本記事は、秋山 真氏の著書『これまでと同じ採用手法で大丈夫なのか?と悩んだときに読む採用の新基準』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

採用数に影響する「3つの壁」
採用課題を解決するためには、企業が自社のスタイルを認識し、視点ごとに整理し、それぞれ言語化し、丁寧に発信していくことが必須です。
しかし、いきなりそれを実践しようとしても、万事うまくいくとは限りません。採用が成功していない根本的な理由を、知る必要があるからです。
ミスマッチが起こる原因、ひいては採用難が発生するメカニズムについて、もう少し掘り下げて分析していきます。
採用がうまくいかない理由の構造をひも解いていくと、次の3つの壁(パターン)がネックになっていることがわかります。
- パターン① 認知の壁
- パターン② 認識の壁
- パターン③ 動機づけの壁

この3つの壁を乗り越えていかないと、採用数は伸びません。もしも「今、採用がうまくいっていない」と感じていたら、このうちどれかの壁、場合によっては3つすべてに該当している可能性があります。
それぞれ、もう少し詳しく見ていきましょう。
① 認知の壁
認知の壁は、そのものずばり「認知度が低い」状況に直面していることを意味します。
そもそもその企業の一般的な知名度が低く、その業界志望者にしか知られていないというパターンや、知られてはいるものの業界内の他企業に比べて圧倒的に知名度が低いパターンなど、そのレベルは千差万別ですが、採用担当者の大半が「自社のPRが難しい」と感じている点においては共通します。
認知の壁にぶつかりやすいのは、手掛けている商品やサービスの名称や内容が表に出にくい、B to B企業に多い印象です。
② 認識の壁
認識の壁は、その企業のことは認知されていても、事業内容や勤務形態を「正しく認識されていない」状況が該当します。
企業が採用サイトや説明会で詳しい情報を発信しているつもりでも、求職者側からすると、「それでもまだ情報が不足している」というケースがよくあるのです。そこに働き方や価値観の多様化が拍車をかけ、正しい認識を得る難易度がさらに高まってきています。
働き方や価値観に対する考え方が多様化したことで、同じ言葉や制度でも人によって受け取り方が大きく異なり、企業が伝えたかったニュアンスが正しく届かないという状況が生まれやすくなっています。
その結果、求職者が「正しい認識」を得る難易度がさらに高まり、採用担当者が「偏ったイメージを直したい」と思っても、求職者と企業の認識のズレは、そう簡単に解消されないのです。
これは、中小企業に限った話ではありません。大手企業、それも業界トップクラスの企業でも、この認識の壁に悩まされていることがあります。
たとえば積水ハウスと大和ハウスは、圧倒的な認知度を誇る大手ハウスメーカーですが、事業内容は大きく違っていて、住宅関連にほぼ特化している前者に対し、後者は家づくりだけでなく街づくりに必要な事業にも注力しているという特徴があります。
この違いはあまり認識されておらず、同じ大手ハウスメーカーという扱いを受けることが多いのです。大企業だからこそ「こういう会社」という先入観を持たれやすい側面もあるのでしょう。テレビCMなどを多く実施している企業も同様の壁に突き当たることが多く、すでに認識されているイメージと採用に当たって認識してほしいイメージに大きなギャップが存在する場合があります。
③ 動機づけの壁
動機づけの壁は、「動機づけが弱い」ために、求職者に選考に進んでもらえなかったり、内定辞退率が高い状況に陥ってしまったりしていることとご理解いただければよいかと思います。
新卒の就活生が内定を辞退した企業数の平均は約3社強に上り、入学難易度(=偏差値)の高い大学ほど辞退数がさらに多くなるというデータがあります。現在は企業が内定を出したあとも求職者の承諾を得るために、競合企業と戦い、勝ち抜く必要があるという構造にあるのが事実です。
今の採用の現場は、完全なる売り手市場です。企業は、求職者から選ばれる立場にあります。
プレエントリー、インターンシップ、カジュアル面談など、就活や転職の初期段階から企業と接点を持つことが当たり前となり、接点数そのものは確実に増えました。
しかしその一方で、接点を持つのが早まったぶん、求職者の選択肢も増え、企業をじっくり比較する傾向が強まっています。
結果として、「選考途中で離脱する」「内定を出しても他社に流れてしまう」といった、選考接続率や内定承諾率の低下に悩む企業が後を絶たない状況になっているのです。
そういった企業の多くの採用担当者は、
「選考途中で離脱してしまう求職者が多い」
「競合他社や他業界に競り負けてしまう」
といった悩みを口にします。
動機づけが高まらないことには、この状況は改善されないでしょう。

2021年、No Company, inc.を設立し、代表取締役社長に就任。
これまでに100社以上の採用支援を手がけ、1,000名を超える人事・採用担当者と対話を重ねてきた。「スペックではなく、価値観でつながる採用(=スタイルマッチ採用)」という考え方を提唱し、SNS上のビッグデータを活用したZ世代の価値観・インサイト分析にも注力。マーケティングと人事領域を横断した支援を展開している。
「人と組織の問題は、社会全体の課題である」と捉え、従来の採用サービスでは解決できなかった本質的なテーマに、マーケティングとコミュニケーションの力で取り組む。日経クロストレンドなどでの連載や、各種メディア出演も多数。
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