本記事は、山口 拓朗氏の著書『正しい答えを導く質問力』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「質問の相手選び」の重要性
質問において、「何を聞くか」と同じくらい重要なのが「誰に聞くか」、つまり《質問の相手選び》です。
例えば、「営業資料の効果を高めたい」という社内プロジェクトが立ち上がったとします。このとき、社内デザイナーに「どうすれば見栄えが良くなる?」と尋ねれば、書体や配色、レイアウトなど、ビジュアル面での改善案が返ってくるでしょう。
一方、実際に営業資料を使っている営業担当者に聞けば、「ここでお客様から質問されることが多い」「導入事例があると信頼されやすい」といった、現場に即した実践的な意見が得られるはずです。
質問の内容は同じでも、相手の立場や経験によって、得られる答えはまったく異なります。これが、「誰に聞くか」の重要性です。
別の例を挙げましょう。
あなたが「フリーランスとして独立すべきか」で悩んでいるとします。このとき、会社員の友人に「フリーランスってどう思う?」と聞けば、「不安定で大変そう」「やめておいたほうがいい」といった否定的な声が返ってくるかもしれません。
しかし、すでにフリーランスとして活躍している人に尋ねれば、「最初の準備がすべてだよ」「自由だけど自己管理が欠かせない」など、実体験に基づいた前向きで現実的なアドバイスがもらえるでしょう。
同じ質問でも、相手によって答えの質が大きく変わるのです。
さらに、ざっくりと世の中の意見を把握したいなら、X(エックス)やインスタグラムなどのSNSを活用し、不特定多数の意見を募るのも有効な手段です。
「どんな営業資料に信頼感を抱きますか?」とアンケートを取れば、「実績が載っている」「導入後の変化が明記されている」「専門用語が少ない」「価格が明確に表示されている」など、ユーザー視点のリアルな声が集まりやすくなります。
重要なのは、相手が答えるに足る《背景(立場・知識・経験など)》を持っているかどうかを見極めること。プロに聞いたほうがいいケースもあれば、逆に、素人に聞いたほうがいいケースもあります。
このように、質問力とは、単に質問を並べる力ではありません。正しい答えを導き出すためには、「誰に尋ねるのがベストか」を見極める意識が欠かせないのです。
やみくもに多くの人に聞き回れば、相反するものも含むさまざまな主観や価値観が入り混じり、判断を誤るリスクもあります。本当に重要なのは「答えを持っている人」に的を絞り、そこから丁寧に情報を引き出すこと。特に、判断軸が弱い自覚のある人は、情報の渦に飲み込まれないためにも、「手当たり次第に聞く」ことは控えましょう。誰に聞くかを見極める姿勢を持つことで、その力は確実に磨かれていきます。
質問力を高める2つの習慣
質問力はマネと振り返りの習慣で磨くことができます。難しくはありません。日常の中で他人のうまい質問や印象に残った聞き方をチェックし、それをマネしていくだけ。他人の力をうまく活用しながら、質問力を伸ばしていくことができます。
習慣① 「質問がうまい人」を観察してマネる
会議や会話の中で、「この人の質問はうまい」と感じる人に出会ったら、すかさずチェックしましょう。
その人は、どのタイミングで聞いたか? どんな言葉を選んでいたか? 相手はどんな反応をしていたか?
例えば、「今、一番気になっていることは?」という質問で相手の口が滑らかになる場面を見かけたら、別の機会に一度マネしてみるのです。「質問上手な人を観察する→ マネして使う」を繰り返すうちに、自然と質問力が育まれていきます。
習慣② 自分が受けた質問を振り返る
自分が質問を受けたときの感覚を大切にしましょう。
「質問が丁寧でありがたい」「よくぞ聞いてくれました!」「なんか答えにくいな……どこから話せばいいんだろう」「いきなりそこ聞く?」……。
このように質問を受ける側の気持ちを確認することで、質問の良し悪しが見えてきます。
「これはよくないな」と感じた要素は無理に取り入れる必要はありません。逆に、「これはいい」と思った要素は、積極的に自分の質問に取り入れていきましょう。実践を通じて、質問が磨かれていきます。
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