本記事は、岡本文宏氏の著書『効率アップ! チーム力アップ! モチベーションアップ! リーダーの任せる技術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネス
(画像=InfiniteFlow / stock.adobe.com)

右腕は1人でなくても良い

組織を運営するうえで、一番の理想はチームメンバー全員が右腕となることです。

言い換えれば、右腕チームです。

右腕チームに仕事を任せることで、特定のメンバーに負担が掛かりすぎることを防げます。右腕部下として頑張っていて、いつも笑顔で、依頼に対して「はい」と二つ返事で答え、すぐに業務に取り掛かるような従順に見えるタイプは、状態が急変することがあるので要注意です。

自分の限界値までは、いつもと変わらず、何も問題がないように見えますが、キャパシティを超えた時点でオーバーフローとなり、一気にモチベーションとパフォーマンスが低下してしまいます。いきなり退職届を手渡され、それっきり音信不通になる人もいます。

私はこのパターンを、セブン‒イレブンのFC店オーナー時代に何度か経験しました。

右腕チームにするには、メンバー各自の役割を明確にすることから始めます。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した80:20の法則から派生した2:6:2の法則:では、企業においては、2割の人材が生産性高く働き、6割は平均的な働き方をして、2割は成果に貢献できていない人材になるとされています。これでは、上位2割の人のみが忙しい思いをし続けなければならないので、不公平感を抱きます。

そうならないためには、各自の役割を明確に伝え、その業務に取り組まなければチームとしての成果を上げられないと説き、腹落ちさせます。そうすれば、全員が任せられた業務に懸命に取り組むようになります。これが右腕チームのあるべき姿です。

チーム運営で大切なことは、チームメンバー同士がお互いの状況をきちんと把握しておくことです。周りの状況が分かっていれば、自分の立ち回り方が自ずと見えてきます。業務が立て込んでいるので助けてほしいと思った際に、ヘルプの手を上げやすくなります。そのためには、「報・連・相」の確実な実施が必須です。

進捗報告は日々の朝礼、夕礼、終礼で行います。何かプロジェクトをスタートする際は、キックオフミーティングを行います。その後は、中間時期に複数回、終了時にも忘れずにメンバーを揃えてのミーティングを行い、各自の持つ情報をシェアしましょう。

右腕チームは緊急時に真価を発揮します。

映画『アポロ13』は、1970年のアポロ計画で実際に起こった事故を題材にした作品です。月面着陸を目指していたアポロ13号は、酸素タンクの爆発でミッションを断念。乗組員3名が数々の困難を乗り越え、無事に地球へ帰還するまでを描いています。

映画をご覧になった方はお分かりのように、宇宙船の3名と地上チームが密に連携して、立ちはだかるトラブルを1つひとつ解決していくのですが、このときの地上チームは、まさに乗組員にとっての右腕チームです。1人では到底解決できない難題も、複数の英知を結集すれば、必ず活路を見出せます。

AIを右腕にする

「AIは人間の敵だ! 仕事を奪われる!」ほんの少し前まで、そんなことが頻繁にメディアで喧伝されていて、AIに奪われる職種のランキングなども公表されていました。

ただ、最近は「AIは怖い……」ではなく、上手く活用するにはどうすればよいか? をテーマにした記事が取り上げられることが目立ってきています。

実際、AIは、ビジネスや普段の生活の中に入り込んできており、知らない間に触れている状況になってきました。

あなたは、ChatGPTを代表とする生成AIを使いこなしていますか? そこまではいかずとも、積極的に活用しているでしょうか? 私は、スタートこそ出遅れたものの、ある程度活用できています。

文章作成の際、しっくりこない部分があれば、そこのフレーズについて、AIに尋ねて、代替案を出してもらっていますし、原稿を執筆する際に、エビデンスが必要となる場合も情報収集を依頼します。

AIが製作してきたものは、少し手直しが必要になるとはいえ、大幅な時短、作業効率のアップができます。

膨大な業務を抱えている経営者、管理職、私のようなコンテンツ起業家(専門家)にとって、優秀な右腕となり、仕事を任せていける存在です。

とはいえ、まだまだ生成AIを使いこなしていない、もしくは、使い始めていない人もいるかと思います。これを執筆している現段階でのAIを右腕にする方法を少しご紹介しておきましょう。

たとえば、日々の朝礼の内容をAIに考えてもらうことができます。

毎日、同じような朝礼内容では飽きられてしまいますし、モチベーションも上がりません。朝から部下のやる気を高め、成果を上げることができる朝礼を行うために、どうすればよいのか? と悩むことがあるかもしれませんが、そういうときには、生成AIに質問してみればよいのです。

生成AIが世に出始めた頃、よく言われていたのが、AIへの指示の出し方(プロンプトの作成)には高度なスキルがいるとか、正しい答えを引き出すにはコツが必要ということでしたが、今はそれほど難しいものではありません。プロンプトは、「10分間で営業チームの部下のモチベーションを高める朝礼のモデルケースを具体的に提案してください」と、これだけです。指示をして3秒後に出てきた生成AI(ChatGPT4.0)の答えは次のようなものでした。


以下は、10分間で営業チームの部下のモチベーションを高める朝礼の具体的なモデルケースです。ポイントは短時間で効果的に行い、部下のやる気を引き出すことです。

時間割と内容

(1)導入:挨拶と目的の共有(1分)
リーダーの挨拶:「おはようございます! 今日も目標に向けて一緒に頑張りましょう。今日の朝礼では、成功事例を共有して、皆さんの日々の活動のヒントになる時間にしたいと思います」
(2)モチベーションアップの話題共有(2分)
短い成功エピソードを紹介:「昨日、〇〇さんが初訪問でお客様から即決で契約をいただきました! お客様の心を動かしたのは、〇〇さんのヒアリング力と、真剣な提案があったからです」

全員で拍手:成功を称賛し、ポジティブな雰囲気を作ります。
(3)チーム目標の共有と現状確認(2分)
目標進捗の簡単な共有:「今月のチーム目標は新規契約〇件ですが、現在〇件まで到達しています。このペースを維持すれば達成は可能です。今日は全員で1歩前進しましょう!」

具体的な数字やグラフを見せる:ホワイトボードや印刷資料を使い、視覚的に現状を示す。
(4)実践的なアクションポイント共有(3分)
営業テクニックのミニレクチャー:「今日はヒアリング力を高めるポイントを1つ。お客様に『何が一番困っていますか?』と訊く代わりに、『最近の業務でとくに注目していることは何ですか?』と質問すると、より具体的な課題が引き出せます」

部下同士の意見交換:2~3名で「最近うまくいったヒアリングの質問例」を共有してもらいます。
(5)行動宣言(2分)
全員が今日の目標を声に出す:「今日は〇件訪問します」「〇名にアプローチします」など各自が今日達成する目標を短く発表。

リーダーの応援メッセージ:「皆さんの行動がチーム全体の力になります! 今日も期待しています」
(6)締めの言葉とエネルギーアップ(1分)
リーダーからの一言:「目の前の小さな一歩が、大きな成果につながります。自信を持っていきましょう!」

全員で声を出して気合を入れる:「今日も一日頑張るぞー! おー!」
ポイント
成功体験を共有することで、具体的なイメージとやる気を引き出します。
短くても具体的なアクションを示し、実践的な内容を盛り込みます。
参加型にすることで、一方通行にならず、部下の主体性を促します。
このモデルケースをもとに、貴社のチームに合わせて調整してみてください。

いかがでしょう? たった46文字のプロンプトで、時間配分付きのシナリオが出来上がるのです。もう、何を話そうかと、毎朝悩まなくてもよくなりますよね。

さらに、次の日以降の朝礼についても準備をしておくのなら、今のやり取りの続きとして、「(4)実践的なアクションポイント共有(3分)の営業テクニックのミニレクチャーの事例をあと3つ教えてください」とAIに入力すれば、3秒程度で事例が出てきます。

それをもとに、あとはあなた自身の事例を入れ込めば、数日分の朝礼のシナリオが1分も掛からずに出来上がります。AIを右腕にしない手はないと思われたのではないでしょうか?

人間の右腕と同じように、AIはリーダーにとって良い壁打ち相手として機能します。

キーボードで入力してもいいですが、音声入力機能を使えば、ある程度、自然な感じでAIと会話をすることができます。

こちらからの問いかけに対して、蓄積されている情報やWEB上のデータなどから、アイデアを出してくれます。会話を深めていけば、1人で質の高いブレーンストーミングをすることができます。

AIにアイデアを考えてもらったり、答えを出してもらったりした後は、ちゃんとお礼を伝えてください。そうすると「どういたしまして! お役に立てて嬉しいです」と返答がきます。AIには感情がないので、お礼など不要と思うかもしれませんが、「今の回答でバッチリです! ありがとう」とお礼を伝えると、AIはこのような回答をユーザーが好むのだと学習します。そうすると、徐々にあなたが欲しい答えやアイデアを出す精度が高まります。

AIは育てて活用する右腕だと捉えて、お付き合いください。

※ 参考文献:『AIを味方につけて稼ぎ続ける自宅教室になるための 百万円集客 7つのコツ』高橋貴子(著) 合同フォレスト 2024年

『リーダーの任せる技術』より引用
岡本文宏
スタッフの“やる気”と“売る気”を一気に上げる!繁盛企業・育成コーチ。
アパレル専門店チェーン勤務、セブンイレブンFC店経営を経て2005年メンタルチャージISC研究所(株)を設立。
延べ250社以上の経営者に対して「繁盛企業になるための人材育成、マネジメント」ノウハウを提供。金融機関、商工会議所、業界団体、ショッピングセンターなどでの研修、講演は年間約100回以上。NHK「おはようニッポン」などのテレビ、民放ラジオ、新聞、雑誌などに多数取り上げられている。
『ダイヤモンドオンライン』『週刊ダイヤモンド』『バンクビジネス』『アイデム 人仕事研究所』『飲食店経営』など雑誌への連載、寄稿は450冊を超える。著書は『仕事ができる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』『独立して絶対にやるべきこと』『店長の一流、二流、三流』他、海外でも翻訳出版されている。
本業の傍ら、「著者×ミュージシャン」として、オリジナル曲を発表し、ライブ活動も行うマルチプレーヤーである。

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