本記事は、山口 拓朗氏の著書『正しい答えを導く質問力』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

正しい答えを導く質問力
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仕事の質を高める「フィードバック促進質問」

仕事や学びの場では「成果物の完成度を高めたい」「自分のスキルをもっと伸ばしたい」という前向きな意識が必要です。
その意識を成果につなげるためには、《フィードバックを求める質問》が効果的です。第三者から適切なフィードバックを受けることで、自分では見落としがちな課題や改善点に気づきやすくなります。ただし、単に「どうですか?」と尋ねるだけでは、相手も答えにくく、有益な意見を引き出しにくくなります。
そこで意識したいのが、「全体を見てもらう質問」と「詳細を見てもらう質問」の使い分けです。

① 全体を見てもらう質問
仕事の成果物やプロジェクトの方向性など、大枠で評価を得たいときには、「全体を見てもらうフィードバック」が有効です。


部下:「A社に提出する資料です。全体的な構成や盛り込む内容について、アドバイスいただけますか?」
上司:「全体の流れはOKです。ただ、データの部分は、グラフや図解を使うと、もっと伝わりやすくなると思います」

なお、このタイプのフィードバックは草案(ドラフト)段階で受けるのが理想的です。完成後に大きな修正が入ると、手間や時間が倍増してしまいます。早めの段階で方向性を確認することで、大幅な手戻りを防げます。

② 詳細を見てもらう質問
より精度の高いアドバイスが欲しいときは、「具体的なポイントを指摘してもらうフィードバック」を求めましょう。


部下:「先ほどの会議では、ありがとうございました。議題の進め方、特にタイムマネジメントについて、改善点があれば教えていただけますか?」
上司:「事前に各議題の持ち時間を決めておくと、議論がスムーズに進みやすくなると思う。会議スタート時に、その持ち時間を全員で共有しておくといいね」

「何か気づいた点があれば……」のようなあいまいな質問だと、相手はどこに注目していいかわからず、肝心なフィードバックが得られないことがあります。「どこについてアドバイスが欲しいのか」を明確にした上で質問することが、具体的な意見を引き出すコツです。

フィードバックを求めることは、自ら成長しようとする意欲の表れでもあります。受けたフィードバックを素直に取り入れ、実践へとつなげていくことで、仕事の成果も、スキルのレベルも確実に高まっていきます。

即効で効く! 5つの「問題解決のための質問」

仕事とは、問題解決の連続です。どれほど知識や経験があっても、目の前の問題を解決できなければ、成果にはつながりません。ここでは、問題を正確に捉え、原因を見極め、解決策を導き行動へとつなげる5つの質問をご紹介します。

① 問題把握:「どんな問題が起きている?」
ある営業チームの売上が伸び悩んでいたとします。このとき、「なんとなく売上が下がっている」とあいまいなままにせず、「前年同月比で20%減」「直近の3カ月で新規顧客の契約数が半減した」のように、問題を明確化する必要があります。

「売上は前年同月比でどれくらい落ちましたか?」
「製造ラインでの滞りがあると聞きました。具体的にどんな問題が起きていますか?」

② 影響確認:「どんな影響や被害が出ている?」
問題の深刻さや緊急性を測るには、その影響範囲を確認する必要があります。場合によっては「問題をこのまま放置するとどうなってしまうか」、未来の影響までイメージさせましょう。

「現状、どんな損失が発生していますか?」
「この先、業務の進行やチームの信頼関係に、どんな支障が出そうですか?」

③ 原因特定:「なぜ、それが起きたのか?」
影響を把握したら、次にやるべきは「原因の特定」です。「季節的な問題でしょう」「景気の影響かも」といったあいまいな情報に流されず、「オンライン営業のノウハウが浸透していない」など、具体的に手を打てるレベルまで原因を掘り下げましょう。

「今回の問題は何が原因で起きたのでしょう?」
「何がきっかけでこのミスが生まれたのか、心当たりはありますか?」

④ 解決策の模索:「どうすれば解決できる?」
問題と原因が明確になったら、次に解決策を検討します。「営業をもっと頑張ろう」のような漠然とした施策ではなく、「新人向けにロープレ型の提案研修を実施する」「オンライン商談専用のマニュアルを制作する」など、具体的な解決策に落とし込むことが重要です。

「どんな解決策が考えられますか?」
「既存の解決策で、使えそうなものはありませんか?」

⑤ 実行への落とし込み:「どうやって実行に移す?」
どんなに優れた施策やアイデアも、実行に移さなければ意味がありません。アクションプランとして落とし込む鍵は、「誰が、いつ、どのように行動を始めるか」を明確にすることです。

「まず何から着手しますか?」
「どの解決策を優先的に動かしますか?」
「誰がいつまでにデーターを修正しますか?」

正しい答えを導く質問力
山口 拓朗(やまぐち・たくろう)
出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3800件以上の取材・執筆歴がある。現在は執筆や講演、研修を通じて「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「売れる文章&コピーの作り方」など、言語化やアウトプットの分野で実践的なノウハウを提供。2016年からアクティブフォロワー数400万人の中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか6都市で「Super Writer養成講座」を23期開催。著書に『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける87の法則』(明日香出版社)、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)などがある。中国、台湾、韓国など海外でも20冊以上が翻訳されている。NHK「あさイチ」などのテレビ出演も。

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正しい答えを導く質問力
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