
総括
FX「トランプ関税でG20は瓦解か、ドル円の実需の需給はやや円買い」
ドル円=139-144、ユーロ円=159-164、ユーロドル=1.12-1.17
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨2位(首位)、株価17位(18位)、貿易黒字、外貨投信減少でドル円の上値が重い」
(円は強いが、株は弱い=日本の資産喪失型)
円は年初来でスイスフランに抜かれたが依然3強の一角。一方、日経平均は弱く年初来12.94%安。10年国債利回りは1.285%。年初の1.09%kら上昇しているが、3月末の1.485%からは低下している。
(印象的だった4月17日の相場)
4月17日の東京の午前、通商交渉中のワシントンの赤沢経済再生相が「日米の関税協議で為替について発言が出なかった」と明らかにしたことでドル円が141台から143円へ反発した。ただその後はじり安となり先週の終値は142円前半。トランプ関税、日々変わるトランプ発言・極論が出てドル円相場もボラティリティを増しているが、やはり基礎需給が円買い優位となっているのでドル円もじり安となっている。
円安の最大要因であった貿易赤字は2022年に約20兆円、2023年に半減の約10兆円、2024年はさらに半減し約5兆円。今年はほぼ赤字になる1月はさておき、2,3月と黒字となっている。やはり原油安が効いている。鉱産物輸入の多い豪とのべ貿易収支がピークから3分の1、中東がピークから約半分に減少している。原油価格が50ドルを割れば貿易黒字も定着して円高推移となろう。
(政府推奨のオルカンはどうか)
政府推奨のNISAに含まれる海外投資が昨年は伸びて昨年は外貨投信残高が28.5兆円増加したが今年はその勢いがない。2月、3月と減少している。去年は貿易赤字が減少し、約15兆円の円買い介入もあり、もう少し円高になてもいいと思ったが、外貨投信へのオルカンなどのNISA資金が流入し円安が継続している。
(景気判断は維持、米通商政策で先行きの「下振れリスク高まる」=4月月例報告)
政府は18日に公表した4月の月例経済報告で、景気が「緩やかに回復している」との判断を維持した一方で、前月までの「一部に足踏みが残る」という表現に代わり、「米国の通商政策などによる不透明感がみられる」と指摘、米関税政策に対する警戒を強めた。表現の変更は昨年8月以来8カ月ぶり。
(日銀植田男総裁)
日銀植田男総裁は、トランプ米政権の関税政策が日本経済の下押し要因になるとの見解を示した一方、物価については上下両方向への影響があり、現時点でどちらにいくのか決め打ちするのは「まだリスクが高い」と語った。今後の動向を注視していくとした。今週は日銀の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」の発表がある。
*米ドル「通貨11位(10位)、株価(NYダウ)16位(14位)、トランプ関税でG20は瓦解か。FRBも混乱。サプライチェーンも危機」
(ドル安・株安で市場は関税政策に反応)
ドルは先週は9位、4月もここまで9位、年間では11位で弱い。米株はNYダウが年初来8%安、ナスダックが15.66%安、S&Pが10.18%安。トランプ関税政策にネガティブに反応している。一方、荒れていると言われている米債市場は10年国債では4%前半でそれほどの動きではない。
(経済指標は弱く、物価は低下))
先週もそれほど強い指標はなかった。強いて言えば3月小売売上が強かったが、関税前の駆け込み買いだろう。鉱工業生産、住宅着工、フィラデルフィア製造業指数は弱かった。
GDPナウは-2.2%、貿易赤字が膨らんだことが足を引っ張っている。CPIナウは2.38%、GSCPI(サプライチェーンインデックス)は-0.18で物価は落ち着いている。経済指標が弱く、株価下落が影響している。
まだ関税賦課は本格的に実施されていないが、実施されればモノ不足状態となるだろう。あるいはそれ以上の景気後退がやってきて物価が上がらないか、流行りの言葉で言えば「不確実」だ。
(トランプ関税でG20は瓦解か)
今週はワシントンで世銀・IMF総会やG20財務相・中銀総裁会議が開催される。議題はもちろん関税だが、米国以外はグローバル市場主義から離れる「米国による関税引き上げ」に反対だ。ただG20声明にそれが反映されるかは不明だ。米国の圧力で挿入されないだろう。G20の存在価値がなくなってしまう。一方、為替についてはG20では2011年の東日本大震災、2012年のギリシャ危機、2016年の英国のEU離脱を除いては「我々は、為替レートは市場において決定されること、そして為替市場における行動に関して緊密に協議することという我々の既存の為替相場のコミットメントを再確認する」が、確認されているだけだ。
ここ8年は為替については無風状態。日米2国間で為替協定が締結されるのだろうか。
(パウエルFRB議長問題)
ホワイトハウス国家経済会議のケビン・ハセット委員長は、トランプ米大統領とその氏のチームがパウエルFRB議長を解任するかどうかを検討していることを確認した。元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏を連議長に就任させるつもりだという。トランプ大統領は2017年初頭、パウエル氏を任命する前にウォーシュ氏の指名を検討していた。しかし、ウォーシュ氏の経歴は物議を醸している。エスティ ローダーの相続人の義理の息子であるウォルシュ氏は、正統派経済学の知識がほとんどなく、金融危機の際には市場と経済について何度も誤った判断を下した。世界で最も影響力のある中央銀行としてのFRBの信頼性は、その行動が政治的干渉から独立していることに大きく依存している。ウォール街は、トランプ大統領がパウエル議長の解任を試みれば、市場の混乱がさらに拡大する可能性があると警告した。ゴールドマン・サックスのアナリストらは、FRBが独立性を失えば、市場は極度の変動に直面するだろうと述べた。
*ユーロ「通貨3位(2位)、株価5位(5位)DAX)、景気は強くはないが混迷米国の受け皿となる」
(米国市場の受け皿、通貨、株、債券で)
トランプ関税で混乱する米国市場の受け皿として、ユーロや欧州株が買われている。ユーロは円やスイスと激しく通貨首位争いを演じている。景気は必ずしも強くはないが、資金は米国から逃れているのだろう。ユーロは12通貨中3位で、1位のスイス、2位の円と僅差だ。独DAXもプラス圏を維持し年初来6.51%高。独10年国債利回りは2.46%で4月は米国と異なり低下している。
(ECBが0.25%利下げ、6会合連続 経済下支え)
ECBは6会合連続となる0.25%の利下げを決定した。インフレの鈍化傾向に加え、トランプ政権による関税措置によって景気の減速が懸念されるなか、経済を下支えするねらいもあるものとみられる。3月の消費者物価は、前年同月比2.2%の上昇と伸び率が2か月連続で鈍化し、声明では「インフレ率の低下は順調に進んでいる」とした。
一方、経済の先行きについては「貿易摩擦の激化で成長見通しは悪化している」と指摘した。ラガルドECB総裁は、「世界的な貿易摩擦の激化と不確実性は輸出を抑制し、ユーロ圏の成長率を低下させ、投資と消費の足かせとなる可能性がある」と述べ、トランプ関税とその報復関税による貿易摩擦に懸念を示した。
(今週は4月製造業・サービス業のPMIなど)
今週は欧州各国の4月製造業・サービス業のPMIに注目したい。まだ本格的に始まっていない関税経済の影響が出始めるか。あるいは駆け込み輸出による増産の影響が出るか。その他、4月消費者信頼感、IFO企業景況感指数もチェックしたい。
(来週は重要)
来週は1Q・GDPと4月消費者物価が発表される重要週だ。独はリセッション懸念がある。
(ZEW景況感指数は弱い)
独のZEW景況感指数は3月の51.6から4月には-14に急落し、予想の9.3を大きく下回った。現状指数は3月の-87.6から4月は-81.2に改善した。予想は-86。
ユーロ圏のZEW景況感指数は、3月の39.8から4月には-18.5に低下。予想は14.2。米国の貿易政策の不安定な変化は欧州経済の期待に重くのしかかっている。
*ポンド「通貨4位(4位)、株価8位(7位)、ポンドも米国資金の受け皿の1つ。ただユーロほどではない」
(ポンドは4位、米ドルよりは強いがトップグループではない)
米国関税による米金融市場の混乱で、資金が米国から流出し英国も受け皿となっている。ただより市場の大きいユーロほどではない。ポンドは12通貨中4位でドルより強いが、トップグループのスイス、円、ユーロに離されている。FT株価指もプラス圏に回復したが年初来1.26%高とこれも独DAXの6.51%高に離されている。10年国債利回りは4.57%と米国債より高い。
(3月消費者物価と雇用統計)
3月の消費者物価上昇率は前年比2.6%と、3カ月ぶりの低水準だった。2月の2.8%、予想のの2.7%を下回った。コンピューターゲームと燃料の価格が下落。
ただ、4月以降は公共料金の値上げや雇用主に対する増税でインフレが加速するとの見方が出ている。 一方、英産業連盟は、トランプ関税引き上げについて、英国の物価に上昇圧力と下落圧力の双方がかかる可能性があるが、英中銀は来月、0.25%の利下げを実施する可能性が高いと指摘している。2月GDPの改善で後退した利下げ予測が、再び強まっている。
3月雇用統計では、失業率が4.4%、賃銀上昇率は前回比5.6%上昇、前回も5.6%、予想は5.7%だった。
(今週はPMIと小売)
今週は4月製造・サービス業PMIや3月小売売上の発表があるが、いずれも若干の悪化予想だ。
(英米首脳会議、「生産的な」貿易交渉目指す)
英米首脳はウクライナ、イラン、イエメンの状況や、英国と米国の間で進行中の貿易交渉について議論した。
英首相官邸は、米国大統領が英国製品に関税を課して以来初の電話会談で、スターマー首相とトランプ大統領が「継続中で生産的な」貿易交渉について協議したと述べた。
首相は「自由で開かれた貿易と国益を守ることの重要性」への取り組みを強調したと述べた。
トランプ大統領が英国製品への10%の関税と、自動車、鉄鋼、アルミニウムの輸入に対するさらに高い25%の税率を発表したことを受けて、米国との合意を取り付けたいと考えている。
米国のバンス副大統領は、英国との貿易協定が成立する「可能性は高い」と述べた。
英国は米国と何らかの経済協定を結ぶことで関税を回避しようとしてきたが、EUとカナダは対抗関税で応じている。
また、トランプ大統領は今年後半に予定されている英国国王チャールズ3世陛下との公式訪問を楽しみにしているとも付け加えた。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価13位(15位)、やはり米中関税交渉次第か。景気はそれほど悪くはない」
(豪ドルは米国より強いが、トップグループには離されている)
大幅関税賦課による株安・通貨安を招いている米国のドルより豪ドルは強いが、通貨トップグループにいるスイス・円・ユーロには差を拡げられている。豪ドルは年初来8位で対円6.84%安、豪全普通株指数は4.73%安。
(米中関係がカギ)
トランプ大統領は、中国と複数の交渉を行っていると述べ、「対中関税を引き上げたくない。関税が上がれば、人々は買わなくなる」と付け加えた。トランプ大統領は、中国との貿易協定は3~4週間以内に締結できると楽観的な見方を示した。トランプ大統領が、新たに提案された「相互」関税から主要なテクノロジー製品を除外すると発表したことを受け、豪ドルは上昇。スマートフォン、コンピューター、半導体、太陽電池、フラットパネルディスプレイなどの製品が対象となり、豪最大の貿易相手国であり、豪の資源輸出の主要消費国でもある中国で主に生産される製品に有利な状況となっている。
(RBA議事録も気迷い)
最新のRBA議事録は、トランプ関税に関する不確実性が依然として続いていることを示唆した。理事会は5月の会合が金融政策を見直す適切な時期だと考えたものの、事前に決定を下したわけではないことを強調した。また、理事会は経済とインフレ軌道には上振れリスクと下振れリスクの両方があると指摘した。
(雇用はまずまず)
3月雇用統計では失業率は4.1%は2月の4.0%から上昇した。予想の4.2%は下回った。就業者数は3.2万人増と、2月の減少から回復したものの、予想の4万人に届かなかった。過去1年間に就業者数の伸びは30.8万人と2.2%増加した。今週はこのところ好調な製造業・サービス業PMIが発表される。
(総選挙前の情報)
5月3日の総選挙で、アルバニージー首相が率いる与党労働党がかろうじて過半数を獲得し、政権を維持する可能性が14日公表された最新の世論調査で明らかになった。最大野党勢力の保守連合が優勢だった2月から風向きが変化しつつある形だ。
ニュースポールの調査によると、保守連合の支持率は2022年の前回選挙時を下回り、アルバニージー氏の支持が高まった。保守連合の首相候補、ダットン自由党党首の支持率は過去最低に沈んでいる。
ただ今後の情勢次第では、与野党とも過半数を取れずに労働党が少数与党政権を立ち上げる事態もあり得るという。
トランプ大統領の関税政策に起因する市場の混乱や、労働者に全面的なオフィス勤務を強制する方針を野党側が撤回する動きがあった後に行われた。野党のオフィス勤務強制方針に対して、労働党は生活費高騰が懸念される中で通勤費の負担を増やす施策だと批判を展開していた。
*NZドル「通貨5位(5位)、株価15位(16位)、消費者物価上昇、企業信頼感改善がNZドルを押し上げ」
(NZドルは直近の指標を反映まずまずの動き)
先週は2位、4月はここまで4位、年初来では5位とまずまずの成績。リセッションを抜け出したばかりで、追加利下げ観測もあり、今年の成長見通しを下方修正されていいるが、直近の指標がNZドルを支えている。ただ株価は弱く年初来7.56%安。10年国債利回りは4.54%。
(消費者物価上昇、企業信頼感改善がNZドルを押し上げた)
1Q消費者物価は、前期比、前年比ともに予想を上回った。前期比上昇率は0.9%と、予想の0.7%を上回った。前年比の上昇率は2.5%と、昨年4Qの2.2%から加速し、予想の2.3%を上回った。それでもインフレターゲットの1-3%内に収まっている。生鮮食品やガソリン、教育費などの高騰が影響したが、多くは一時的な上昇で、市場は依然として一段の利下げを予想している。
市場は依然として5月28日の次回会合での0.25%利下げを織り込み、政策金利が現在の3.5%から10月までに2.75%に低下すると予想している。
他には経済研究所(NZIER)の1Q企業信頼感は前期の16から19へ改善した
(今週は貿易収支の発表、駆け込み輸出続くか)
今週は貿易収支の発表、貿易赤字が多いNZだが、2月の5.1億NZドルの黒字に続き、3月も8千万NZドルの黒字が予想されている。米国関税賦課の前の駆け込み輸出の影響か。4月消費者信頼感指数も発表される。
(関税戦争で成長率が半減する予想)
経済シンクタンクのインフォメトリクスは、2026年のGDPの年間成長率が、これまでの2.4%成長予測から1.4%低下して1%になる可能性があると発表した。「国民の大半は米国の貿易政策による直接的な影響を受けないが、世界的な景気後退の影響はNZの労働市場や住宅市場など、より具体的な分野に広範囲に及ぶ可能性がある」と述べた。
「NZは2年間の経済活動の停滞または減少からちょうど抜け出そうとしていたところだったことを考えると、世界的な不安定化は最悪のタイミングで起きたと言える。世界経済の弱体化により輸出がマイナスの影響を受けると予想され、企業投資や家計支出についてもより慎重になるだろうと述べた。
政府は国防費を今後4年間で90億NZドル増額する方針を示した。GDPに対する比率を現在1%強から今後8年で2%に引き上げることを目指す。