本記事は、徳吉陽河氏の著書『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「いい質問」とは何か
学校の授業やセミナー、会議などで、「いい質問ですね」という言葉を聞くことがあります。
この言葉が出るときは、その質問が相手に「クリティカルヒット」したときです。
これは心に響いた質問と言い表すこともできます。
自分がした質問が、「いい質問」だと言われると人は認められたと思い、うれしいものです。
では一体、この「いい質問」とはどんな質問なのでしょうか。
私は「いい質問」の種類は3つあると考えています。
1つは、「相手がこれまで考えたことがなかったことに対する質問」です。考えることでその人自身、新しい発見があったり、知的好奇心がくすぐられたりするような質問。
もう1つは、その人が「今まさに話したいこと」についての質問です。核心を突くような質問。
そして最後に、相手の感情に訴えかけたり、心に響いたりする質問。
ただ「いい質問」の解釈は、人によっても異なるものです。
ですから、もし、「いい質問ですね」と相手に言われたら、ぜひ「何が良かったのか」を自分自身で考えたり、聞いてみたりしてください。
自分自身で「いい質問」の理由を考えることで、その人の価値観や考え方の方向性がわかるかもしれませんし、相手に直接質問できる関係であれば、それにより、具体的に相手を理解できる場合があります。
「いい質問」と発言した相手の核心に触れることができる可能性が高いのです。相手に問いかけることは、相手の価値観やその人らしさを読み解く貴重なチャンスであり、相手と深くつながるチャンスといえます。
また「いい質問と言った理由を教えてください」と質問を投げかけられることはあまりないと思いますので、相手自身が深く考えるきっかけにもなりますし、相手にも「変わった質問をしてくる人」として覚えてもらえる可能性が上がります。
質問で広がるのは「会話」だけはない
質問は自分の視野を広げるのにも有効な手段です。
自分自身で考えたことがないことや自分の中に答えがない内容について質問することで、新しい情報が得られるからです。
そして、知識や見解の幅がぐんと広がります。
また、質問のやり取りを通じて、相手とつながり、相手の価値観や考え方を知ることができる場合もあります。
人は一人ひとり異なる価値観や考え方をもっています。
たとえば、「目標をもちましょう」と言われたとき、同じ言葉でも、成長の機会として「やる気」につなげる人もいれば、「重荷だ」「押し付けだ」と感じてしまう場合もあります。
そういった細かな部分から、人の考え方の違いを知ることはコミュニケーションにおいて非常に重要です。
同じ経験をしても、同じ言葉を聞いても、今まで積み重なってきた個人の価値観や考え方があるので、自ずと言葉の受け取り方は異なります。
質問は、その人のストーリーや背景を
学びと本質を掴む4つの質問
質問は視野を広げるだけではなく物事から学びを得たり、本質を掴んだりする手段としても有効です。
まず、当たり前のことばかりですが学びと洞察を深めるうえで、抑えておきたい具体的な4つの質問法を紹介します。
①Whatの質問
日本語でいうと、「何か?」です。
これは、物事や言葉の定義を把握する際に役立ちます。
たとえば、「レジリエンス」など、馴染みのない用語を学ぶ際に役立ちます。レジリエンスの意味を調べると「回復力・復元力」と出てきます。
ただ用語の意味を調べるだけではなく、ここから、さらにWhatで問いかけてみます。「回復力・復元力とは一体何のことなのか?」と、さらに問いかけていくと、困難なことに直面したときに、それを乗り越えて自分の精神面を回復する能力や強さのことだと理解できます。
そして、さらにWhatで問いかけてレジリエンスを調べると、もともとは物理学の用語であり、外力による歪みを跳ね返す力で使われていた言葉が精神医学や心理学の分野でも使われるようになったことがわかります。
このように、まず物事や言葉の本質を掴むために、「What」の質問で理解を深めていきます。そうすることで知ったつもりでいた言葉でも、意外と知らなかった定義や解釈が出てきます。
つまり、「What」は最初の学びのきっかけにもなります。
②Whyの質問
日本語でいうと、「なぜ?」です。
疑問を抱くことで探究、好奇心へとつながります。
たとえば、先ほどのレジリエンスを具体的に経験したい場合に、Whyで問いかけてみます。「なぜレジリエンスが重要なのか?」と追求していくと、変化が激しい現代では逆境にさらされたりする機会が増えており、すぐさま状況を柔軟に立て直すためにレジリエンスが重要であるということがわかります。
「Why」の質問は、本質に迫り、重要性を理解するうえで役立ちます。
③WhenとWhereの質問
日本語でいうと、「いつ? どこで?」です。
時間やタイミングと場所や環境などについて問いかけることで学びを習得しやすくなります。
レジリエンスに対して、「どのようなタイミングで、そしてどのような状況でレジリエンスは自分にとって活用できるのだろうか?」と、問いかけてみると、たとえば失恋したときなどの落ち込んでいるタイミングで、挫けずに次の恋をしようと出会いの場を探して前を向こうとすることに活用ができると知ることができます。
「When」と「Where」の質問は「Why」で理解した本質を自分のどのような状況で活用できるか把握することができます。
④Howの質問
日本語でいうと、「どのように?」です。
その技術や方法を自分が実践できるように、より具体的に問いかけることで自分だけの活用方法を理解することができます。
レジリエンスの場合、自分はネガティブな出来事のあとにはすぐに動けないと感じていたのであれば、いったんリフレッシュすることで逆境力が出やすいなどと、より自分が実践しやすい方法を知ることができます。
「How」の質問は、自分にふさわしい実践方法が理解できるようになります。
また、他者に問いかける方法で「Know How」の質問もあります。
日本語でいうと、ノウハウです。つまり、自分なりのコツです。
その人が当たり前に使っているやり方に対して、質問をすることで、相手の強みを発見することができます。
なぜなら、無意識に使っているその人のノウハウを強みとして明確化することができるからです。
そして、あなたがもっているノウハウを相手にアイデアとして、惜しみなくフィードバックしてみてください。
ギブ・アンド・テイクで、アイデアを提供することで、関係性が向上するとともに、互いの視野も広がります。
一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会代表理事・講師
専門分野はコーチング心理学、ポジティブ心理学、キャリア心理学、認知科学など。資格は、コーチング心理士、公認心理師、キャリアコンサルタント、ポジティブ心理療法士、認定心理士(心理調査)など多数。クライアントやコーチ・カウンセラーがお互いに前向きになるようなウェルビーイングや能力の向上、自己成長の支援を行っている。さまざまな海外における研修や学会などに参加し、心理学、心理療法、コーチングを学ぶ。大学・看護学校などでの講師を経て、現在は現場に役立てるため、主に社会人に向けて「コーチング心理学」や「ポジティブ心理学」に関わる実践・研究、普及の活動を行っている。航空保安大学校(国土交通省)など、大学、高等学校、教育支援センターなどの教育関係、若者サポートステーション、就労支援施設、社会福祉協議会、リハビリテーションなどに関わる医療機関などの講師。外資系・国内大手製造業、販売・接客業、人材サービス業の団体などでの新人研修、管理職研修なども担当している。
海外の心理尺度の翻訳、実用的な心理テストや性格診断の開発をし、WEBサイト『ペルラボ』にて、心理学とデータ解析に基づいた心理尺度、ストレス研究などを行う。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
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