この記事は2024年12月2日に「第一生命経済研究所」で公開された「2024年度補正予算案のポイント」を一部編集し、転載したものです。
補正予算閣議決定:24年度税収が大幅に上方修正
11月29日に政府は2024年度補正予算案を閣議決定した。22日に決定した総合経済対策の予算措置部分に相当する(内容は「総合経済対策2024のポイント整理」11/6発行を参照)。予算フレームは資料1の通り。
一般会計の追加歳出額は14.1兆円でうち13.9兆円を経済対策関連経費が占める。歳入側では税収の上方修正が3.8兆円に上っている。7月に確定した2023年度決算税収が2.5兆円上振れし、これを考慮する前の見込み値をベースに作成された24年度税収はすでに過小となっていた。妥当な修正であろう。税外収入には1.9兆円が計上されており、うち「AI・半導体産業基盤強化フレーム」分が1.3兆円とされている。経済対策において、財投会計からの繰り入れ分(政府保有株の配当など)等をこのスキームに盛り込む方針が示されており、例年の対策に比べて税外収入の額が大きめだ。ここに前年度剰余金の1.6兆円も加わり、不足分を賄う新規国債発行(公債金)は6.7兆円に抑えられている。税収見込みの上方修正や新規スキームにおける税外収入活用方針などの結果として、ということにはなるが、経済対策における新規国債発行額は22年度2次補正22.9兆円→23年度8.9兆円→24年度6.7兆円と減少傾向にある。
政策テーマは岸田前政権を踏襲
各省庁の予算資料も参照しながら、補正予算の主な事業をまとめたものが資料2である。総合経済対策の決定でもすでに示されていた通り、今回の経済対策の内容は昨年の岸田前政権の経済対策に事業内容の多くが似通っている。大枠は、①官民投資の推進(基金の増額や設備投資に対する補助金など)、②物価高対策(ガソリン、電気ガス料金の負担軽減、自治体独自施策用の地方交付金、住民税非課税世帯への給付)、③防災・減災、国土強靭化関連の3つである。物価高対策のために地方交付金が膨らんでいることが近年の補正予算の特徴であるが、今回も「物価高対策のための重点支援地方交付金」として1.7兆円が支出されている。官民投資のテーマは脱炭素、半導体、重要物資、経済安保、宇宙、デジタル化、省力化など多岐にわたるが、これらも昨年経済対策と性格は変わっていない。
税収の基調部分は増加傾向が明確
今回の予算案で目を引いたのは税収の上方修正幅の大きさ(3.8兆円)である。修正前の2024年度当初予算の税収見込み額は、23年度の補正予算時点での税収額をベースに予測されていた。今回は2023年度決算の税収が補正予算時点から2.5兆円の上方修正となっていた。土台となる23年度税収が決算で上方修正されていたので、24年度税収の上方修正は予想されていたことである。やや予想外だった点はその幅だ。決算税収の上方修正幅と同程度の修正が行われるのが例年のイメージだが、それを上回る上方修正が行われている。この通りに推移すれば24年度税収は73.4兆円と前年度(23年度:72.1兆円)から1兆円強増加することになる。今年は6月に定額減税が行われており、国税分で2兆円強程度の減収要因がある。当方では従来から定額減税分を相殺する形での24年度税収増を想定していたが(「まだまだ税収増が止まらない」(2024年7月))、財政当局の見通しも同様の構図となった形だ。
実際に、月次の税収の動きはしっかりしている。定額減税影響の多くが剥落した直近(24年8・9月の税収の季節調整値の年率値は70兆円台後半に位置している。月末には25年度予算案の閣議決定がなされ、政府も25年度税収の見込み額を示すことになる。実際の数字は足元で実施されている基礎控除等引き上げ(103万円の壁)の議論の着地に左右されるが、少なくともその要因を除くベースの値は2025年度に70兆円台後半に達することになろう。