この記事は2024年3月12日に「第一生命経済研究所」で公開された「景気予測調査から見た24年度業績見通し」を一部編集し、転載したものです。
24年度は増収減益計画
3月12日に公表された2024年1-3月期法人企業景気予測調査は、今年2月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、来期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。
そこで本稿では、今年4月下旬からの今年度決算発表において、来年度の企業業績計画の好調さが見込まれる業種を予想してみたい。
下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、24年度は4年連続の増収計画となっている。このことから、決算でも来期の売上高計画が強い業種には注目が集まるものと推察される。
一方、経常利益は全体で今年度は+3.3%の増益計画となっているが、コスト負担増等により、来年度は▲1.7%と減益に転じる計画となっている。このことから、4月下旬からの決算発表では、多くの業種で来年度減益計画が出てくることが予想される中、特に減益幅が控えめな非製造業で強めの計画が打ち出される業種には注目が集まるものと推察される。
大幅増収期待の「不動産」「生産用機械」「職業紹介・労働者派遣」
以下では、4月下旬からの決算で、来季売上高計画で高い増収率が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を23年度と24年度の前年比で比較したものである。
結果を見ると、24年度は「石油・石炭」「非鉄金属」「情報通信機械」「自動車・同付属品」「電気・ガス・水道」以外の業種で増収計画となっている。中でも、増収率が高い業種は「不動産」「生産用機械」「職業紹介・労働者派遣」「運輸・郵便」「業務用機械」となっている。
まず「不動産」を詳細に見ると、経常利益が減益計画になっていること等からすれば、都市部を中心に賃料や不動産価格上昇が増収計画に寄与していることが推察される。
一方、「生産用機械」や「業務用機械」については、特に『生産用機械』で大幅増益計画になっていることからすれば、世界的に生成AI向けの半導体需要が増加していること等を受けて、半導体製造装置や電子部品に関連する分野の需要拡大が見込まれていることが推察される。
他方、「職業紹介・労働者派遣」については、労働市場の流動性の高まりに加え、今年からさらに労働時間規制が強化されていること等から、人手不足対応に伴う労働需要の増加が期待されていることが推察される。
そして「運輸・郵便」は、インバウンド消費の更なる拡大等が進み、移動や接触を伴う経済活動がさらに拡大することが想定されている可能性が推察される。
「石油・石炭」「職業紹介・労働者派遣」「リース」で大幅増益計画
続いて、経常利益計画から24年度の業績拡大が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは諸々のコスト増が主因と推察される。
こうした中、増益率が高い業種は「石油・石炭」「職業紹介・労働者派遣」「リース」「食料品」「繊維」であり、いずれも二桁を大きく上回る増益計画となっている。
特に「職業紹介・労働者派遣」については売上高同様、労働市場の流動性の高まりに加え、今年からさらに労働時間規制が強化されていること等から、人手不足対応に伴う労働需要の増加が期待されていることが推察される。。
また、「石油・石炭」に加えて「食料品」「繊維」も2桁の増益計画となっている。いずれも化石燃料等の原材料コストが下がっていることに加えて、「食料品」では、政府の小麦売り渡し価格の低下により伴うコスト減が寄与している可能性があろう。
さらに、増収増益計画となっている「リース」は、直近の特定サービス産業動態統計調査でも昨年のリース契約高が大幅に伸びていることから、堅調な需要を受けて強気な収益計画になった可能性がある。
なお、日銀が4月2日に公表する3月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、3月短観における大企業の収益計画も期末決算と来期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。