税金が高すぎて手取りが少ない……と不満を感じている人は多いでしょう。日本では税金の国民負担率が50%に近づいており、各自で負担緩和のための対策が求められている状況です。本記事では年収別手取り額を紹介し、サラリーマンでもできる税金対策や不動産投資を利用した節税方法について解説します。
目次
1.年収別の手取り額と税額の早見表
財務省が公表している「国民負担率(対国民所得比)の推移」によると、2023年の国民負担率(租税負担率と社会保障負担率の合計)は46.8%です。最初の大阪万博が行われた1970年が24.3%だったので、当時より約2倍に負担が増えたことになります。
例えば、以下の前提条件でシミュレーションを行うと、年収別の手取り額と税額は下表のようになります。
【前提条件】
東京都在住、40歳、独身(扶養親族なし)、サラリーマン、控除される項目は「給与所得控除」「基礎控除」「社会保険料控除」
▽年収別税額と手取り年収(千円以下四捨五入)
年収 | 所得税 | 住民税 | 社会保険料 | 手取り年収 |
---|---|---|---|---|
300万円 | 5.6万円 | 11.7万円 | 42.5万円 | 240.2万円 |
400万円 | 8.4万円 | 17.3万円 | 60.2万円 | 314.1万円 |
500万円 | 11.8万円 | 24.0万円 | 72.6万円 | 391.6万円 |
600万円 | 15.0万円 | 30.5万円 | 88.5万円 | 466.0万円 |
700万円 | 18.4万円 | 37.3万円 | 104.4万円 | 539.9万円 |
800万円 | 22.1万円 | 44.7万円 | 120.4万円 | 612.8万円 |
900万円 | 26.2万円 | 52.9万円 | 132.8万円 | 688.1万円 |
1,000万円 | 30.5万円 | 61.5万円 | 146.9万円 | 761.1万円 |
1,100万円 | 34.6万円 | 69.7万円 | 164.6万円 | 831.1万円 |
1,200万円 | 39.2万円 | 78.9万円 | 173.5万円 | 908.4万円 |
1,300万円 | 43.7万円 | 88.0万円 | 182.3万円 | 986.0万円 |
1,400万円 | 47.7万円 | 95.8万円 | 203.6万円 | 1052.9万円 |
1,500万円 | 51.6万円 | 103.7万円 | 224.8万円 | 1119.9万円 |
1,600万円 | 56.1万円 | 112.7万円 | 235.4万円 | 1195.8万円 |
1,700万円 | 60.6万円 | 121.6万円 | 246.0万円 | 1271.8万円 |
1,800万円 | 65.6万円 | 131.6万円 | 246.0万円 | 1356.8万円 |
1,900万円 | 70.6万円 | 141.6万円 | 246.0万円 | 1441.8万円 |
2,000万円 | 75.6万円 | 151.6万円 | 246.0万円 | 1526.8万円 |
2.サラリーマンでもできる税金対策10選
税金負担を少しでも抑えるためには、税制上で用意されているさまざまな控除や非課税制度のうち、利用できるものは、確実に利用する必要があります。
サラリーマンでも以下の10の税金対策を行うことができるので、自分に該当するものがないかチェックしてみましょう。詳しい控除の金額や手続きについては、記載した国税庁などの公式ページでご確認ください。
2-1.配偶者控除・扶養控除
配偶者控除は、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定の金額の所得控除を受けられる制度です。
扶養控除は、同じく所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定の金額の所得控除を受けられる制度です。
2-2.生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険料控除は、納税者が支払った生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料のうち一定の金額を所得から控除できる制度です。最大で12万円まで控除できます。
地震保険料控除は、納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料または掛金を支払った場合に、一定の金額を所得から控除できる制度です。ただし、平成19年から損害保険料控除は廃止されており、現在は以下の条件を満たす地震保険料を経過措置として控除できます。
- 平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済期間の開始期間が平成19年1月1日以後のものは除く)
- 満期返戻金等があるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約
- 平成19年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの
2-3.ふるさと納税(寄附金控除)
寄附に応じて豪華な返礼品をもらえることで人気が高まっているのが「ふるさと納税」です。自分で選んだ自治体に対して寄附を行った場合に、寄附した額のうち、2,000円を超える部分について所得税および住民税から控除できる制度です。
2-4.新NISA
令和6年1月からNISA(少額投資非課税制度)が拡充されて、非課税で投資できる金額が大幅に増えました。1年で最大360万円まで非課税による投資が可能です。非課税で保有できる総枠は1,800万円で、売却益や配当金等にかかる20.315%(復興特別所得税含む)の税金が免除されます。
2-5.iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛け金を拠出し、運用した収益と併せて年金として受け取る個人年金制度です。年金であるため、原則として60歳までは引き出すことができません。
iDeCoは掛金、運用益、給付を受けるときなどに税制上の優遇措置を受けることができます。公的年金だけでは不安な人は、加入を検討する価値がある制度といえます。
2-6.医療費控除
医療費控除は、その年の1月1日~12月31日の間に、自分および生計を同じくする配偶者やその他親族のために支払った医療費が一定の金額を超えた場合に、医療費の金額を基に計算される金額を所得控除できる制度です。
計算式は「実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円」です。最高200万円まで控除できます。
2-7.セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制は、健康の保持増進および病気を予防するために一定の取り組みをしている人が、平成29年1月1日~令和8年12月31日までの間に、自分または自分と生計を同じくする配偶者その他親族のために「特定一般用医薬品等購入費」を支払った場合、一定の金額を控除できる制度です。ただし、医療費控除との選択制のため、両者を併用することはできません。
国税庁 №1129「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき」
2-8.住宅ローン控除
住宅ローン控除は、個人が住宅ローン等を利用してマイホームを新築、取得、増改築等をしたときに、一定の取得費用を居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除できる制度です。金額は令和4年1月1日~令和7年12月31日までの期間に、自分の居住の用に供したとき、一定の要件でその取得に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基に計算します。
国税庁 №1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合」
2-9.特定支出控除
特定支出控除は、給与所得者が通勤費、職務上の旅費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、職務必要経費(図書費、衣服費、交際費等)の特定支出をした場合、その年の特定支出の合計額が、「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」(その年の給与所得控除額の2分の1)を超えるとき、確定申告により、その超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引ける制度です。
2-10.ひとり親控除・寡婦控除
令和2年の法改正で寡夫控除が廃止になり、納税者がひとり親(シングルマザー、シングルファーザー)である場合に、一定の金額の所得控除を受けられる「ひとり親控除」に変わりました。寡夫控除では控除金額が27万円で、特別寡婦控除の35万円と差があり不公平との声があったため改正されたものです。新しい制度の控除額は35万円で、男女の格差はなくなりました。
寡婦控除は、納税者自身が寡婦であるときに、一定の金額の所得控除を受けることができる制度です。寡婦とは「ひとり親」に該当せず、下記の条件に当てはまる人です。
- 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
- 夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
ひとり親控除の新設に伴い、これまでの寡婦控除は「扶養する子どもがいない寡婦の制度」となりました。
3.不動産投資を利用した税金対策も
不動産投資を利用した税金対策もあります。不動産投資が節税になる仕組みとシミュレーションを見てみましょう。
3-1.不動産投資で節税できる仕組み
不動産投資で節税する仕組みとしてよく知られているのが「減価償却費」を使った方法です。減価償却とは、物件の購入費用を減価償却期間で割った金額を、1年ごとに経費として計上する会計処理を指します。物件購入費はすでに支払っているので、減価償却費は実際の支出を伴わずに経費計上することが可能です。
したがって、手元に現金が残るにも関わらず、帳簿上は経費として計上できるため、利益を減らすことができるのです。さらに、減価償却費を計上した結果赤字になれば、「損益通算」で給与所得から赤字分を差し引くこともできます。
3-2.不動産投資を利用した節税シミュレーション
不動産投資を利用してどの程度節税できるのか、減価償却費を例にとってシミュレーションしてみましょう。
【計算例】
マンション購入価格5,000万円、建物価格3,000万円、減価償却期間10年、給与所得300万円、不動産の年間収益200万円
3,000万円÷10年=300万円(年間の減価償却費)
賃貸経営の年間収益200万円-300万円=▲100万円(不動産所得)
給与所得300万円-100万円=200万円(課税所得)
▽所得税税額表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
・課税所得300万円の場合(不動産投資をしていない場合)
300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円(所得税額)
・課税所得200万円の場合(不動産投資で100万円赤字だった場合)
200万円×10%-9万7,500円=10万2,500円(所得税額)
不動産投資の赤字分を損益通算することで、10万円所得税を節税できることになります。
ただし、節税目的だけで不動産投資を行うことはおすすめできません。収益を上げることが不動産投資の本来の目的であるため、節税は「できるケースがあれば利用する」程度に考えたほうがよいでしょう。
4.税金対策で負担を軽減しよう
政府がプライマリーバランスの黒字化を目指す以上、「税金が高すぎる」という状態は当分続くものと考える必要があります。
国民としては、収入をアップするとともに、活用できる税優遇制度は全て使って、少しでも税負担を軽くする努力が求められます。サラリーマンでもできる税金対策や、不動産投資を利用した節税などで負担の軽減を目指しましょう。
※記事中の早見表やシミュレーションは一例であり、実際の計算結果は個人の条件によって異なる場合があります。参考程度にご覧ください。
(提供:Dear Reicious Online)
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