ラーメン店の休廃業が過去最多になった。「国民食」となり行列ができる人気店がある一方で、客足が遠のいていないにもかかわらず原材料高や人手不足で閉店せざるを得ないケースが相次いでいるのだ。ラーメン店が生き残るためには、どうすればいいのか?
中小零細は開店資金の削減で生き残れ!
東京商工リサーチの調査によると、2023年のラーメン店倒産は45件で、前年の2.1倍に増えた。負債額1000万円以上が調査対象なので、同調査で明らかになった以外にも中小零細ラーメン店の倒産が多数あったと考えられる。休廃業・解散も前年比31.8%増の29件。倒産・休廃業ともに、2009年以降の15年間で最多となった。
同調査によると、食材などの原材料費や水道・光熱費の上昇、人手不足に伴う人件費高騰といったコストアップ要因が資金繰りを圧迫しているという。こうした運転費用のコストアップ要因を回避するのは難しい。となれば、抑えることができるのは開店資金だ。
ラーメン店は一般的な外食産業と比べて大がかりな店舗や調理施設が必要なく、少額の開業資金で参入できる。それでも20坪(66㎡)程度の店舗では賃貸契約や内装工事、厨房設備費、什器、食器などで1000万〜1500万円程度の初期投資が必要だ。ここを節約できれば運転資金に余裕が持て、倒産や休廃業のリスクを引き下げることができる。
「運転資金が植える中、開業資金をカットしたところで時間稼ぎの延命策に過ぎない」との見方もあろう。しかし、大手ラーメンチェーンでは主力商品で1000円近くまで値上がりが進んでおり、中小零細のラーメン店でも値上げが容認される雰囲気になりそうだ。そこまで資金繰りが持ちこたえれば、コスト増の環境下でもこの先の自社商品の値上げで生き残りの可能性は高まる。
2019年8月にオープンした兵庫県川西市の川西麺業では、カウンター5席の店舗で起業。開業資金はわずか40万円と一般的なラーメン店の25分の1以下で済ませたという。店舗の家賃は約4万円。エアコンに約6万円をかけただけで、調理器具は家庭用のカセットコンロとIHヒーターで光熱費は月に1万2000円ほど。
大手はM&Aで「業界再編」へ
それにもかかわらず固定客がつき、2023年3月には阪急・能勢電鉄川西能勢口駅に隣接した大型ショッピングセンター「アステ川西」に移転し、コロナ禍を乗り越えて営業を続けている。原価率は一般的な飲食店と同じ3割程度と、提供するラーメンにかけるコストは削減していない。食にかかわらないコストだけを徹底的に削ったわけだ。
ただ、そうしたローコスト戦略が採れるのは個人経営の零細企業だけだ。大手ラーメン店が生き残るには別の戦略が必要になる。それがM&Aによる規模拡大だ。実際、ラーメン店を対象にしたM&Aは活発になっている。
吉野家ホールディングス<9861>は2016年に せたが屋(東京都世田谷区)、2019年に「ばり嗎(ばりうま)」「とりの助」などを展開するウィズリンクホールディングス(広島市)を買収。吉野家は2023年2月期から2025年2月期までの3カ年の中期経営計画でラーメン業態を次なる柱と位置付け、中期経営計画の3年間で成長の基盤づくりを進める方針だ。
2023年には「名代富士そば」を運営するダイタンフード(東京都渋谷区)が荻窪ラーメンの老舗「春木屋」を、フルキャストホールディングス<4848>が「らあめん花月嵐」を展開するグロービート(東京都杉並区)を、カレーハウス「CoCo壱番屋」を展開する壱番屋<7630>が「麺屋たけ井」を展開する竹井(京都府城陽市)を、それぞれ買収するなど有名ラーメン店の買収ラッシュが起こっている。
しばらくは原材料費や光熱費、人件費の高騰は止まりそうにない。経営が困難になったラーメンチェーンが同業大手や異業種から買収される「業界再編」の動きは、これからも活発になりそうだ。
文:M&A Online