本記事は、石上 和平氏の著書『社長はなぜ、いつも孤独なのか? その答えは「ふくろう」にあった。』(游藝舎)の中から一部を抜粋・編集しています。

AIにはできない「ぬくもりのある傾聴」
では、これからの時代、何が人にしかできないコーチングでしょうか?
「AIコーチ生成法」を紹介しましたが、人間の仕事がAIに置き換えられていくのと同じように、コーチングもAIにどんどん取って代わられます。
AIに仕事や思考が奪われることを危機ととらえる向きもあるでしょう。しかし重要なのは、「AIに奪われる」のではなく「AIを活用する」という視点です。AIの進化はもはや止められないのですから、
それでは人間しかできないコーチング領域とは何でしょうか?
「傾聴」です。
AIは、質問すればすぐに反応します。人間とは比べものにならないくらい大量の情報を瞬時に処理して答えを出します。速さと正確さはもう人間にはかないません。
しかし、AIは今のところ傾聴ができません。
「ただゆっくり聞いてくれている」
「心から耳を傾けてくれる」
という反応は、人間ならではの傾聴です。
AIは聞くだけという反応はできるでしょう。しかし、AIからは人としての温かさや熱は感じません。「本当に寄り添って聞いてくれているな」と感じられるような、人間レベルの傾聴は、今のところAIにはできません。
AIは褒めるのもとてもうまい。しかし、私は「それ、本当に心から思っているのか?」と疑ってしまいます。
AIはフィードバックもうまい。しかし、誰しも「同じ内容でも、あの人に言われたら不思議と頑張ろうと思える」という経験があるのではないでしょうか。
「何を言うかより誰が言うかが大事だ」と、よく言われます。信頼できる人の傾聴やぬくもりのあるアドバイスだからこそ、心にしみるのです。
「エンパワーする(力を与える)」
「最後の一歩で背中を押す」
こうしたことは、人間の体温やエネルギー、情が必要です。
人間がさらに磨くべきコーチングスキルは、傾聴力や承認力といったものです。これらは容易にはAIに置き換えられません。
コーチングの「やり方」は、AIが人間を超える日が来るかもしれません。だからこそ、人間味や感情を含めたコーチとしての「あり方」が大切です。
「何を目指してコーチングするのか?」
リーダーには、そうした自らのミッションステートメントを掲げることが求められるのです。
コーチングが日本の未来をアップデートする
「失われた30年」この言葉をこれまで何度目にしたことでしょうか。
日本はバブル崩壊以来、約30年間にわたって経済的な停滞が続いてきました。先進国の中でも、30年にわたって給料が上がらなかった唯一の国だといわれています。日本の世界の中での存在感は低下する一方です。
私はコーチングが日本を浮上させる原動力の1つになると考えています。
私がコーチングを続けてきて実感しているのは、コーチングはコミュニケーション技術の1つだという点です。何らかの思いや夢、目標を持つ人をサポートするためのコミュニケーション技術です。
誰しも、自分にとって大切な人や応援したい人がいるでしょう。
コーチングは、その人たちを最大限に応援するためのスキルだと言えます。コーチングというコミュニケーション技術がこれまで以上に活用されるようになれば、より多くの人の夢が応援される社会になるのではないでしょうか。
コーチングを受ける人が増えることによって、多くの人のウェルビーイングが向上して日本の未来も明るくなると私は確信しています。人を大切にし夢を応援し合う文化こそが、停滞した日本を再び成長軌道に乗せるカギだと信じます。
だからこそ、コミュニケーション技術としてのコーチングを1人でも多くの人に知ってほしいのです。
私は「コーチング」と「AI」と各社各人の「強み」を組み合わせれば相乗効果が生まれ、中小企業は確実に成長すると確信しています。成長する企業が増えれば、日本全体も間違いなく活性化していくでしょう。
日本をさらに成長させたい。日本を世界から注目される国にしたい。日本をもっと良い国にしたい。
そして、日本の未来を担う子どもたちに夢を届けたい。私はその未来を信じています。
身近な人や好きな人、大切な人を応援することは、ほんの小さなことかもしれません。
しかし、その輪が広がれば、日本の未来は必ず明るくなる ―― そう確信しています。
リーダーが変われば、未来は動き出す。
▼著者サービスリンク
社長のためのエグゼクティブコーチング 社長のふくろう®

バーテンダーやクロス職人を経て、2004年に株式会社R4に入社。
営業職としてキャリアをスタートし、2006年には東京支社の立ち上げを担い、支社長としてマネジメントと採用支援に従事。
その後、株式会社オークファンや株式会社びりかんなどで法人営業や組織変革コンサルティングを経験し、200名以上の経営者と1,000件以上の組織課題に向き合う。
こうした経験をもとに、2015年に「合同会社ちょんまげ」を設立(2017年に株式会社化)。
経営者向けコーチングサービス「社長のふくろう」を展開する。
「夢の助かるる世をつくる」というビジョンを掲げ、経営者の人生に寄り添うコーチングを通じて、夢の実現を支援している。
提供する「社長のふくろう」は、経営者の「苦労」を「不苦労(ふくろう)」に変えることを目指したサービスで、仕事・経済・健康・人間関係など8つの領域にわたる人生のビジョンを明確化し、行動変容を促すコーチングを行っている。
また、児童養護施設での学習ボランティア経験などから「人の夢を応援すること」に強い情熱を持ち、将来的には子どもたちへのコーチング支援や、社会貢献型の資金循環システムの構築にも取り組んでいる。
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