立ちはだかる上場維持基準
昨年来、「上場基準」未達による上場廃止を避ける動きが顕在化している。上場廃止のおそれをTOB受け入れの理由にあげたケースは少なくとも11件あり、全体の1割を占める。
東証の市場区分見直しから3年となる2025年3月以降、上場維持基準に未達でも上場を認める「経過措置」が順次終了している。改善期間(通常1年)内に基準に適合しないと、監理・整理銘柄に指定(6カ月間)後、上場廃止となる。
東証スタンダード上場で電子写真プリンターなどを手がける桂川電機はMBOを8月から実施中だが、流通株式時価総額(10億円以上)を満たしていない状況を踏まえ、株主に早期に売却機会を提供するとしている。
(画像=資本市場の総本山・東京証券取引所(東京・日本橋兜町)、「M&A Online」より引用)
今年は案件の大型化も目立つ。NTTは親子上場の解消を目的にNTTデータグループに2兆3000億円規模のTOBを5月から6月にかけて実施した。
6月初めには、トヨタ自動車の源流企業である豊田自動織機がトヨタグループによる総額4兆7000億円の買収・非公開化を受け入れると発表。日本企業のM&Aとして歴代2位の超大型案件だが、これに関連するTOB(3兆7000億円規模)は12月をめどに予定されている(現時点の集計には含まず)。
コロナ禍を経てTOBラッシュが再来
TOB件数はリーマンショック前年の2007年に最多の104件を記録した。その頃、村上ファンド(当時)や日本上陸の米国系ハゲタカファンドが猛威を振るい、産業界にTOBを通じた合従連衡やMBOが広がった。2011年には55件のTOBのうち、MBOが4割近い21件に達した。
2010年代に入ると、TOBは年間40~50件で推移。コロナ禍初年の2020年(60件)を境に復調に向かい、21年70件、22年54件、23年74件を経て、24年は一気に100件まで件数を伸ばした。
文:M&A Online