富士ソフトでKKRとベインが激突
日米間のM&Aは金額的にも抜きんでている(一覧表参照)。1~9月に1000億円超の大型案件は19件あり、このうち日米間のM&Aが13件を占める。
ルネサスエレクトロニクスがプリント基板設計ソフトウエア企業の米国アルティウムを約8900億円で買収したのをはじめ日本企業による対米M&Aは8件で、いずれも買い手はメーカーなどの事業会社だ。
これに対し、対日M&Aは米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)がシステム開発大手の富士ソフトを約5800億円で買収する案件を筆頭に5件を数えるが、いずれもファンドが買い手となっている。
なかでも情勢が混とんしているのが富士ソフト。米の有力ファンド同士が買収を争う異例の事態になっているからだ。
富士ソフトにはKKRがTOB(株式公開買い付け)を9月初めから実施しているが、ベインキャピタルが10月11日にKKRを上回る買付価格(1株あたり)での買収を正式に提案。富士ソフトが同意すれば、10月下旬にもTOBを始める。買付総額は5033億円を見込む。富士ソフトの創業家はベインと共同歩調をとる構えで、会社側の対応が注目される。
最大の懸案は日鉄のUSスチール買収
現在、日米間のM&Aで懸案事項といえば、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収の行方だ。日鉄が総額2兆円に上る買収計画を発表したのは昨年12月で、今年4~9月の買収完了を想定していた。
しかし、全米鉄鋼労働組合(USW)に加え、大統領選を争う民主党候補のハリス副大統領、共和党候補のトランプ前大統領がそろって反対を表明するなど政治問題化。買収の可否についての米国当局の判断は米大統領選後に先送りされる情勢となっている。
◎1~9月:日米間のM&A金額上位20 ※MBOは経営陣による買収
文:M&A Online