本記事は、堀田 孝治氏の著書『新版 入社3年目の心得』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「入社3年目」というターニングポイント
ほんの少しの方向のズレが、大きな差になる
入社3年目がなぜターニングポイントなのか。
ここで今一度、仕事における「3年目」というタイミングを考えてみましょう。
仕事という種目は、意外と、長期戦の種目です。大学を卒業して定年まで働く…… そんなケースで考えてみましょう。22〜23歳で会社に入り、65歳まで働く、ということになります。その間は、なんと42〜43年あります。
42〜43年ということで、1年を1キロに換算し、ビジネスキャリアをマラソンにたとえる人がいます。つまり、仕事における3年目というのは、マラソンでいえばスタートして3キロ地点です。
よく、「仕事は3年目までで決まる」という言葉を聞きますが、私はそれには、「半信半疑」といったスタンスです。
まず、「半疑」からいきましょう。
マラソンの勝負がスタートから3キロで決する、なんていうことがあるでしょうか?
ここでの5メートルとか10メートルの差なんて、この先の39キロで、いくらでも挽回できるはずですし、キャリアトータルでみれば、「誤差」の範囲と言っていいでしょう。
しかし、一方で「半信」でもあります。なぜかというと、仕事とマラソンには、決定的な「違い」があるからです。
その違いというのは、「マラソンは皆同じコースを走るが、仕事は皆違うコースを走る」ということです。
たしか、30代で受講した研修で聞いた話です。正確かどうか心もとないですが、こんな質問がされました。
「あなたはジェット旅客機のパイロットです。
今、出発地のワシントンDCを飛び立つところです。目的地はエジプトのカイロ。西に向かって、太平洋を横断して向かう予定です。あなたはちゃんと操縦しました。しかし、飛行機の方向指示が、1度だけ北に狂っていたのです。つまり、たった360度分の1度だけ、飛行機は当初のコースより北にズレて飛んでいたことになります。さて、この飛行機は、カイロまでの距離を飛んだときに、実際にどこにいるのでしょうか?」
みなさんも、ちょっと休憩して、頭の中に世界地図を描いて、この飛行機がどこに到着するか、考えてください。
さて、答えは……。なんと「モスクワ」だというのです(図表1)。たった360度分の1度の差で、エジプトのカイロに行くはずが、ロシアのモスクワに着いてしまうのです。
では、本題に戻りましょう。
3年目で気をつけなければいけないのは、このクイズでもわかるように、「スピード」というより、むしろコース、つまり「方向性」なのです。ここでいう「方向性」は、なにも業種や職種、会社の違いだけを言っているのではありません。まったく同じ会社、同じ職場で働いていても、まったく違う方向に進んでいる人たちがいるのです。
もし、仕事での方向性が「5度」だけ違う同じ会社の同期がいたとしましょう。
新人研修からスタートし、1年目、2年目、3年目と互いにそれぞれのキャリアを重ねます。
3年目のお互いの立ち位置は、まだそれほど大きくは違わないかもしれません。お互いがお互いの姿を肉眼で確認でき、声もかけあえるくらいしか離れていないかもしれません。
しかし、そのまま、キャリアを重ねていくと、40歳のとき、65歳のとき、二人はまったく違う世界にいることでしょう。間違った方向にいくら努力を続けても、間違った場所にたどりついてしまうだけです。
自分が仕事のできる人なのかどうか、どんな仕事が自分に合っているのか……。
そのようなことは、残念ながら大学生や新人研修ではいくら考えてもわかるはずがありません。野球もサッカーもテニスも、スポーツを何もやったことがない人が、「俺はサッカーができるだろうか?」「私に合うスポーツは何かしら?」と考えるのと同じくらい、はっきり言ってムリなことです。1年間くらいの経験でも、ズレや立ち位置に気づくのは、難しいかもしれません。なぜなら、まだ一人前として、ある程度の仕事をいくつか、自立して回した経験がないからです。
しかし、3年目なら、丁寧にチェックすれば、自分の現在地に、そして「ズレ」に気づけます。そして3年目なら、間違ったコースの修正も容易です。
私は、30歳で休職するに至って、はじめて「振り返る」ということをしました。そして、距離ではなく、その「方向性のズレ」に愕然としたのです。
結果、30代は本来あるべきコースに戻すためにものすごいエネルギーを使うことになりました。「たられば」になりますが、もし私が3年目でそのズレに気づいていれば、もっと軌道修正が容易だったことは間違いありません。
「どこで、何をやってもできる自分」になっているか
入社3年目がなぜターニングポイントなのか。
もう一つ言えるのは、入社3年目とは、キャリアの「外的な変化が訪れるタイミング」だということです。
その筆頭が「異動」です。ある日突然、今までとはまったく違う部署に行く、なんていうことがそれなりの規模の会社だと普通に行われます。そして、その新しい部署は、下手すると(下手ではなくチャンスでもありますが)、「営業から人事へ」といったように、今までとはまったく違う「職種」だったりするかもしれません。
異動はなくても、担当が変わるかもしれません。今までとは比べものにならないくらい、大きなクライアントやプロジェクトを任されたりします。
1989年味の素株式会社に入社。営業としてキャリアをスタートし、3年目には大きな成果を挙げ、仕事ができる“つもり”になって本社のマーケティング部門に異動するも挫折し、心身の調子を崩し、30歳で9カ月の休職となる。
復職後、その挫折と失敗をはじめて振り返り、失敗の本質を発見。自己変革に着手する。人事部に異動後は、持論をより専門的に磨きながら、他者にも役立てるべく、教育体系を再構築し自らも講師として研修に立つ。その後、広告部マネージャーを経て、2007年にプロの企業研修講師として独立する。
「20代の自分が受けるべきだった研修」をコンセプトに「7つの行動原則」研修プログラムを開発。するとたちまち大手企業を中心に、さまざまな業種、職種の企業で主に「3年目研修」として導入・定着し、現在では幅広い年齢層にも拡大し、のべ1万5千人以上のビジネスパーソンが「7つの行動原則」研修を受講している。また八ヶ岳は原村にも拠点を設け、都会と田舎との2拠点「両立」生活を開始。そして55歳で極真空手に入門し、自らも「7つの行動原則」を軸にした自己変革・成長の取り組みとワクワクするビジネス&ライフを実践中。
著書に『しなくていい努力』(集英社)、『「会社は無理ゲー」な人がノビノビ稼ぐ方法』(技術評論社)などがある。
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