本記事は、池本 博則氏の著書『Unique Piece あなたの価値の育てかた』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

他人の価値を活かすことが、自分とチームの価値になる
部下やチームメンバーの価値の見つけかたと活かしかたという観点から、その考え方や具体的な方法を紹介します。
ここで紹介する方法は、部下やメンバーだけでなく、同僚にも応用することができます。
30代を超えると、会社の規模の差こそあれ、職場でリーダー職を担っている人も多いと思います。
まず、部下やチームメンバーそれぞれの価値を見出していく時のポイントは、リーダー自らが、部下やチームメンバーの「可能性」を信じることです。
厳しい言い方をすると、これができないリーダーは、リーダーとしての存在意義がないとすら私は思っています。
例えば、あるメンバーがいて、Aの仕事は苦手だけど他にBの仕事がある時、そのBという仕事なら得意になるかもしれないし、できるかもしれないと考え、新しい「可能性」のほうに目を向けて挑戦の機会を与えるということです。
あるいは、Aの仕事が得意で活躍している時も、Bという仕事の選択肢を提示することで、「違う方向の可能性もあるのではないかな?」と模索する。
それがゆくゆくは、新しい強みに育ちチーム全体に貢献してくれるかもしれません。
このように、リーダーは常に選択肢やチャンスを与えていく意識を持たなければ、部下やチームメンバーは、いつまでも現状に留まり、1つの方向でしか成長していかないということになります。
1つの方向でしか成長しないということは、いわゆる“替えが効かない”仕事を生み出すことになり、リスクマネジメントの観点からも適切ではありません。
また、よく「もっと仕事の質を上げろ」「パフォーマンスを上げろ」といって発破をかけるリーダーがいますが、ただそんなことを言われても、部下やメンバーはなにをすればいいのか一向にわからず、仕事の質も上がりません。
「パフォーマンスを上げろ」といって上がるのなら、苦労しないでしょう。
そうではなく、パフォーマンスを上げたいのなら、具体的にパフォーマンスを上げることができる選択肢を提示する必要があるのです。
そのためにこそ、まずメンバーの可能性を信じてあげることが大前提であり、それを信じてあげてはじめて、各々の可能性を模索することができます。
もちろん、部下やメンバーの可能性や、得意なことを模索してあげようとしても、なかなかうまくいかない場合もあるでしょう。
例えば、「Bという仕事をやってみる?」と選択肢を提示しても、その仕事が本人にとって気が進まない、「やりたくない」ことである場合も往々にしてあり、本人の「納得感」が薄く、結局は仕事の質も上がらないという事態はよく見られます。
こうした人と仕事のマッチングは、確かにリーダーにとって頭が痛い問題ですが、大切なのは、「どのようにしてその仕事に向き合わせるのか」「どういうかたちで挑戦させるのか」を考えて導くことです。
このことは、それこそ「宿題しなさい!」といってもなかなかやらない子どもに、うまく宿題をさせることと似ている面があります。
つまり、命令だけをしても全く効果はなく、ただ選択肢を提示するだけでもなく、そこには部下やメンバーの動き方をフォローする向き合い方が必要なのです。
具体的な方法は、人やシチュエーションによって変わりますが、およそ3つの方向性が考えられます。
① 「やり方」を伝える
② 「区切り」をつける
③ 「伝え方」を工夫する
①は文字通り、仕事の具体的なプロセスや、ポイントになる作業のコツなどの方法を丁寧に伝えてあげることです。
最初からものごとを自分で考え、最適な方法を自力で編み出していける人ばかりではありません。
まずは、普遍的な「やり方」を身につけるからこそ、そこから自分なりの応用を考えられるようになるのです。
②は、時間や内容ごとに作業を区切り、その仕事にトライし続ける意欲を維持できるようにする工夫をしてあげることです。
新しいことや苦手意識があるものごとに向き合うと、どうしても集中力を維持するのが難しくなりますから、リーダーがそれをフォローする環境を整えてあげなければなりません。
③は、目の前の仕事の意義をより広い視点から伝えることで、挑戦する意欲を高めてあげることです。
このように部下やメンバーに丁寧に向き合う姿勢を貫いていると、私の経験上、彼ら彼女らは自分の価値を自分で見つけはじめ、どんどん成長していきます。
特に、私がよく見てきたのは、苦手だと思っていた仕事が「食わず嫌い」だったというケースです。
例えば、人前で話したり説明したりするのが苦手で避けていた人に、丁寧にフォローしながら仕事を与えていくと、少しずつ体験を積み重ねて、やがて「人前で話すことが楽しくなった」ということは珍しくありません。
逆に、部下やメンバーが新しいやり方を編み出して、教えてくれることもよくありました。
そうして、お互いの相乗効果でチーム全体の成長が加速していくのです。
リーダーにとっては、最初は少し時間と手間がかかるかもしれません。
ですが、ゆくゆく自律的に動いていけるチームを作るためにも、ぜひ押さえておいてほしいポイントです。

徳島県吉野川市出身
2003年、株式会社毎日コミュニケーションズ(現:株式会社マイナビ)に入社。
10年以上に渡り、新卒採用支援を手がける。
2015年に営業統括部長として新卒採用領域で、マイナビが様々な指標で業界No.1と評価の出来る成果を達成!
その年のマイナビ全社顕彰年間MVPと社長賞を受賞する。
2016年に執行役員に就任し、既存事業の立て直しと新規事業の設立を担当。
2017年に国内唯一の総合農業情報サイト「マイナビ農業」を立ち上げ、数多くの農業振興に携わることで、労働市場における社会課題に向き合う。
その後、農業におけるマッチングアプリ「農mers」(グッドデザイン賞2019受賞)や、一次産業総合求人サイト「マイナビ農林水産ジョブアス」といった新サービスを開発。
2023年5月、マイナビ生活20年目の節目に円満退職。
2023年6月、株式会社ユニークピースを創業。
ママのための人材サービス「ママアイ」や学生向けスクールウェア提供サービス「ガクユニ」など幅広い領域でユニークな自社サービスを提供する傍ら、多くの企業の事業開発支援などコンサルティングも提供し、現在に至る。
座右の銘は「NEVER STAND STILL」-決して立ち止まらない-
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