本記事は、岡本文宏氏の著書『効率アップ! チーム力アップ! モチベーションアップ! リーダーの任せる技術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

《伴走力》
部下に寄り添い支援する姿勢でいる
仕事を任せる際に、「あなたに任せたから、後は自分で頑張ってね!」と放置すると、部下は不安を抱きながら業務を進めていかなければなりません。そうかといって、仕事を進める過程で、あれこれと口を挟むようでは、本当の意味で任せたことにはなりません。
お薦めの関わり方は「寄り添う」です。常に手取り足取りの二人三脚ではありません。
実走するのは部下で、その状況を見守っていることを、言葉や態度で伝えていくスタイルのマネジメントを指します。
人は心が安定し、安心、安全と思える状況でないとモチベーションが上がりません。心理的安全性が確保されていることが必要です。
心理的安全性とは、アメリカの組織行動学の研究者のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した、「関わる人たちが安心して発言や行動ができる環境」が保たれている状態のことです。そのためには、リーダーがしっかり部下の話を聞き、意見に耳を傾けるように努めることが大切です。
普段から仕事をしている状況を観察し、必要に応じて声を掛け、個別ミーティングを行い、部下の考えていること、悩みや問題点を把握しましょう。
このとき、リーダーが答えを出すことを目的とせず、たとえば、任せられた業務が上手く進まないのであれば、
「仕事を進めるうえで何が障害になっていますか?」
と質問して、自分で解決策を見出せるように導きます。アドバイスを求められれば、シンプルに情報提供として伝えてください。
寄り添うスタンスで伴走支援するには、フィードバックは欠かせません。部下の言動を観察していて感じたこと、気づいたことについては、できるだけ早く伝えます。そのとき、「今日はいつもよりも業務をこなすスピードが2割程度落ちているように見えます」と、客観的に伝えると受け取りやすくなります。
《感謝力》
「ありがとう」を具体的に伝える
仕事を任せるうえで、部下に感謝することは欠かせません。本来ならば、すべて自分でやらなければならないことを、肩代わりして取り組んでくれているのです。そう捉えると、部下はありがたい存在ですよね。もし、部下がいないという場合でも、お取引先やアウトソーシング先など、あなたに協力してくれている人は複数いるはずです。
ただ、周りで業務を任せている人たちに対して、仕事なんだからやって当たり前、指示に従って動くのは、部下の義務である、ややもすれば、そのように思ってしまい、感謝を伝えることをしていないリーダーもいます。心の中で感謝しているという方がいるかもしれませんが、その気持ちは、言葉や態度で表さなければ相手には伝わりません。
感謝はとくに難しいことをするわけではなく、「ありがとう」のフレーズを伝えるだけです。その際、具体的に「●●をしてくれてありがとう」と感謝の対象を伝えると、何に対して感謝しているのかが伝わり、こちらの気持ちが相手に届きやすくなります。
感謝の気持ちはあるのに、「すみません」と謝ってしまう人がいますが、これは残念なフレーズです。私自身も以前は、何か感謝するに値することをされたとき、「すみません、助かります……」と相手へ伝えていました。
相手の行為に対して、恐縮している気持ちとともに感謝を伝えているつもりでした。でも、20年くらい前に参加したコミュニケーションの在り方を学ぶセミナーで、それでは、ネガティブな感情を抱くことになるので、「すみません」を「ありがとう」に変えましょうと教わり、その日以来、感謝する際は素直に感謝のフレーズを使うようになりました。
精神科医の樺沢紫苑氏の著書によると、感謝をすることで脳内に幸福物質である「ドーパミン」「セロトニン」「オキシトシン」が分泌されるとあります。常に感謝の気持ちを持って、職場で周りの人たちと関われば、人間関係の良好な組織になります。
私が研修で関わる企業で、感謝の気持ちをカードに記入して同僚に伝えるワークに取り組んでもらったことがあります。その際、参加者からは、カードを記入しているとき、同僚から受け取ったとき、どちらも嬉しい気持ちになった、普通にやっていたことが周りに役立っているのだと分かり嬉しくなったなどの感想をいただきました。
このように、定期的に感謝を届ける行動を続けていけば、チームに感謝し合う文化が根付き、関係性が良好になります。
※ 精神科医の樺沢紫苑氏著『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』https://amzn.to/3VPp6Eo

アパレル専門店チェーン勤務、セブンイレブンFC店経営を経て2005年メンタルチャージISC研究所(株)を設立。
延べ250社以上の経営者に対して「繁盛企業になるための人材育成、マネジメント」ノウハウを提供。金融機関、商工会議所、業界団体、ショッピングセンターなどでの研修、講演は年間約100回以上。NHK「おはようニッポン」などのテレビ、民放ラジオ、新聞、雑誌などに多数取り上げられている。
『ダイヤモンドオンライン』『週刊ダイヤモンド』『バンクビジネス』『アイデム 人仕事研究所』『飲食店経営』など雑誌への連載、寄稿は450冊を超える。著書は『仕事ができる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』『独立して絶対にやるべきこと』『店長の一流、二流、三流』他、海外でも翻訳出版されている。
本業の傍ら、「著者×ミュージシャン」として、オリジナル曲を発表し、ライブ活動も行うマルチプレーヤーである。
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