この記事は2025年5月13日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:国債は将来世代への負担の先送りではありません」を一部編集し、転載したものです。

■ 国債は将来世代の税収によって返済することは想定されていません。
■ 国債は60年で返済する60年償還ルールが、財政問題の誤認識の原因となっています。
■ グローバルの標準的な財政運営では、国債は永続的に借り換えしていきます。
■ 歳出と税収の差が開いていくという「ワニの口」の議論は、償還費を無理やり計上することによる間違いです。
■ 償還費を除く歳出と政府収入の差は2025年度までには既にほぼ閉じています。
■ 実際には機能させることはない無用の長物で、財政議論において誤った認識を生む国債60年償還ルールは撤廃すべきです。
国債は将来世代の税収によって返済することは想定されていません。国債残高を減らせば、単純に民間金融資産が減るだけだからです。財務省も、国債は借り換えで運営していて、将来の税収で返済するというのは間違いであることを認めています。この事実が明らかとなり、将来に万が一借り換えができない非常時に、税収で返済する必要があるとの苦し紛れの解説になってきています。
国債は60年で返済する60年償還ルールが、財政問題の誤認識の原因となっています。財務省は国債60年償還ルールについて、「あくまで公債政策に関する政府の節度ある姿勢を示すために導入されたものであり、文字どおりの減債、すなわち国債発行残高の減少を目指すものではなかったことを確認」しています。多くの国民が国債は必ず将来の税収で返済するものと騙されてきました。
グローバルの標準的な財政運営では、国債は永続的に借り換えしていきます。政府予算の歳出に、国債を返済する償還費を計上している国は日本だけです。歳出と税収の差が開いていくという「ワニの口」の議論は、償還費を無理やり計上することによる間違いです。償還費を除く歳出と政府収入の差は2025年度までには既にほぼ閉じています。誤った財政議論で危機を煽るのは止めるべきです。
マクロ経済学的には、緊縮財政によって、日本経済が成長できず、投資と雇用が生まれず、将来世代に豊かな経済を残せない方が、負担の先送りになります。実際には機能させることはない無用の長物で、財政議論において誤った認識を生む国債60年償還ルールは撤廃すべきです。
図:「ワニ」はいないばかりか口はほぼ閉じました

(出所:財務省、クレディ・アグリコル証券)
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