この記事は2024年7月26日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「「平均」初婚年齢に惑わされるな」を一部編集し、転載したものです。


「平均」初婚年齢に惑わされるな
(画像=Anucha/stock.adobe.com)

(厚生労働省「人口動態統計」)

厚生労働省の発表によると、2023年の平均初婚年齢は夫31.1歳、妻29.7歳である。この指標が毎年上昇するたびに「晩婚化」と捉える報道や世論をいまだに耳にする。しかし、筆者が国の少子化対策の委員会等で繰り返し「平均初婚年齢の上昇をもって晩婚化と表現するのは誤解を生む」と主張し続けたこともあり、最近では、政府が晩婚化という表現を積極的に使うことはなくなった。

だが、この指標に対する誤解から「30歳くらいに婚活すればいい」などと思ってはいないだろうか。そう思っているとすれば、婚活戦略としては極めて悪手である。

「平均」という数字は「真ん中」や「普通」、「最頻値(最も発生している数値)」を表す指標ではない。母数で均等割した数値に過ぎず、常に「大きな数字に強く引っ張られる」ことを肝に銘じなければならない。

日本は高齢化社会であるが故に、結婚適齢期(統計上、結婚が多く成立する年齢ゾーン)から大きく外れた高齢者の結婚が以前より多い割合で成立する。そのことが、平均初婚年齢を引き上げる要因となっている。決して結婚適齢期の年齢ゾーンが上昇したわけではないのだ。

実際、現在の最新値である22年の婚姻統計を分析すると、初婚同士のカップルにおいて男女共に最も結婚件数が多いのは27歳で、多い順に26歳、28歳と続く。そして、初婚同士の結婚を果たした男性の6割が29歳まで、7割が32歳まで、8割が34歳までとなっている。女性の年齢ばかり気にして「女性は若くないと結婚できないよ」と、ハラスメントに当たる発言をする親世代や婚活男性は少なくないが、統計的に見ればお互いさまである。

女性についても、初婚同士の結婚を果たした女性の8割が32歳まで、9割が34歳までとなっている。仮に平均初婚年齢を誤認して30歳ごろに婚活を始めると、結婚ピーク年齢から3~4年を経過してしまっており、男女共に「良いと思う相手は既婚者ばかり」「普通の人でいいのに出会えない」結果を生む。日本は移民比率が2%程度で推移しており、自分と同世代の“普通の人”がどこからか追加投入されるわけではないため、所詮婚活は「早い者勝ち」となる。

「自由恋愛で、好きな時にいい人と結婚したい」と考えるのは、現実の結婚成立確率を無視した発言である。少なくとも「普通の人と結婚したい」と思うならば、統計的に最も結婚が成立している20代後半を逃すと結婚が厳しくなる現実も知っておくべきだろう。

「平均」初婚年齢に惑わされるな
(画像=きんざいOnline)

ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー/天野 馨南子
週刊金融財政事情 2024年7月30日号