この記事は2024年8月2日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「堅調な企業業績を材料に、年末は日経平均4万5,000円も視野」を一部編集し、転載したものです。


堅調な企業業績を材料に、年末は日経平均4万5,000円も視野
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7月の日本株はまさに“往って来い”の展開となった。日経平均株価は、7月11日に過去最高値を記録した後、26日にかけて1割以上に当たる4,500円強も下落した。今回の大幅下落の要因は次の三つが考えられる。

一つ目は、米国の対中半導体規制強化や弱めの決算発表を嫌気するかたちで、ハイテク株に売りが集まったこと。二つ目は、11月の米大統領選に向けて、市場の「ほぼトラ」の見方が「もしトラ」にやや後退したことで、トランプラリーの巻き戻しが起きたこと。三つ目が、日本銀行による早期の利上げ観測が台頭し、急激に円高が進行したことだ。とりわけ足元では、日銀の金融政策への警戒感でマーケットが不安定化しているとみられる。

しかし、現時点で想定を超えるペースの日銀の金融引き締めは基本シナリオではない。日銀の7月金融政策決定会合を乗り切った後のマーケットで、より重視されるテーマは「企業業績」になるのではないか。企業業績は、為替の影響を受ける面もあるが、極端な円高が進まない限り、堅調な業績の回復が相場を下支えし、再び株価を押し上げていくとの見方に変化はない。

アナリストによる業績予想の変化を指数化した「リビジョンインデックス」を見ると、日本株でプラスを維持、すなわち業績見通しが上方修正優位の方向に傾いている状況にある。これは、米欧の値がマイナスに傾き、やや下方修正優位の状況にあることと一線を画している。

業績の見通しが良好である点を1株当たりの利益(EPS)に置き換えて見ても、日本企業の業績回復モメンタムの強さを確認できる。EPSの改善度合いは米国企業をも上回る状況であること(図表)に加え、株価には相対的な割安感がある。実際の決算発表で業績の堅調さが確認できれば、日本株を見直す機運が強まりそうだ。

7月後半で急ピッチに調整が進んだ日本株だが、前述のような業績面での安定感・安心感から、相場への過度な悲観は不要と考える。株主還元の拡大などによる資本効率の改善や、NISA(少額投資非課税制度)を通じた個人マネーの流入などによる株式需給の好転といった日本株独自の好材料は依然として有効である。年末に向けては再び高値を更新する機会が訪れると予想する。

従って、日経平均株価は再び4万円台を回復し、年末には4万5,000円近辺まで上昇している可能性がある。歴史的な日本株高への挑戦は続くとみる。 

堅調な企業業績を材料に、年末は日経平均4万5,000円も視野
(画像=きんざいOnline)

大和証券 エクイティ調査部長/壁谷 洋和
週刊金融財政事情 2024年8月6日号