為替について言及なくドルの「ド」の字もベージュブックには書かれていない。対ユーロ、対ポンドではほぼ同水準。対人民元では3.5%程度のドル高だ。対円では36%のドル高だが、特に触れていない。

ドル高がインフレを抑制するためもあるが、経済成長、雇用も回復しているので問題になっていない。今週の米国1Q・GDPで確認したい。

G7、G20などでも、円について議論されなかったのは、米国経済の好調さもあるだろう。介入でリズムを壊されたくない思いもある。強いてドル高是正を上げるなら、それは日本のためではなく、ドル債務を持つ新興国がドル高で債務返済に苦しむことだろう。ただそれも大きな問題とはなっていない。円安是正があるとしたら、他国の通貨安を嫌うトランプ氏が選挙戦で勢力を増した時か。

*ユーロ「通貨5位(5位)、株価6位(7位)DAX)、ECB内で6月利下げ観測強まる、ただユーロはじり安だが大崩れしない」
インフレ低下、低成長でユーロ安が進んでいるが、全体では年初来で5位と大崩れはしていない。貿易黒字と、経済への長期的な信頼感が支えているのだろう。
ラガルドECB総裁は、「欧州経済を1年以上にわたりほぼ停止状態に陥らせている景気の低迷は約20年ぶりである」、ただ「ユーロ圏20カ国の生産は回復しており、回復の明らかな兆候がある」と述べた。「われわれは景気後退には陥っていないが、成長は非常に遅く、非常に小さい」と付け加えた。
 他のECBの各国中銀総裁達も6月利下げに概ね傾いている。

デギンドスECB副総裁は、ECBは6月に利下げを実施する可能性を「非常に明確」に示していると指摘。ビルロワドガロー仏中銀総裁は、6月の利下げに「極めて大きなコンセンサス」があると言及。タカ派として知られるクノット・オランダ中銀総裁とナーゲル独連銀総裁も6月の利下げに賛同を示している。ナーゲル独連銀総裁は、6月に最初の利下げが行われる見込みとした上で、その後は「慎重に」動く可能性があるとし、入手される経済指標に基づいて会合ごとに金利を設定する必要があると強調。

レーン・フィンランド中銀総裁も「インフレ率が持続的に2%目標に収束し続けると確信できれば、6月には利下げに向け金融政策スタンスを緩和させ始める機が熟する」とし、「これは言うまでもなく、地政学的状況、ひいてはエネルギー価格にさらなる後退がないことを前提としている」とした。

*ポンド「通貨4位(4位)、株価9位(9位)、中銀総裁・副総裁がハト派姿勢示す」
ハト派的材料と発言が続き、ポンドは対ドル、対ユーロで下落、対円ではこじっかり推移している。英賃金上昇率の鈍化が続き、12─2月は前年比6.0%、22年7-9月以来の低水準だった。
3月の小売売上高は前月比変わらずだった。インフレ減速にもかかわらず消費は低迷した。予想は前月比0.3%増加だった。1Qは多くの小売企業にとって期待外れの結果となった。インフレ率の低下と国民保険料の2%引き下げが1月の給与明細に反映されたが、消費の持続的な回復にはまだつながっていない、と指摘された。

ベイリー中銀総裁は、インフレ率は予想通りおおむね低下しており、来月には目標とする2%の水準に向けて大きく低下するとの見通しを示した。 3月の消費者物価上昇率は前年比3.2%と2月の3.4%から鈍化した。
ラムスデン副総裁は、向こう3年間インフレ率は目標とする2%近辺で推移し、インフレが高止まりするリスクは後退するとの見方を示した。
副総裁は「過去数カ月、インフレ動向の改善が下支えとなり、国内の持続的なインフレ圧力へのリスクが後退しているという自信を深めている」と述べた。エネルギー価格の下落を主な要因とし、インフレ率が4月に目標の2%に達するか、もしくはそれを下回るとする一方で、今年末までには3%近くまで上昇すると予想している。

一方、タカ派もおり、グリーン政策委員は、賃金上昇率とサービス価格の上昇率が高すぎるため、利下げを検討できないと述べた。

*豪ドル「通貨8位(8位)、株価15位(10位)、豪ドル円は100円から遠ざかる。雇用弱く、倒産件数増加」
引き続き、指標弱く冴えず。年間では8位。3月雇用統計は、就業者数が予想外に減少し、失業率が上昇した。就業者数は前月比6600人減少。2月は11.8万人増。
失業率は前月の3.7%から3.8%に上昇した。失業率は6月までに4.2%、年末までに4.3%に上昇するとみられている。また高金利を背景に売上高や雇用の指数が横ばい、価格上昇圧力はやや緩和してきている。
4月消費者信頼感指数は、前月から2.4%低下して82.4だった。3月企業景況感指数は前月比1ポイント低下のプラス9となった。

景気回復のため、最大貿易相手国の中国との関係を強化、貿易量を増大させようとしているが、軍事面では中国を仮想敵国としているだけに思うように話が進まない。
政府は今会計年度(6月30日終了)の企業の破産申請件数が11年ぶりの高水準に達するとの見通しを明らかにした。3月までの9カ月間に破産手続きに入った企業は7742社と、前年同期から36.2%増えた。
個人消費の低迷とコスト高で一部の豪企業は事業の縮小を余儀なくされ、資金需給の逼迫により企業の借り入れは条件が厳しくなり、コストも上昇している。

*NZドル「通貨9位(9位)、株価14位(14位)、インフレ低下せず。ただ高金利で経済に対する懸念あり」
NZドルは豪ドルとともに低迷、株価指数も強くはない。豪と同様に最大貿易相手国の中国の景気減速が影響しているのだろう。
1Qの消費者物価上昇率は前期比0.6%で、2023年4Qの0.5%から小幅に加速。 前年比では4.0%上昇。中銀は2月の政策会合で、インフレ率が1Qに3.8%に低下し、今年後半には目標レンジの1-3%に回帰すると予想していた。 住居費と家庭の光熱費が特に上昇した。家賃が1999年9の統計開始以来最も速いペースで上昇している。

消費者物価の上昇でNZドルも対円で90円台から91円台、対ドルで0.58台から0.59台へ上昇したが、中東情勢の緊迫化、ドル金利の上昇などで、上昇は続かなかった。
中銀は、消費者物価上昇率を目標レンジ(1-3%)に戻すため、金利を制約的な水準で当面維持する必要があるとの意見で一致している。
NZの銀行のエコノミストたちは、政策金利が2024年も5.5%にとどまり、2025年2月から低下すると予想している。
しかし、これは他の先進国に比べてはるかに長期間にわたり制限金利の下で苦しむことを意味するため、NZ経済に対する懸念は高まるだろう。

テクニカル分析

*ドル円「有事の円買いは一時的。再び下ヒゲ長く」
日足、154円後半で推移していたが、イラン・イスラエル紛争で一時153.584まで下落。ただ4月19日終値はほぼ寄り引き同時。下ヒゲが長い。5日、20日線上向き変わらず。
週足、年初来高値圏で推移。4月8日週-15日週の上昇ラインがサポート。ボリバン2σ上限が上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、3か月連続陽線。4月もここまで陽線。1月-3月の上昇ラインがサポート。5か月線、20か月線上向き。
年足、3年連続陽線、今年もここまで陽線。151円後半がトリプルトップ。22年-23年の上昇ラインがサポート。1985年-2022年の下降ラインが上値抵抗。


*ユーロドル「ボリバン3σ下限へ急落、5日線は上向く」
日足、4月9日の長い上ヒゲから3連続陰線で4月12日にボリバン3σ下限へ。雲の下。その後も1.06台での推移が続く。4月16日-19日の上昇ラインがサポート。4月18日-19日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、雲中へ大きく沈む。ボリバン2σ下限下抜く。10月2日週-4月15日週の上昇ラインがサポート。4月8日週-15日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20日線下向き。
月足、2月は下ヒゲ、3月は上ヒゲでほぼ寄り引き同時。雲の下。4月は2月-3月の上昇ラインを下抜ける。12月-3月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向く、20か月線上向き。
年足、2023年は陽線。ドルより強かった。22年はボリバン2σ下限到達し長い下ヒゲでサポ―ト。今年は陰線スタート。22年-23年の上昇ラインを下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。


*ユーロ円「ボリバン3σ下限から反発。下ヒゲ長い」
日足、ボリバン3σ下限へ急落。ただそこからは盛り返しボリバン上位へ。4月12日-19日の上昇ラインがサポート。4月9日-19日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン2σ上限から小反落。4月8日週-15日週の上昇ラインがサポート。4月8日週-15日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、3か月連続陽線。今月は伸び悩むも陽線は維持。2月-3月の上昇ラインがサポート。2008年8月-2024年3月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線上向き。
年足、4年連続陽線。24年も陽線スタート。22年-23年の上昇ラインがサポート。08年-23年の下降ラインが上値抵抗。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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