本記事は、高橋慶行氏の著書『投資1年目の教科書』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
リスクを恐れないようにしよう
- この項目の3つのポイント
- ノーリスクはやめよう。ノーリスクは危険。
- 儲けるには、必ずリスクを取らなければならない。
- リスクとリターンの関係を理解しよう。
「リスクがあるからやめておこう」
社会人であれば、必ず一度は聞いたことがあるフレーズです。
リスクという言葉は、ふだんの会話では「危ないもの」とか「避けるべきもの」だという意味合いで使います。「ノーリスク」といえば、「危なくないもの」とか「安全なもの」という印象を持ってしまっている人が多いのです。しかし投資家として自立していきたいのであれば、この考えは改めるべきです。
投資の世界でも、「元本保証」という条件で金融商品を販売している業者がいます。しかしインターネット上には「元本保証」「返金保証」といった日本人が魅了されやすいフレーズを巧みに扱い、セールスに持ち込む詐欺まがいの会社もあるので注意しなければいけません。
ここで断言しますが、投資のプロの世界では、「リスク」という言葉を「危ないもの」とか「避けるべきもの」という意味では使いません。私たちは、リスクとは「変動率」のことを指して、そう言います。要するに「ブレ幅」のことです。
ハイリスク、ローリスクと言いますが、ブレ幅が大きいのがハイリスク、小さいのがローリスクです。ハイリスク・ハイリターンならば、ブレ幅が大きい分だけ大きなリターンがあり得る、ローリスク・ローリターンならブレ幅が小さい分だけリターンも小さくなるという意味です。
問題の「ノーリスク」は「ブレ幅ゼロ」のことです。リターンは、ブレ幅から生まれるものですから、ノーリスクでリターンが得られることはあり得ません。投資の世界ではノーリスクは、ノーリターン、すなわち「儲からない」という意味です。ですから「元本保証で資産が倍増する」という宣伝文句には、何か裏があるのではないかと疑うべきなのです。けっして、ノーリスク=安全という意味ではありません。注意しましょう。
繰り返しますが、リスクというのはブレ幅のことです。つまり価格が上限変動をするという意味であり、それ自体は怖いものではありません。トレードにおいては、価格の上下の変動こそが儲けを得るための源泉です。つまりリスクは、儲けの源泉なのです。当たり前ですが、どんなに凄腕のプロトレーダーがいたとしても、値動きが一切ない市場では1円も稼ぐことはできません。
ですから投資で利益を上げたいと思ったらリスクは必ず必要になります。投資初心者がまず頭に置いてほしいことは、リスクは避けるものではなく管理するものだということです。リスク管理とは、一方で大損を防ぎながら、一方でメリハリのあるトレードを続けていくことです。リスクを管理することで、大きな資産を作り上げることができるのです。
トレードの目的は儲けること、言い換えれば、リターンを得ることです。リスクとリターンは表裏一体の関係であり、ハイリターンを求めれば裏にはハイリスクがあります。あっという間に資金が倍増する投資法は、あっという間に資金を失ってしまう投資法でもあるのです。一方ローリスクすぎる投資ばかりだと、リターンもあまりにも少なく、大切な時間と手間を使って投資をする意味がありません。アルバイトでもしているほうがよほど時間の有効活用になるでしょう。どのぐらいのリスクを取るかというバランス感覚がとても大切になります。
ちなみに株やFXとは異なり、「どのぐらいの成果が得られるか」が約束されている銀行の預金や企業が発行する債券もあります。銀行への預金は銀行にお金を貸したことに、債券の購入は企業にお金を貸したことになります。銀行も企業もたとえ赤字になっても、借りた人に期日までに利息をつけてお金を返さなければなりません。
一方株やFXではリターンは約束されていません。リスクは預金や債券より大きくなります。しかしその分預金や債券より、大きなリターが得られる可能性があります。逆にいえば、預金や債券では、株やFXより大きな成果を得ることは困難です。
今の時代は、銀行預金や債券で自分のお金を増やそうと思っても、利率が小さいので、ほとんど儲かりません。自分でリスクを管理しながら、預金や債券より大きなリターンを得ていくという意志を持つことが、資産形成という観点からはとても大切になります。そのためにはリスクは避けるべきものではなく、管理すべきものだと理解することが大切なのです。
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