本記事は、山口 拓朗氏の著書『正しい答えを導く質問力』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

正しい答えを導く質問力
(画像=Parradee/stock.adobe.com)

危険な「Why」と、安心の「How」

「どうしてこんなミスをしたの?」――理由や原因を問う「Why(なぜ)」の質問は、一見すると本質的な問いに思えます。しかし、場合によっては、相手に「責め立てられている」「問い詰められている」と思われてしまう危険性もあります
例えば、職場で部下がミスしたときに「なんでミスしたの?」と強い口調で尋ねると、相手は「怒られている」と感じて萎縮し、言い訳を始めたり、口をつぐんでしまったりすることもあります。

そのような場面では、「Why」ではなく「How」に言い換えることをおすすめします。「どうしたら同じミスを防げるかな?」という尋ね方であれば、「一緒に改善策を考えよう」という前向きな印象を相手に与えることができます。
「How」は、「解決の道筋」を導き出す質問。相手を責めることなく、建設的な対話へと導くことができます。特に良好な人間関係を大切にしたい場面では、この「How」が大きな役割を果たします。

この考え方は、子どもとのやりとりにも応用可能です。
例えば、テストで思うような点が取れなかったときは、「なんでこんな点数だったの?」ではなく、「どうすれば、次はもっといい点が取れそうかな?」と声がけしましょう。この尋ね方であれば、子ども自身が改善策を考え始めるほか、自信ややる気も育ちやすくなります。

部下の本音を聞き出す「正面から聞かない」技術

部下の様子が気になるときに、ストレートに「最近、やる気なさそうだけど、何か不満でもある?」と問いかければ、相手は警戒し、体のいい嘘を言うかもしれません。
では、どうすれば本音を引き出せるのか?
コツは、真正面から聞かないことです。

① 「周囲の話」として聞いてみる
相手の話ではなく、あくまで「周囲のこと」として問いかける。すると相手は、「実は自分も少し……」と、本音をこぼしやすくなります。

「最近、チーム全体の雰囲気ってどう見えてる? ちょっと疲れてる人が多いような気がしているんだよね」

② 「感じている変化」に注目する
明確なトラブルではなく、あくまで「雰囲気の違和感」として声をかけることで、部下の心理的なガードが下がりやすくなります。

「最近、ちょっと話すテンポが前と違う気がして。何かあった?」

③ 「意見を聞く」形で切り出す
批判としてでなく、「意見を求める」アプローチで質問することで、言いにくい本音を引き出しやすくなります。

「あの制度、実際どうなんだろう? 使いづらいって話も出てるけど、〇〇さんはどう感じてる?」
質問は、ただストレートに聞けばいいというものではありません。状況や目的、相手の様子や感情によっては、「正面から聞かない技術」が賢明な選択になることもあります。

正しい答えを導く質問力
山口 拓朗(やまぐち・たくろう)
出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3800件以上の取材・執筆歴がある。現在は執筆や講演、研修を通じて「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「売れる文章&コピーの作り方」など、言語化やアウトプットの分野で実践的なノウハウを提供。2016年からアクティブフォロワー数400万人の中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか6都市で「Super Writer養成講座」を23期開催。著書に『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける87の法則』(明日香出版社)、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)などがある。中国、台湾、韓国など海外でも20冊以上が翻訳されている。NHK「あさイチ」などのテレビ出演も。

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