スタンダードの未達企業に集中

東証市場再編があった2022年以降のTOB案件を対象に、上場維持基準への抵触を主な理由とするケースを適時開示資料をもとに調べたところ、2022年5件、23年2件で推移し、24年はここまで2件が認められた(一覧表参照)。

2022年は年間のTOB件数が59件(届け出ベース)だったので、その1割近くを占めたことになる。2022年の5件をみると、そろって上場維持基準の一つである流通株式比率を達成することが容易ではないことをTOB受け入れの理由に挙げている。また、ホウスイ(当時東証1部上場)を除くと、いずれもスタンダード上場企業。TOBの内容は4件が親会社・筆頭株主による完全子会社化、1件がMBOだった。

◎2022年~:上場維持基準への抵触を主な理由としたTOB一覧

TOBの対象者 内容
2022年 ホウスイ 親会社の中央魚類による完全子会社化
チヨダウーテ 筆頭株主のドイツ企業による完全子会社化
サコス 親会社のニシオホールディングスによる完全子会社
倉庫精練 親会社の丸井織物による完全子会社化
アイ・テック MBOで株式を非公開化
2023年 ロックペイント MBOで株式を非公開化
AmidAホールディングス ラクスルによる完全子会社化
2024年 東邦金属 親会社の太陽鉱工による完全子会社化
日本ハウズイング MBOで株式を非公開化

翌2023年の2件はスタンダード上場のロックペイントのMBOと、グロース市場上場のAmidAホールディングスに対するラクスルの完全子会社化案件。いずれも流通株式比率の未達状態がきっかけとなった。

プライム上場の基準未達企業に対しては、本来必要な審査を免除してスタンダードに移行できる救済措置を講じた(昨年10月に177社が移行)。救済措置の適用を申請しなかったプライム企業があるほか、スタンダード、グロースではそもそも救済措置がなく、タイムリミットを見据え、各社は上場維持に向けて対策に追われている。

その過程で、真逆ともいえるTOB受け入れやMBOによる上場廃止も選択肢の一つとなりそうだ。

文:M&A Online