この記事は2024年7月25日に「第一生命経済研究所」で公開された「都区部版・日銀基調的インフレ率の試算(2025/7)」を一部編集し、転載したものです。


まちまち:刈込平均・加重中央値は低下
以前のレポートで試算した①東京都区部版の基調的インフレ率3指標、②日銀が賃金から物価への波及度合いを分析する際に利用した低変動品目CPIについて、本日公表の7月都区部CPIを用いて計算した。
計算値をみると、刈込平均値(全国ウェイト換算)は6月:+2.5%→7月:+2.3%、加重中央値(全国ウェイト換算)は6月:+1.2%→7月:+1.1%、最頻値は6月:+1.4%→7月:+1.6%(いずれも前年比)となった。また、全国版の低変動品目CPIは5月:+1.4%→6月:+1.3%、都区部では6月:+1.9%→7月:+2.0%となった。
結果はまちまちといったところ。日銀の物価観に変化をもたらすほどの内容ではないだろうが、加重中央値の低下が続いた点は若干弱めの印象である。予想インフレ率の上昇幅も限定的にとどまっている【弊著「日銀手法に倣った合成予想インフレ率の推計~前期から上昇も「基調的インフレ率」の日銀評価は変わらずか~」(7月14日)】中で、2%を下回るとする日銀の基調的インフレ率判断も不変とみられる。日米関税合意は利上げに追い風だが、今回結果は特にそれを急がせる内容ではない。7月会合は現状維持とみられる。

(参考文献)
星野(2023)「東京都区部版・日銀基調的インフレ率の試算」第一生命経済研究所 Economic Trends
星野(2024)「日銀の「第二の力」指標を再現してみた」第一生命経済研究所 Economic Trends
川本・中浜・法眼(2015)「消費者物価コア指標とその特性 — 景気変動との関係を中心に —」日銀レビュー・シリーズ、15-J-11
白塚(2015)「消費者物価コア指標のパフォーマンスについて」日銀レビュー・シリーズ、15-J-12
尾崎・神保・八木・吉井(2024)「賃金・物価の相互連関を巡る最近の状況について」日銀レビュー 2024-J-2