本記事は、岡本文宏氏の著書『効率アップ! チーム力アップ! モチベーションアップ! リーダーの任せる技術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=The KonG / stock.adobe.com)

ノウハウを知っただけでは任せられないのはなぜか?

仕事の任せ方を紹介している本は数多く出版されています。ネットを検索すれば、膨大な数のノウハウを紹介するWEBページが表示されます。生成AI(ChatGPT)に質問したら、「部下に仕事を任せるためには、信頼関係を守りながら、明確な指示とフォローアップを行うことが重要です」と丁寧に答えてくれて、ステップを踏んでいけば、仕事を部下に任せることができるようになる方法を紹介してくれます。

このように、任せるノウハウは、世の中にごまんと出回っているにもかかわらず、企業の現場では、任せることができずに頭を抱えるリーダーが多数派を占めています。

ノウハウを知っただけでは、現場の部下に仕事を任せることができないというのが現実なのです。それはなぜか?

部下に任せることに対する心理的なブレーキが掛かってしまうことが大きな原因の1つです。かつての私もそうでしたが、任せた後に、最悪の未来ばかりを想像してしまうのです。そうなると、任せることはできません。

不安になる一番の原因は、教育不足です。考え方とやり方をきちんと教えれば、高度な専門スキルが必要な場合を除いて、大抵のことは任せる側と同じレベルで仕事ができるもので、心配は杞憂きゆうである場合が多いと言えます。

また、部下の特性を熟知したうえで任せていかなければ、スムーズに業務を遂行できません。

任せた仕事に積極的に取り組まない様子を見ると、やる気がないな! とか、不真面目だ! などと思い、不快に感じて、こちらがストレスを溜めてしまう場合もあります。そうなる理由が、好きではない業務をやらされているからであったり、苦手な業務だったからと分かれば、部下の見方が変わってきますし、対応策も考えられます。

そのためには、部下1人ひとりに目を向け、理解を深めることが必要です。

任せることで得られる5大メリット

仕事をしっかり任せることができるメリットは、リーダー(任せる側)、部下(任せられる側)の双方にあります。腹落ちしたうえで、任せることを実践しましょう。

時間ができる

働く者に与えられている時間は有限です。企業に勤務している場合、多少の残業はあるかもしれませんが、多くは1日8時間です。時間内に、やらなければならないことを完了させて、自分がやりたいと思うことにも取り組んでいきたいですよね。

ただ、やらなければならない業務を大量に抱えていると、自分がやりたいことにまでたどり着けず、1日が終わってしまいます。やりたいことに手が付けられない状況が続くと、フラストレーションが溜まります。

リーダーが、自分の仕事の一部を部下に任せることで、これまで作業に費やしていた時間を削減できます。空いた時間に「自分がやりたいこと」に取り組むことができるので、イライラしていた状態から解放されます。心理的な余裕が出てくるでしょうし、落ち着いて物事に取り組めるようにもなります。

マネジメント力が付く

仕事を部下に任せるには、任せるために必要なスキルを身に付けなければなりません。

そのために、人材育成に関する本を読んだり、セミナーに参加したりして、ノウハウや情報を得ることになります。結果としてマネジメント力が強化され、リーダーとしての成長が促進します。

任せることができれば、「自分は人材マネジメントが上手くできている」という感覚が持てます。これは、カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感(self-efficacy)」が高まることにつながります。「自分ならできる」「きっと上手くいく」と思えることは、現場を率いるリーダーには必要な心理面での要素です。

部下が成長する

部下が得意な仕事を任せれば、無理なく業務を完了させることができ、安心して任せることができます。正確さ、スピードを重視し、生産性を高めることを追求するのであれば、最も効率のよい仕事の任せ方です。部下としても、業務を進めていくうえでつまずくこともありません。

ただ、安心安全に任せることができる半面、部下の弱みの克服や成長促進にはつながりません。任せることで部下の成長を促すには、“無理なくできる”ではなく、少し背伸びをすればできる業務を任せていきましょう。

このとき、リーダーはもちろん、周りのスタッフからもサポートを得られることがあらかじめ分かれば、過度なストレスを感じることなく、任せられた仕事に取り組めます。結果として、部下の成長の促進が見込めます。

離職防止につながる

これを読んでいるあなたも、上司から、単純な作業や雑用ではなく重要な仕事や責任の伴う任務を任せられたときに、「期待されている」「頼りにされている」と感じた経験がおありでしょう。

期待されていると感じれば、部下はそれに応えようと行動し懸命に努力します。これは、心理学用語で〈ピグマリオン効果〉と呼ばれています。期待通りに結果を出して、褒められればモチベーションが上がり、次も同じように褒められたいと思い、リーダーにとってもプラスと思える行動が促されます。

任せられた仕事を上手く完了できれば、自信がつきます。自分で自信がついたことを自覚できれば、成長できたと思えます。

多くの人は、仕事を通じて成長したいと願っています。これは誰もが持っている成長欲求であり、そのニーズが満たされる職場であれば、ここでずっと働き続けたいと思います。

仕事をしっかり任せることは、離職防止にもつながるのです。

システム化が進む

任せる業務の内容について、毎回、1つずつ指示を出していくとなると、それだけで膨大な時間と労力が必要です。任せる大きな目的の1つは、生産性のアップやリーダーの省力化による時間の創出です。

そうであれば、いちいち指示を出すのではなく、自動的に部下が行動するための仕組み(システム)を作ることが重要です。システムといっても、難しく考える必要はありません。

たとえば、事務用品や備品の発注業務を任せるのであれば、担当者が在庫をチェックする日時を決めて、残数が○個になれば発注するというルールを決めるだけです。このように、システム化できる項目をピックアップし、誰が、どのタイミングで実行するのかを一覧表にして全員が把握していけば、指示を出さずとも、自動的に任せたことが確実に実行されるようになります。

『リーダーの任せる技術』より引用
岡本文宏
スタッフの“やる気”と“売る気”を一気に上げる!繁盛企業・育成コーチ。
アパレル専門店チェーン勤務、セブンイレブンFC店経営を経て2005年メンタルチャージISC研究所(株)を設立。
延べ250社以上の経営者に対して「繁盛企業になるための人材育成、マネジメント」ノウハウを提供。金融機関、商工会議所、業界団体、ショッピングセンターなどでの研修、講演は年間約100回以上。NHK「おはようニッポン」などのテレビ、民放ラジオ、新聞、雑誌などに多数取り上げられている。
『ダイヤモンドオンライン』『週刊ダイヤモンド』『バンクビジネス』『アイデム 人仕事研究所』『飲食店経営』など雑誌への連載、寄稿は450冊を超える。著書は『仕事ができる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』『独立して絶対にやるべきこと』『店長の一流、二流、三流』他、海外でも翻訳出版されている。
本業の傍ら、「著者×ミュージシャン」として、オリジナル曲を発表し、ライブ活動も行うマルチプレーヤーである。

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『効率アップ! チーム力アップ! モチベーションアップ! リーダーの任せる技術』
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