本記事は、岡本文宏氏の著書『効率アップ! チーム力アップ! モチベーションアップ! リーダーの任せる技術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

伝える
(画像=deagreez / stock.adobe.com)

《伝達力》
任せることを伝えるスキル

自分の考えを伝えることや、指示、連絡事項を正しく伝えることに苦手意識を持つリーダーは多くいます。文化庁の約3,000人を対象とした調査によると、16歳から50代までの約7割が、「自分の言いたかったことが、相手にうまく伝わらなかった経験がある」と回答しています(出典元「国語に関する世論調査」平成28年度)。

チームを牽引する役割を担う人がきちんと伝えることができないと、組織が上手く回らず成果が出せませんし、部下に仕事を任せることもできません。

筆者である私も、以前は伝えることが大の苦手でした。

アパレル専門店チェーンに勤務していた頃、チェーン本部で行われる営業会議に出席して役員、社長の前で話すときは、緊張して自分の考えを上手く伝えられませんでした。

会議の場で、回りくどい言い方で話していたら、当時の社長から「結論は何なんだ!」と怒鳴られ、頭の中が真っ白になった経験もあります。

その後コンサルタントに転じてからは、講演会や研修で、大勢の前でスピーチをしなければならないことが多くなり、「伝えること」のトレーニングを毎日のように行いました。

そのかいあって、今では年間に100回以上、公の場で登壇するプロの講師として活躍できています。いわば、伝えるプロフェッショナルになれたのです。

伝える力を身に付けるポイントは、以下の6つです。

(1)一文を短く伝える

プロの講師の講演がYouTubeなどの動画サイトに多数アップされています。聴いていて分かりやすいと思える講師は共通して、1文を短い文章で伝えています。ポイントは、話をする際に、読点「、」でつなげないことです。読点でつなぎながら、ダラダラと話し続けると、主となることが相手に伝わりません。

1つの文に情報を詰め込むことは避け、伝える要素は1文に1つだけと決めておくことも重要です。

たとえば「目標を決めることは、重要だと思いますが、それが明確でないと、進むべき道が見えてきませんし、いつまでもゴールに到達しません」と読点でつなぎながら伝えるよりも、「目標を決めることは重要です」「目標が明確でないと進むべき道が見えません」「そうなると、いつまでもゴールに到達できません」と3つの文章に分けて伝えるほうが、より相手に言いたいことが伝わります。

(2)大事なことは先に伝える

「午前」「午後」という単語は、英語であれば、「AM」「PM」と表記されます。英語の場合、単語の1文字目を見れば、それが午前なのか午後なのか判断できます。

一方、日本語は1文字目が共に「午」なので、2文字目を見なければ判断がつきません。

文章の構成もこれに準じ、結論や重要なことを後で話す場合が多いのです。

マネジメントの現場では、大事なことは先に伝えるようにしましょう。なぜなら、人の集中力が持続する時間は極めて短く、一説には70秒程度と言われています。ニュース番組で読まれる原稿は70~90秒にまとめられており、それくらいの時間しか、人は興味を持って見聞きしてくれないと考えられているからです。

部下に任せることを伝える際も同じで、できるだけ短時間で、且つ、とくに重要なことは冒頭に伝えることを心がけましょう。

(3)要点を絞る

一度に多くのことを伝えようと思っても、相手が受け取れる情報の量は決まっています。

伝えたいことが複数あるとき、それを一度にすべて話すのではなく、要点を3つ程度に絞ると相手に伝わり、記憶に残りやすくなります。人は3~5個の項目であれば瞬時に記憶することができます。心理学では「マジカルナンバー4±1」と言われています。

スティーブ・ジョブズが、iPhoneを初めて紹介するプレゼンテーションの場で、多数ある機能の中から、とくに重要な3点に絞って伝えました。それにより、大きなインパクトを与えることができ、世界的大ヒットにつながったのは周知のことでしょう。

(4)伝わる言葉で伝える

相手が普段使っている言葉を使うと、伝わりやすくなります。入社したばかりのパート、アルバイトスタッフに、業界や自社内だけで使っている専門用語を使っても、意味が理解できないので伝わりません。

また、カタカナ英語も伝わりづらいので、できるだけ避けるようにしてください。文化庁の調査によると、「外来語や外国語などのカタカナ語の意味が分からずに困ることがある」と答えた人(16歳から50代)は62.6%もいました(出典元「国語に関する世論調査」平成29年度)。

カタカナ英語は、日本語に変換して伝える。専門用語は、教育してから使うようにしましょう。

(5)抑揚をつける

平坦な調子の話し方では、相手は興味を持って話を聞いてくれません。そうなると、本当に伝えたい情報が相手に伝わらなくなります。伝えたい箇所は声のボリュームを上げるなど抑揚をつけることで、その部分が強調され、相手に伝わりやすくなります。

旅客機が飛び立つ前に、乗客へのアナウンスを行う際、救命道具について案内をする箇所は、他よりもボリュームを大きくして流しています。それは、人命に関わる大切なアナウンスだからです。

また、身ぶり手ぶりなどのボディーランゲージを加えると、より強く相手に印象付けることができます。

(6)伝わるまで伝え切る

一度伝えたからといって、すべてを相手が理解しているとは限りません。大切なのは「伝え切る」ことです。セールスの世界では、同じことを切り口を変えて4回以上伝えなければ、相手に商品の良さや購入のメリットを分かってもらえないと言われています。

部下に対しては、伝えた後に確実に伝わっているのかどうかを確認することが必要です。

お薦めは、「今、聞いたことを要約して私に伝えてください」と言って、伝え直してもらうことです。そうすれば、何が伝わり、伝わっていないのかが分かります。

「伝える」ことはスキルです。正しいやり方を学んでトレーニングを積めば、誰でも上達し、成果を出せると覚えておきましょう。

『リーダーの任せる技術』より引用
岡本文宏
スタッフの“やる気”と“売る気”を一気に上げる!繁盛企業・育成コーチ。
アパレル専門店チェーン勤務、セブンイレブンFC店経営を経て2005年メンタルチャージISC研究所(株)を設立。
延べ250社以上の経営者に対して「繁盛企業になるための人材育成、マネジメント」ノウハウを提供。金融機関、商工会議所、業界団体、ショッピングセンターなどでの研修、講演は年間約100回以上。NHK「おはようニッポン」などのテレビ、民放ラジオ、新聞、雑誌などに多数取り上げられている。
『ダイヤモンドオンライン』『週刊ダイヤモンド』『バンクビジネス』『アイデム 人仕事研究所』『飲食店経営』など雑誌への連載、寄稿は450冊を超える。著書は『仕事ができる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』『独立して絶対にやるべきこと』『店長の一流、二流、三流』他、海外でも翻訳出版されている。
本業の傍ら、「著者×ミュージシャン」として、オリジナル曲を発表し、ライブ活動も行うマルチプレーヤーである。

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『効率アップ! チーム力アップ! モチベーションアップ! リーダーの任せる技術』
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