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農学生のアイデアが世界を変える
冨田:まずは、貴社の創業から現在までの事業の変遷についてお聞かせください。
株式会社オプティム 代表取締役社長・菅谷 俊二氏(以下、社名・氏名略):当社は私が佐賀大学の農学部の3年生の時に創業した会社で、最初はインターネットのダウンロード待ち時間中に広告を挟む広報事業から始めましたが、このサービスはなかなか売れずに苦労しました。そこで、NTTさんと出会い、彼らが光ファイバーの普及に伴うパソコンやルーター、Wi-Fiの設定を、ひとつひとつの家庭ごとに人の手で作業する必要があり、この作業量の多さに困っているということに気がつきました。そこで、私たちのテクノロジーを活用し、この設定をAIで行えるようにする技術を提供したことで、急速に企業が拡大しました。
冨田:なるほど、それが事業のターニングポイントだったのですね。その後、どのように展開していったのでしょうか?
菅谷:当初は一般コンシューマー向けにサービスを提供していましたが、法人でも同じような悩みがあり、様々な端末を使っていてそれらをつなげる必要があるという点では中小企業から大企業まで同じ状況でした。私たちはここに着目し、すべての端末を思い通りに動かしていくようなサービスを作りたいと考え、OPTiM Cloud IoT OSというサービスを作りました。現在は、それを農業の分野や医療など、それぞれの産業領域で活用していけるようになっています。
判断軸は「世界を変える」インパクトがあるか
冨田:株式会社オプティムでの経営についてお話を伺いたいと思います。そもそものMDM市場だけでもそれなりの規模があると思いますが、そこに、DXという分野であらゆる産業と掛け算するとなると、狙っている市場規模が非常に大きいと感じました。その点はどのような狙いがあるのでしょうか。
菅谷:そうですね。我々は、テクノロジーオリエンテッドに近い会社で、世界を変えるようなインパクトのあるサービスでないと参入する必要はないという方針を持っています。自分たちの技術で他社への参入障壁が作れること、さらに、それがいずれも世界規模で使っていただけるような領域に参入していきたいという考えです。
冨田:そのうえで、社長としての、もしくは経営チームとしての、経営判断のロジックや意思決定の際に重視している点は何でしょうか?
菅谷:まず、私たちはビジョンを大切にしています。こんな社会を作りたい、というビジョンが先にあり、それを実現するために自分たちはこの事業をやるということです。これを、建前ではなく本当に実行している会社です。その分、当たり外れもよくあると思いますが、それが私たちの経営判断の基準です。
冨田:以前、上場された直後くらいの時期にお会いさせていただき、その後の貴社の拡大を見ていました。挑戦する回数やそれらの成功率をあげるという考え方も重要だと思いますが、貴社は世界を変えるような大きなインパクトがあることを選んでいることが、大きな成果につながっているように感じました。
菅谷:野球で例えると、ヒット狙いなのかホームラン狙いなのかみたいなところですね。それぞれの挑戦がスリーベースになるのかツーベースなのかなど、しっかりと狙いを持って挑戦することが大事だと思います。
ファミコンではなく、パソコン
冨田:菅谷社長が現在の考え方に至ったのは、おそらくご自身の過去の経験から積み上がってきたものがあるかと思いますが、どのようなルーツや経験が今の強みにつながっているのでしょうか。
菅谷:私は小学校2年生の時に初めてプログラムを作りました。ファミコン世代でしたので、本当はファミコンがほしかったのですが、高価なファミコンは買ってもらえず、その代わりに買ってもらったのがパソコンでした。それがきっかけで、プログラムを作るようになり、やがてそれを友達に50円や100円で売るようになりました。
また、私の親は工業高校の先生で、発明が好きな方でした。その影響で私も新しいものを作ることが好きで、小学校六年生の時には、目覚まし時計の代わりにリストバンドに電気ショックを送る装置を作り、パナソニックのエレクトロニクスコンテストで賞をいただいたこともあります。
このようにエンジニアのような経験をしてきたことは他の方とは違う点だと思っています。
未来の産業革命を牽引する"〇〇×IT"戦略
冨田:続いて、貴社の未来についてお伺いさせていただきたいと思います。未来展望を考えるにあたり、どのような市場に身を置くかということは大きな要素の一つだと思いますが、貴社は今後どのようなテーマに関連していくと考えていますか。
菅谷:私たちのテーマは、「〇〇×IT」です。私たちは、様々な産業に対してデジタル技術を提供することで、新たな価値を創出しようと考えています。例えば、農業分野においては、生産者に一切のリスクを負わせず、オプティムがすべてのリスクを負い、農作物に付加価値をつけて稼げる農業を実現するプロジェクトに力を入れています。また、医療分野では、日本初のオンライン診療サービスや手術支援ロボットのサポートシステムの開発など、幅広い取り組みを行っています。
今後は、さらに多くの産業領域でOPTiM Cloud IoT OSを活用し、それぞれの業界の課題を解決していきたいです。そのために、より高度なAIやIoT技術を取り入れたサービスの開発にも力を入れています。
第4次産業革命を起こす
冨田:菅谷代表が思い描いている未来構想についてお聞かせください。
菅谷:私たちは「世界に大きく良い影響を与える」を理念として掲げています。それを実現するために、企業の存続を目的とするのではなく、本当に社会課題を解決するために、身の丈に合わないと言われるような大きな志を持って挑戦し続けています。現在は様々な世界初や国内市場シェアNo. 1の実績を保有していますが、今後はこれまで積み上げてきた実績を元に、様々な産業にDXにおける革新的な技術を提供することで、各業界で第四次産業革命を起こしていきたいと考えています。
冨田:現在も様々な業界でDX化を推進されていると思いますが、農業や医療など異なる分野でも共通する部分はありますか。
菅谷:ハードウェアの部分は異なることが多いのですが、データのやり取りや処理方法は共通しています。例えば農業では、最初にドローンを使って田んぼの状況を把握し、そのデータをAIで解析して害虫の存在を特定したのち、そのデータに基づいてドローンで農薬散布をします。このプロセスを、見える化・分かる化・できる化の3段階と呼んでいますが、このプロセスは共通しています。また、データの取得方法や対象物は異なっても、データ処理の仕方やAIのアルゴリズムは共通しているということです。つまり、業界や分野が違ったとしても、データを取得するデバイスが違うだけで、それ以降のデータやAIの活用方法はほとんど同じです。
冨田:貴社には業界や分野を超えて活用できる技術やノウハウがあるからこそ、様々な分野でDX化を推進することができるということですね。
菅谷:その通りです。あと付け加えておくと、今はAI銘柄と言われる企業が多くありますが、それらの企業では、データ量の多さやAI自体の精度の高さを重要視していることが多いです。しかし、私たちはAIそのものの解析精度ではなく、AIの使い方の精度を高めることを重要視しています。例えば、AIが解析する前の段階でどのようなデータを成形して入力するか、またそのデータをどのAIに入力していくか、という部分です。このAIを使うためのアルゴリズムの精度の高さという強みを活かして、幅広い分野で「〇〇×IT」を実現していくつもりです。
オプティムからZUU onlineへ一言
冨田:最後にZUU onlineユーザーや投資家の皆様に向けて一言お願いいたします。
菅谷:これからは私たちの掲げる「〇〇×IT」という分野の成果が出始める時期だと思います。それぞれの産業におけるオンリーワン・ナンバーワンのポジションを築いていきます。もうすぐ「〇〇×IT」のベンダーとしての姿をお見せできるタイミングがくると思いますので、ご注目いただけると幸いです。
冨田:ユニークなお話をお伺いできて楽しかったです。ありがとうございました。
- 氏名
- 菅谷 俊二(すがや しゅんじ)
- 社名
- 株式会社オプティム
- 役職
- 代表取締役