この記事は2024年9月13日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「幅広い業種で増加基調を示す「デジタル化投資」」を一部編集し、転載したものです。


幅広い業種で増加基調を示す「デジタル化投資」
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(日本政策投資銀行「24年度設備投資計画調査」)

今回は、企業のサプライチェーン(供給網)戦略とデジタル化投資の動向を取り上げたい。

2024年度時点の中長期的な生産計画によると、製造業では、米中対立といった地政学リスクの高まりなどを背景に国内生産拠点を強化する動きが続いている。当行の24年度調査では、国内生産拠点について「向こう3年程度で強化する」と回答した割合が半数近く(49%)を占めた。前年度比で小幅に低下したものの、コロナ禍前(17~19年度)の平均値(39%)を大きくしのぐ(図表)。「10年先では強化する」と回答した割合も、23年度に続き半数以上(53%)に達し、コロナ禍前の平均値(42%)を上回る。

一方、海外生産拠点については「向こう3年程度で強化する」と回答した割合がコロナ禍前の水準にまで戻らない状況が続く。ただし、「10年先では強化する」と回答した割合が65%に達していることには注目しておきたい。将来的に、仕入れ調達先の分散や多様化、需要地での事業拡大などをにらみ、海外を強化する動きが再び活発化すると予想される。

24年度のデジタル化投資は計画時では前年度比34%増と4年連続で増加が見込まれる。設備投資の中身は、幅広い業種で業務効率化のためのシステム投資が多くを占める。特に伸び幅の大きい非製造業では、卸売・小売のECインフラの拡充や電力・ガスの遠隔保守管理、運輸の顧客対応、倉庫の自動化などが計画されている。

デジタル化の中でも近年注目度が高まっているAIやIoTの活用については「活用している」と回答した割合が24年度で30%(前年度比10ポイント増加)、「活用を検討」と回答した割合が同19%(同1ポイント減少)と、これら2項目で半数近くを占めた。

AIの活用が拡大した背景には、生成AIの普及が大きく影響している。すでに多くの企業において議事録作成といった業務効率化の用途で利用されている。さらに、計画策定の前提となるような在庫や需要などの予測、製品検査、創薬、空調、配車の最適化といった高付加価値化に用いられる事例もよく耳にする。

AIやIoTの普及に伴い、AI向けデータセンターなど高度な情報処理を実現するための半導体需要の拡大も見込まれる。このため、電気機械業や化学・非鉄などの素材業種の企業では、半導体の製造能力増強に向けた設備投資が多く計画されている。これが自動車の電動化への対応のための設備投資と並び、製造業の設備投資を牽引している。

幅広い業種で増加基調を示す「デジタル化投資」
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日本政策投資銀行 産業調査部 副調査役/河村 佳萌
週刊金融財政事情 2024年9月17日号