石油元売り大手の出光興産<5019>は2022年に子会社化した西部石油(東京都千代田区)の事業転換に一歩踏み出した。

同社は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの固定化と、微生物の代謝を活用した食料などの製造に関して、京都大学発のスタートアップ Symbiobe(シンビオーブ、京都市)との間で、新規事業の創出と協業について合意。

これを受け西部石油の山口製油所(山口県山陽小野田市)の敷地内に、同事業のための実証設備を設置する。

西部石油では2024年3月に山口製油所での精製を停止しており、今回の取り組みは石油に代わる新規事業の開発を進める「グリーントランスフォーメーション西部(GX西部)」の取り組みの一環となる。

このあと2030年ごろまでに製油所設備の撤去を完了し、新規事業用地を確保したうえで、今回のような実証設備の設置や、カーボンフリー電力の供給、資源の再利用などの事業を立ち上げる。

この先も新規事業開発を目的としたスタートアップとの協業は続きそうだ。

2027年から小型商業プラントの運転を開始

Symbiobeは、光合成を行うことでCO2などの温室効果ガスからアミノ酸などを製造する微生物(紅色光合成細菌)の高機能化や培養、後処理に関する知見を持つ。

今回の協業によって、Symbiobeが菌株の開発をはじめ食料や環境関連物質の開発などに取り組み、出光興産が量産化や生産性、採算性などの検証を行う。

2024年に量産技術確立に向けたベンチプラント(小規模製造施設)を建設し、2026年に生産性や採算性の確認を行う小型商業プラントを建設。2027年から運転を開始し、その後、国内外に同様のプラントを複数カ所に建設する。

2030年代に地域産業のハブ拠点に

出光興産は石油製品需要の減少や世界的な脱炭素化への流れなどを踏まえ、2022年に西部石油が製造した石油製品を買い取る製品引取契約を終了することを決定。

これに伴って、西部石油を子会社化し、山口製油所の精製機能を停止するとともに、同製油所の事業転換のための新規事業の開発を進めることにした。

当面は、油槽所機能、備蓄事業、ソーラーパネル発電事業を継続しつつ事業開発を進め、2030年代には地産地消型のカーボンフリーエネルギーの供給や、資源の循環などを実現し、地域社会に貢献できる地域産業ハブ拠点になることを目指すという。

西部石油は、1962年に西日本石油として発足し、1967年にはシェル石油が資本参加。山口製油所の精製機能は、原油処理能力で日量12万バレルに達していた。

出光興産は2019年に昭和シェル石油と経営統合しており、西部石油からは揮発油や灯油、軽油などの燃料油とベンゼンなどの化学品を年間約500万キロリットル引き取っていた。

文:M&A Online