ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「不協和音=声は大きいが経済は弱いアメリカ、円は最強も株は最弱の日本」

ドル円=148-153、ユーロ円=154-159、ユーロドル=1.01-1.06

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨首位(首位)、株価最下位(18位)、米国の不確実性が円高・株安を生み、日本の豊かさが消える」

(円最強・株最弱)
 円最強で株は安かったが、「円最強・株最弱」となった。「失われた20年」の気配がする。日経平均は年初来6.87%安。世界では香港ハンセン、独DAX、スイスSMIなどが10%を超えているので寂しい。
トランプ大統領の関税引き上げや世界の融和を崩す政策で米株が弱くなれば、日本へのリパトリとなり円高が続くだろう。3月はリパトリ玉も出る月だ。

(円高・株安は幸せか。いずれ税収減少、賃下げへ)
*円高なら株安・資産減・税収減・消費減・賃下げ
*円安なら・株高・資産増・税収増・消費増・賃上げ

物価高を嫌う気持ちもわかるが、給与が下がればまたモノも買えなくなってしまう。2024年の成長率が0.2%、物価が2%程度で利上げ継続すると弊害も出てくる、いや出てきた。

(日銀植田総裁、長期金利が急上昇する例外的状況では、機動的なオペを打つ)
日銀の植田総裁は、関税を含めた米政府の政策や日本の対応などについて「まだ不確実なところが非常に大きい、多いと認識」していると述べた。トランプ政権には他の重要政策もあり、そうした新しい展開を総合的に考えた上で、「世界経済やマーケットへの影響、それを通じた日本経済、日本の物価見通しへの影響」を考えて最終的に日本の金融政策の判断につなげるとし、これまでと同じ姿勢だと述べた。また、長期金利が急上昇する例外的状況では、機動的なオペを打つと再表明した。

(財務省筋)
財務省筋は、日本は自由で開かれた貿易が世界経済の成長にとって大事と伝えたことを明らかにした。各国の経済政策に関する不透明性は民間経済活動の大きな阻害要因になることから、予見可能性の高い経済政策を行うことが重要であるという点と、投機などがもたらす為替市場の過度の変動に引き続き注意する必要があるという点も伝えたとした。

 ただ今年はG7、G20では為替を議論されることはないだろう。というのも、動いているのは円だけで、他の通貨は対ドルで僅かにしか動いていない(私見)。

(2月上旬貿易統計は黒字)
 米国追加関税実施の前の駆け込み需要のためか、2月上旬貿易統計は1193億円の黒字。前年同期は6828億円の赤字であった。黒字が続けば円高要因。やや弱含みの原油価格が続けば、これも円高要因。

*米ドル「通貨10位(11位)、株価(NYダウ)8位(11位)、怒鳴るほどの力強さのないアメリカ=弱いドル、伸びない株、マイナス成長予測」
(弱いアメリカ)
 今年はアメリカが弱い。ドルは12通貨中10位で対円4.22%安。株価はNYダウが3.05%高、ナスダックが2.4%安、S&Pは1.24%高。10年国債利回りは4.208%、1月末は4.54%。関税実施の前の駆け込み輸入で1Qはマイナス成長に陥る一時的なものかもしれない。ただ他の指標も弱いのが気がかりだ。
トランプ関税ではメキシコ・カナダ向けが3月4日に発動される予定だ。

(マイナス成長か)
  アトランタ連銀のモデルは、米国の1QのGDPが縮小すると予測。 米国の貿易赤字が過去最高を記録したことから、1Qの年率予測を-1.5%に大幅に引き下げた。2月19日には2.3%のプラスで、その2週間前には3%を超えていた。米国のGDP成長率がマイナスに転じれば、2022年1Q以来初めて経済が縮小することになる。

(今週は雇用、ISMなど需要指標が多い)
今週はISM製造業・非製造業、雇用統計、貿易収支など需要指標が多い。2月雇用統計の予想は非農業部門雇用者数が15.8万人増、失業率が4.0%、平均時給が4.2%増の予想でそれぞれ1月の14.3万人、4.0%、4.2%と同じか小幅増だ。

(弱い指標が続く)
 前回も弱い指標が多いと書いたが、先週は2月消費者信頼感指数が、2021年8月以来の大幅な落ち込みを記録した。2月は98.3と、前月から7ポイント低下した。経済全般の先行きに対する懸念に加え、トランプ政権の政策の影響を巡る不透明感が重しとなった。今後6カ月の見通しを示す期待指数も3年半ぶりの大幅低下となった。現況指数も下がった。

(米の財貿易赤字、1月は25.6%増の1533億ドル 関税前の輸入前倒し)
1月の財の貿易赤字は前月比25.6%増の1533億ドルと大幅に拡大した。トランプ大統領の関税発動を前に企業が輸入を前倒ししたとみられ、貿易が1Qの経済成長の足かせとなる可能性がある。
財の輸入は11.9%増の3254億ドル。財の輸出は2.0%増の1722億ドルとなった。

(FRB利下げ再開は6月か)
1月の個人消費支出(PCE)価格指数を受け、FRBが利下げを再開するのは6月になるとの見方が高まった。その後、9月にも追加利下げが実施される可能性があるとの見方も出ている。
1月のPCE価格指数は前年比2.5%上昇と、伸びは前月の2.6%からやや縮小。インフレ抑制を優先して金利を長期間にわたり高水準に維持すれば、雇用情勢が悪化する恐れがある。

*ユーロ「通貨8位(9位)、株価2位(2位)DAX)、政策金利は0.25%利下げか。株高ユーロ安。対米・対露の対応は」
(ユーロは対ドルで安定、対円では弱い。株価強し))
 ユーロは前週の9位から8位へ上昇、年初来では対円で4.07%安、対ドルで0.19%高。対ドルでは極めて安定。株価は年初来13.27%高。独10年国債利回りは2.39%。

(今週はユーロ圏CPIに続き政策金利発表)
  3月6日のECB理事会では、中預金金利を2.75%から0.25%の追加利下げで2.5%とすることが予想されている。4-6月中に0.25%の利下げを2回実施するというのがコンセンサス。6月以降については不透明感が強まり、年末時点で中銀預金金利が2%を下回ると答えたのはエコノミストの3分の1程度。ウンシュ・ベルギー中銀総裁は、ユーロ圏が知らず知らずのうちに過剰な利下げの範囲に陥るリスクを警告した。
一方、 パネッタ・イタリア中銀総裁は、ユーロ圏の経済成長が想定以上に弱く、消費主導の景気回復は実現していないと訴えた。

 今週は2月ユーロ圏消費者物価や1月小売売上物価の発表がある。

(独2月消費者物価は減速せず)
 独の2月の消費者物価は前年同月比2.8%上昇で、前月と同じ伸び率。予想は2.7%への小幅低下だった。総合インフレ率は高止まりした。また、ECBの月次調査によると、消費者が見込む今後12カ月間の物価上昇率は2.6%と、前月の2.8%から後退。3年先の予想インフレ率は2.4%で変わらなかった。インフレ率がECB目標をオーバーシュートする可能性が高まっているとの見方が多くなってきた。独のの輸入物価は1月に2年ぶりの大幅上昇を記録し、こうした懸念を強めた可能性がある。

(EUは米国への嫌がらせのため設立、さて関税は)
トランプ大統領はEUからの輸入品に対する25%の関税賦課を近く発表すると述べた。「率直に言って、EUは米国への嫌がらせのため設立された」とも発言した。これに対し欧州委員会は、「自由で公正な貿易に対する不当な障壁に対しては直ちに断固として対応する」と表明した。EUは乗用車に10%の関税を課している。

(ウクライナを巡るEU首脳会議)
 トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談を受けた欧州各国の受け止め方は以下の通り。ただ欧州にはお金がない。

*EU委員長=ウクライナの平和のために ともに取り組み続ける。ゼレンスキー大統領、あなたは決してひとりではない。

*フランスのマクロン大統領=ロシアという侵略者がいて戦っているウクライナの人々がいる。私たちがウクライナを支援し、ロシアに制裁を科してきたことは正しかった。

*ポーランドのトゥスク首相=親愛なるゼレンスキー大統領、親愛なるウクライナの人々、あなたたちはひとりではない。

*スペインのサンチェス首相=ウクライナ、スペインはあなたたちを支える。

*スウェーデンのクリステション首相=スウェーデンはウクライナとともにある。あなたたちはみずからの自由だけでなく、ヨーロッパ全体の自由のために戦っている。

*エストニアのミハル首相=われわれの自由のために戦うゼレンスキー大統領とウクライナと結束する。

*イタリアのメローニ首相=西側諸国の分裂は、私たちを弱体化させ、私たちの衰退を望むものたちを有利にする。

*ポンド「通貨5位(10位)、株価5位(7位)、2月はポンド、FTともに上昇。対米関税問題は深刻ではない」
(ポンド高・株高の2月)
 2月のポンドは月間2位で1月の11位から5位へ上昇。FT株価指数も2月は弱含みする市場が多い中で1月の年初来6.13%から2月末は7.79%高へ伸びた。10年国債利回りは4.48%、で1月末の4.54%から低下した。

(次の焦点は1月GDP)
今週は重要指標はないが来週は1月GDPの発表。予想は前月比で0.1%増、前年比で1.2%増(前月はそれぞれ0.4%と1.5%)。3月14日発表。

(ラムズデン英中銀副総裁、インフレリスクを語る)
 ラムスデン英中銀副総裁は、国内の賃金圧力によりインフレ率が中銀目標を上回るリスクが高まっていると指摘する一方、利下げペースの鈍化は必ずしも必要ではないと述べた。 4Qの民間部門の賃金上昇率が鈍化せず前年比6.2%に上昇したことは驚きだったとし「これは私にとって懸念すべき動向だ」と述べた。インフレ目標に対するリスクは以前のように下方に偏っているのではなく、双方向にあると見ているとの認識を示した。

(対米関税問題は深刻ではない)
 対米貿易は英国の赤字だ。米国からの大きな追加関税圧力はないだろう。トランプ大統領は、スターマー英首相と会談後、両国が長期間滞ってきた貿易協定の交渉を再開し「われわれはいずれにせよ素晴らしい貿易協定を締結することになるだろう」と指摘した。

(英はウクライナ支援)
ウクライナのゼレンスキー大統領は、スターマー英首相と会談した。両首脳は、ロシアとの戦闘が続くウクライナの防衛力支援のために、22億6000万ポンドを融資することで合意した。スターマー首相は英国ははウクライナを支援すると改めて表明。「我々は、必要な限りウクライナと共にある」と述べた。また、ウクライナの永続的な平和を実現するための「揺るぎない決意」にも言及した。

(トランプ大統領国賓として2度目の英国訪問)
 トランプ大統領は英チャールズ国王からの国賓としての招待を受け入れる考えを示した。
トランプ大統領は1期目に国賓として訪問していて、外国の首脳が2度にわたって国賓として招待されるのは異例。

*豪ドル「通貨7位(2位)、株価13位(12位)、豪ドル後退、米の中国への追加関税も悪影響」
(2月は下落、RBAの利下げや、米国の対中追加関税で)
 2月は対円、対ドルで下落した。トランプ関税でのリスク回避と日本の利上げ観測、また中国に厳しい関税は豪経済にとってもデメリットということもあり豪ドルは下落した。
豪ドルは年初来で12通貨中7位、1月の5位から後退した。豪全普通株指数は年初来0.2%安とマイナス圏へ下落した。1月末は4.38%高。10年国債利回りは4.35%、1月末は4.46%。
尚、豪の対米貿易は豪の赤字なので米国から厳しい関税は課されないだろう。

(1月消費者物価は若干低下)
 1月消費者物価(CPI)は前月比0.2%下落した。住宅コストの鈍化や旅行代金の下落などが要因で、政策当局者にインフレが正しい方向に向かっているという安心をもたらす内容となった。前年比では2.5%上昇と市場予想と一致し、昨年12月と同じだった。 コアインフレ率の指標として注目されるCPIの中銀トリム平均値は前年比2.8%上昇した。12月は2.7%上昇だった。
1月CPIが比較的軟調だったことで、インフレの根強さに関する中銀の懸念が幾分和らぎ、追加利下げへの道が整うことになる。

(民間設備投資は減少)
4Q民間設備投資は前年比0.2%減少、前回は1.6%増であった。設備、工場、機械への支出が0.8%減少した。

(今週はGDPに注目)今週経常収 小売売上 議事要旨 GDP 住宅建設許可 貿易収支
 今週の注目は4Q・GDP。予想は前期比で0.4%増、前年比で1.2%増で、3Qの0.3%増、0.8%増を上回る。その他今週は指標が多く、RBA議事要旨、1月小売売上、4Q経常収支、1月貿易収支、建設許可などがある。

(ブラックロック、豪への投資見直し)
 ブラックロックは豪市場からの資金シフトを検討していることを明らかにした。経済成長が低迷し、割高感があることが理由。一方、日米の市場に投資妙味があるとしている。

豪については経済成長の低迷と長引く高金利で資産の評価額が割高になっているとの見方を示した。ブラックロックは、タイトな労働市場とトランプ米政権の関税リスクに伴う世界的な不透明感を踏まえればRBAの慎重姿勢は妥当だとし、個人消費の喚起につながる追加利下げの可能性が低下するとの見方を示した。

(追加利下げは)
  ハウザーRBA副総裁は、追加利下げを実施する前にインフレに関するポジティブな材料をさらに確認する必要があるという認識を示した。インフレについて今後も良好な情報を入手できると期待しているが、制約的な政策をさらに緩和する前にまずそれを確認する必要があると指摘した。今月、約4年ぶりに政策金利を引き下げたが、労働市場が予想以上に堅調なことから、追加利下げは保証されているわけではないと警告した。

*NZドル「通貨9位(4位)、株価17位(17位)、NZドル安いが、オア中銀総裁は適正価格と主張」
(通貨安、株安となった2月)
 先週は最弱通貨、2月は12通貨中11位、年間ではNZドルは1月の4位から9位へ後退した。株価指数(NZ50)は年初来3.88%安、10年物国債利回りは4.51%で1月末は4.62%。
米経済指標悪化、米国株下落もありリスク回避の流れがNZにきてしまった。米国の中国への厳しい関税政策で中国に依存するNZ経済にも悪影響が及ぶと見られた。NZの追加利下げ観測もNZドル売りを誘った。

(指標は改善しつつあるが、焦点はGDP)
金利低下を受けて指標は改善しつつあるが、やはり焦点は3月20日に発表予定の4Q・GDP。予想では前期比0.2%増加の予想でリセッションを抜け出す可能性もある。ただ前年比では0.8%減少予想。
先週の経済指標では4Q小売売上が前期比0.9%増加(前回は0%)、2月企業信頼感指数が58.4(前回は5.4)、2月消費者信頼感指数は96.6(前回は96.0)で改善傾向にある。

「企業の景況感は改善しており、幅広い範囲に及んでいる。金利が低下し、商品輸出価格が予想を上回っていることから、経済は回復の道を歩み続けている。4Qに経済がプラス成長に戻ったことは、さまざまな指標から明らか。指標は、企業が輸出の増加を予想し、投資を増やし、従業員を雇用する計画を立てている一方で、利益は安定していることを示した。ただ家計が現在の金利を高いと見るか低いと見るか、世界的な不確実性が投資や雇用を制約するかどうか、あるいは企業が現状維持の姿勢を取るかどうか、そして、スキル不足が拡大にとって重大な制約となるかどうか、また、そうなる場合はいつになるかによって決まるだろう」とANZ銀行は見ている。

(中銀はNZドルの為替をどう見ているか)
 中銀のチーフエコノミスト・コンウェイ氏は「NZドルは過去6か月間で米ドルに対して6.4%下落しており、これは最も取引量の多い10通貨の中で最悪の値動きだ。これはNZの金融政策緩和とトランプ氏の米国大統領当選と同時期に起きており、米国の金利が上昇し米ドルの魅力が高まっている」とした。「NZドル安は乳製品や牛肉などの商品価格の上昇とともに、輸出収入を支えることになるだろう」と語った。
「今後の為替レートの最適な軌道については特に見解はない。与えられたものを受け入れるだけだ」とつけ加えた。

オア中銀総裁は先週、「NZドルは適正価格付近で取引されている」と述べた。