ニデック、第一生命と何が違う?

ここで思い出されるのは昨年の2つの事例。

その一つはニデックによる中堅工作機械メーカー、TAKISAWAの買収。もう一つは福利厚生代行のベネフィット・ワンをめぐる争奪戦で、先にTOBを実施中のエムスリーに対し、第一生命ホールディングスが対抗TOBを仕掛けた(昨年12月に予告し、今年2月に実施)。

いずれの案件も相手の同意を得ていない段階でTOB実施の予告を発表したが、最終的にニデック、第一生命はそろって買収を成功させた。

では、同じ“同意なき買収”でありながら、今年のブラザー、AZ‐COM丸和の場合と一体何が異なるのか。

実は、ニデック、第一生命のケースをみると、TOB開始時点で最終的に相手方の賛同を取り付けているのだ。これに対して、ブラザーの提案は退けられ、TOBを始めたAZ‐COM丸和も現時点で賛同を得られる見通しが立っていない。

例えば、ベネワンの一件。ベネワンはエムスリーのTOBに対する当初の賛同を撤回し、より有利な条件を提示した第一生命の支持に回った。

“後出し”有利のセオリーが覆る

2020年秋から暮れにかけて家具・ホームセンターの島忠をめぐり、ホームセンター大手のDCMホールディングスと家具大手のニトリホールディングスが争奪戦を繰り広げたことがある。

この時も、後出しじゃんけんの形で参戦したニトリがTOBを制した。だが、今回のブラザーのケースではこの“セオリー”が覆ることになった。

AZ‐COM丸和のケースも、仮に当初から敵対的TOBを辞さない覚悟だったとしても、対象企業の株価高騰は想定外。対抗TOBの可能性も捨てきれず、戦略の練り直しが避けられそうにない。

文:M&A Online