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(画像=株式会社ハッチ・ワーク)
増田 知平(ますだ ともへい)
株式会社ハッチ・ワーク代表取締役社長
1978年生まれ 神奈川県出身。大学卒業後、㈱セブンイレブン・ジャパンに入社。その後、㈱グラントコーポレーションを経て2006年、当社へ入社、2007年に取締役、2018年に代表取締役社長に就任。
自身の実体験をもとに、月極駐車場検索サイト「アットパーキング」をリリース。その後、不動産会社向けの月極駐車場オンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」を開発し、現在の主力事業となる。
株式会社ハッチ・ワーク
当社は、新しい価値を能動的に創造し続けていくべく立ち上がり、まだ見出されていない市場として月極駐車場のDX・クラウド管理にチャレンジ、月極駐車場の契約がホテルを予約するようにすべてがスマートフォンで完結する世界観を目指し、「アットパーキングクラウド」の提供を開始いたしました。 月極駐車場のナンバーワン・カンパニーになることでモビリティ革命の一翼を担い、日本そして世界へ価値を提供してまいります。

目次

  1. 創業時からの事業変遷と増田代表の経歴
  2. 上場を目指された背景や思い
  3. 今後の事業戦略や展望
  4. 今後のファイナンス計画や重要テーマ
  5. ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

創業時からの事業変遷と増田代表の経歴

―― これまでの経歴やハッチ・ワークの創業から事業変更に至るポイントについて、お話しいただけますか?

株式会社ハッチ・ワーク 代表取締役社長・増田 知平氏(以下、社名・氏名略) :当社はもともと、オフィスビルの仲介やオフィス移転を支援するコンサル営業などの不動産業としてスタートしました。しかし、空室のマッチングだけでは安定的な収益を上げることが難しいため、新たな事業を模索していました。転換点になったのは、リーマンショックやサブプライムローン問題などで大幅に空室が増えたときに、ビルオーナーに対して、貸し会議室やシェアオフィスといったテナント貸し以外の形態で収益を上げる方法を提案し、運営も任せていただくようになったことです。

そしてもう一つの大きな転換点。私がまだ社長に就任する前、仕事で月極駐車場を探していた時のことです。まずインターネット上に情報がまったくなく、とても驚いたのを覚えています。それならばと、近隣の不動産会社を訪ねてみるものの、月極駐車場は取り扱いが少ないと消極的な様子でした。しかたなく周辺を歩いて探してみると、募集看板は目につくものの、空いているのかどうかはわからない。この状況をとても不便に感じました。

その時ふと考えたのが、「ホテルの予約や決済がインターネットで簡単にできる時代なのだから、月極駐車場も同じようにできたらいい」ということです。これをきっかけに、月極駐車場の検索サイトを立ち上げ、少しずつ事業を前に進めてきて、今に至ります。

―― それまでの経歴や担当していた事業から、社長になられるまでの経緯を教えていただけますか?

増田 :最初は一人の営業マンとしてオフィス仲介を担当していましたが、徐々にマネジメントの領域に入り、役職が上がっていきました。その時点では、社長になりたいという思いはまったくなく、ただ目の前の仕事に一生懸命取り組んでいただけです。ただ、月極駐車場を探す際に感じた不便さから、この課題を解決することに挑戦したいと思いました。そして、事業を立ち上げて手ごたえを感じるたびに、この挑戦を成功させるためには自ら先頭に立ち、またリスクを取る覚悟が必要だと考え、社長になることを決意しました。

―― 社長と社員の立場や権限の違いについて、どのように捉えていますか?また、社長になるために必要だと思われる能力や経験は何ですか?

増田 :違いという点では、先ほども言ったようにリスクを取る覚悟だと思います。私は自ら会社に出資することで、それを示しました。創業社長ではないからこそ、この事業にコミットメントし、最後までやりきる、絶対に成功させるということを、社内外にメッセージする必要がありました。責任を強く感じています。

上場を目指された背景や思い

―― 株式会社ハッチ・ワークの上場についてお伺いしたいのですが、上場を目指した背景やお考えになったことを教えていただけますか?

増田 :月極駐車場の管理業務は、不動産会社にとって実入りのわりに負担の大きい業務です。アパートやマンションに比べて手数料が低いにもかかわらず、業務ボリュームは大差がない。業務効率化のためにシステム化をすることもままならず、書面や対面の手続きが慣習となっています。私たちはこの領域のデジタル化が進んでいないことに気づき、チャンスと捉えました。

次に市場規模について調査しましたが、月極駐車場の数が全国でどのくらいあるかに関する正確なデータはどこにもありませんでした。そこで、日本では自動車を所有するために駐車場を必要とする法律があることに着目し、国内の自動車保有台数を調べることで、需要市場規模を推測しました。その結果、約6,200万台の普通自動車が国内にあることがわかり、そのうちの半分、おおよそ3,000万台は月極駐車場を利用していると見立てました。非常に大きな市場です。

ここで改めて、月極駐車場のデジタル化で大きなイノベーションを起こせると確信しました。誰も取り組んでいない領域、かつ社会課題が根深い。加えて、いまだに書面で手続きがされている状況。市場の成長性を強く感じました。

―― では、このビジネスを始めた当初から上場を念頭に置いていたのですか?

増田 :正直、上場までは考えていませんでした。この事業には社会を変えるインパクトがあることに疑いはありませんでしたが、そのプロセスで上場することが必要かどうか、そこまで具体的になっていませんでした。

―― その後、どのように事業を拡大していったのですか?

増田 :最初は自分で募集看板を見ながら、月極駐車場情報を集めました。しかし、あまりに時間がかかるのでアルバイトを採用し、みんなで地図を片手に歩き回って情報をまとめ、不動産会社やオーナーに許可をいただきながら、ポータルサイトを作成し、掲載をしていきました。最初は鳴かず飛ばずでしたが、あきらめずにコツコツ掲載件数を増やしていくことで、少しずつ利用者からの反響も増え、不動産会社からも掲載依頼をいただくようになりました。

―― 事業をスケールするにあたって、一番の課題は何でしたか?

増田 :やはり、多くの不動産会社やオーナーが月極駐車場をデジタル化するということにイメージが持てない状況でしたので、いかに便利になるかを認知していただくことが一番の課題でした。今後さらなるイノベーションを起こし、月極駐車場に付加価値をつくることで、もっと関心を高めることができると考えています。そして、利用者もインターネットで手続きが行え、ラクだと認識し、月極駐車場のオンライン手続きが当たり前になる社会を目指しています。

今後の事業戦略や展望

―― 次に、今後の事業の展望についてお伺いします。先ほどおっしゃった、業界の常識を変えていくという点や、不動産業者や借り手への認知が大きな要素だと思いますが、それ以外にも増田さんの展望や目指すべき方向性があれば教えていただけますか?

増田 :繰り返しですが、まだほとんどの不動産会社がアナログで月極駐車場を管理していて、従来の運用で特に課題を感じていないという声をお聞きします。したがって、我々はオンラインで契約できる月極駐車場の登録台数をいかに拡大していくか、これを重要視しています。

当社の提供する月極駐車場のオンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」は、募集から契約手続き、決済、契約後の利用者対応まで、すべてを代行するパッケージになっていますので、大幅な業務削減にご期待いただけます。そのメリットを、周知していくことが重要だと考えています。現在の登録台数は、推定3,000万台の市場規模のうち約30万台ほどです。できるだけ早期に300万台程度まで増やしていきたいと思っています。

―― なるほど。他に何か展望や戦略がありますか?

増田 :これまでアナログで管理されていた月極駐車場が、我々のプラットフォームを通じてデジタル化されることで、リアルタイムな満車・空車の状況が一元管理され、利用者の情報が把握できるようになります。これにより、新たなサービスの展開が可能になると考えています。

例えば、今まではどの地域にどのような車両が駐車しているか、どのような方が契約しているかといった情報は分かりませんでしたが、デジタル化することでこれらの情報が見える化できます。このデータをもとに、例えばEV車の需要が高い地域に充電ポートを設置することで、月極駐車場の付加価値の向上が図れたり、短期間利用を可能にするウィークリーパーキングのようなこともできるようになるため、新しいニーズに対応できるようになります。

このようなデータマネジメントを行い、さまざまなサービスプロバイダーとも連携をしながら、月極駐車場の新しい価値をつくっていくことで、不動産会社やオーナー、そして利用者に還元できます。これが我々の成長戦略の中心軸だと考えています。

今後のファイナンス計画や重要テーマ

―― 上場されたことによって資本市場にアクセスできるようになったと思いますが、ファイナンス戦略についてどのように捉えられていて、今後どのように活用していく予定ですか?

増田 :重要指標として、「アットパーキングクラウド」の登録台数をいかに増やしていくかにフォーカスしていると話しましたが、導入を促すためにサービスや機能の拡充を行ったり、利用者の利便性を高めるための投資をしていきたいと考えています。また、当然ながらまだまだ知名度が低いので、営業人材の増員やプロモーションの強化も必要で、そこにも投資していく予定です。あとは、環境整備のためのオフィス移転なども考えています。それ以降の未来については、発展形の事業を自分たちだけで作るのではなく、あらゆる提携やM&Aといった選択肢もあります。

例えば、先ほどお話したサービスプロバイダーというのは、具体的にはモビリティ関連企業を指しています。これらの企業は月極駐車場の情報を持っていないことが多いので、我々のデータを提供することで、事業を加速するための協力関係を築くことができます。また、M&Aで一緒に事業を展開することで、課題解決がスムーズになるかもしれません。

―― なるほど、駐車場情報を持っていることが、他のモビリティ関連企業との連携やM&Aにおいて強みになるということですね。今後の展開が楽しみです。

ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

―― 最後に、オンラインのユーザー様や将来の投資家に向けて、御社の成長戦略や魅力についてお話いただけますか?

増田 :私たちの事業は一見ニッチで、実際に何度も「月極駐車場がビジネスになるの?」と言われてきました。しかし、私はそういった地味な分野にこそチャンスがあると考えています。

表面的なことだけをやってきたわけではなく、社会の本質的な課題を解決するために、それこそ裏方の仕事、泥臭い仕事も、コツコツと誠実に取り組みながら成長してきました。そんな私たちを知っていただき、興味を持っていただけると嬉しいです。投資家の方にもファンになっていただき、応援していただけるような会社であり続けたいと思っています。

―― 本日はお時間いただきありがとうございました。

氏名
増田 知平(ますだ ともへい)
会社名
株式会社ハッチ・ワーク
役職
代表取締役社長