本記事は、堀田 孝治氏の著書『新版 入社3年目の心得』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
インプットから「アウトプット」へ〜「価値創出」〜
学校でやっていた勉強、特に受験勉強は、大きく分類すれば「インプット型の種目」です。世界史の年号を覚える、知っている英語の単語量を増やす、数学の公式をたくさん知る……。「わかる」「知る」「覚える」…… そのような「インプット」の努力が報われます。
一人でインプットをしているうちはいいですが、学校に行く、塾に行く、家庭教師を頼む、といったように、そのインプットに人を巻き込む場面が発生したりします。すると、みなさんの親は、あるものを大量にアウトプットさせられることになります。
それが「お金」です。インプット、つまり何かの価値を手に入れるためには、かわりにお金を支払うことが必要になります。これが、現在の「貨幣経済」という仕組みであり、お金の正体でもあります。
では、「仕事」はどうなるのでしょうか。逆に仕事の終わり方から考えてみましょう。
仕事というのは、お金をもらって、つまりお金を「インプット」して終わります。お金を「インプット」して終われるために必要な、報われる努力、行動は何でしょうか?
そうです。仕事は「アウトプット型の種目」なのです。インプットの行動をして、お金をインプットすることはできません。
「調べる」「わかる」「覚える」…… そういったインプット行動でお金をもらおうとするのは、おかしな話であるということです。
そして、アウトプットしたからといって、必ずそれがお金と交換できるわけではありません。私も人前で歌うことくらいの勇気はあります。しかし、藤井風さんのように、そのアウトプットでお金をインプットできる自信は、今のところ“ゼロ”です。
アウトプットしたものに「価値」があれば、それがお金になって返ってくるのです。ですから、“価値を創って出す”という「価値創出」行動が、仕事では報われます。
仕事で第一にインストールすべき「行動原則」は、「価値創出」です。
下足番を命じられたら、日本一の下足番になれ
私が研修の中で、参加者に必ずやっていただくワークがあります。
「高級旅館の下足番になったら、どんな価値を創出しますか?」という題材で、「具体的な『価値創出』のアイデア」を考えてもらうのです。
すると、「笑顔で応対する」「名前をいち早く覚えて、『お客様』ではなく、必ず“固有名詞”でお声がけする」「近所の散歩ルートを外出時にご案内する」「天気に詳しくなり、必要に応じて傘をお貸しする」などなど、どの研修でも、一つのグループで30、40とたくさんのアイデアが出てきます。
しかし、その一方で、「価値を創出するアイデアを」とお願いしているのにも関わらず、「付近のお店を調べておく」などと「インプット行動」を書く人もたくさんいます。「付近のお店を調べる」と、自分の知識はたしかに増えます。しかし、その時点ではお客様にも、旅館にも、何も価値は与えていません。
調べる(インプットする)ことが悪いとは言いません。それを元にアウトプットすればOKです。しかし、ただ調べただけで、インプットしただけで、仕事だと思うのは大間違いです。
就活の役員面接で、「なぜ当社を志望したのか?」と聞かれたとき、「この仕事を通して、世の中や顧客にこんな貢献をしたい!」とアウトプットをPRする人と、「この仕事を通して、こんなスキルを身につけたい……」などとインプットをPRしてしまう人に分かれます。さて、みなさんがオーナー経営者だったら、インプット目的の人に、気持ちよく給料を払えるでしょうか?
さらにこのワークから学べる、重要なことがもう一つあります。それは、「一見『作業』に見えることも、必ず『仕事』にすることができる」という事実です。「下足番だから、作業しかできない」なんていうのは、ウソだということです。
「下足番って何をやればいいのですか?」
はじめて下足番に配属された新人は、まずは上司(仲居さん)にそう尋ねることでしょう。
「下足番というのは、入館時にはお客様の靴をお預かりしてスリッパをお出しし、外出時には逆に靴をお出しする仕事です」
おそらく、仲居さんからは、こんな返事が返ってきます。ここからが、運命の別れ道です。
「言われた通りのことだけを、黙々とやる人」=「作業をする人」と、先ほど挙げたような「『価値創出』のアイデアを自分で考えて、どんどんやる人」=「仕事をする人」とに分かれるのです。
「作業」に価値を創出すれば、それが「仕事」になります。
「一事が万事」という言葉があります。下足番のような仕事できちんと「価値創出」できない人が経営企画部に行っても…… ということです。下足番で「作業」をする人は経営企画部に行っても「作業」をしてしまうし、経営企画部で「仕事」をする人は、下足番でも「仕事」をするのです。
入社3年目のみなさんに、安心していただきたいことが一つあります。今のあなたの目の前の仕事が、たとえ下足番であったとしても、仕事力の基礎である「アウトプットする力」=「価値創出という行動原則」は、必ず鍛えることができるのです。一見雑用やルーティンワークに思えることをするときこそが、自分がそれを「作業」にしてしまうのか、それとも「仕事」にするかの決定的な瞬間なのです。
1989年味の素株式会社に入社。営業としてキャリアをスタートし、3年目には大きな成果を挙げ、仕事ができる“つもり”になって本社のマーケティング部門に異動するも挫折し、心身の調子を崩し、30歳で9カ月の休職となる。
復職後、その挫折と失敗をはじめて振り返り、失敗の本質を発見。自己変革に着手する。人事部に異動後は、持論をより専門的に磨きながら、他者にも役立てるべく、教育体系を再構築し自らも講師として研修に立つ。その後、広告部マネージャーを経て、2007年にプロの企業研修講師として独立する。
「20代の自分が受けるべきだった研修」をコンセプトに「7つの行動原則」研修プログラムを開発。するとたちまち大手企業を中心に、さまざまな業種、職種の企業で主に「3年目研修」として導入・定着し、現在では幅広い年齢層にも拡大し、のべ1万5千人以上のビジネスパーソンが「7つの行動原則」研修を受講している。また八ヶ岳は原村にも拠点を設け、都会と田舎との2拠点「両立」生活を開始。そして55歳で極真空手に入門し、自らも「7つの行動原則」を軸にした自己変革・成長の取り組みとワクワクするビジネス&ライフを実践中。
著書に『しなくていい努力』(集英社)、『「会社は無理ゲー」な人がノビノビ稼ぐ方法』(技術評論社)などがある。
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