本記事は、堀田 孝治氏の著書『新版 入社3年目の心得』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
キャリアのライバルは「AI」である
先日、何の気なしにテレビを見ていたところ、作詞家の秋元康さんに「AI秋元康」が挑戦する、という企画が行われていました。過去の秋元康さんの楽曲をすべて学習させた「AI秋元康さん」が作った楽曲と、「本物の秋元康さん」の楽曲を実際にAKBさんに歌ってもらい、「どちらかわからない形で」ファンに投票してもらい、勝敗を決する! という企画です。
結果は…… なんと、「AI秋元康さん」の勝ちでした!
ついに、芸術の分野までも…… と私も軽くショックを受けました。
AIができる以前に、主に肉体的な労力を必要とする「作業」は、すでに機械にとって代わられました。多くの工場では機械化・無人化が進み、改札も自動化され、飲食店では注文も配膳も人間を必要としなくなってきました。そしてAIの進展は、人間にしかできないと思っていた、クリエイティブな、芸術の分野まで進出してきたのです。
令和の世に生きる入社3年目のみなさんのキャリアの最大のライバルはAIです。
「人間ならではの、仕事における『価値創出』とは何なのか?」
この問いが、みなさんに、今突きつけられています。
この問いに対する、私の一つの答えが、「7つの行動原則」です。
「7つの行動原則」は「作業」ではなく、「仕事」の行動原則です。そして作業と仕事のもっとも大きな違いの一つは、「与えられた問題を解く」のか、「自ら問題をつくるのか」の違いです。
先ほどの「AI秋元康さん」の件も、その仕事のすべてがAI化されたわけではありません。「本物の秋元康さんとAIの秋元康さんを対決させる」という企画をゼロから考えたのは人間なのです。逆に言えば、「本物の秋元康とAIの秋元康を対決させる。ではそのもっともよい方法は?」とお題を出された後は、人間より、AIの方が、より良いアイデアをいくつも出せるでしょう。ですから、「自分で問題をつくる」行動を、習慣として早期に身に着けておくことが今まで以上に大事になってきます。そして、そのトレーニングと実践は、たとえ担当業務が下足番であってもできることを、提案しています。そしてもう一つ、AIではできないことは、「その企画を、多くの利害関係者の中で、合意させる」という行動です。「本物の秋元康さんとAIの秋元康さんを勝負させる」という企画が出せても、その企画をTV局の上司をはじめ関係部署、秋元康さん、スポンサー、実際に歌うAKBサイドの方たちなど、多くの人たちの合意を得なければ実現されません。その「価値創出」の良し悪しを決めるのは、人間であり相手です。「逆算」し、「両立」を目指し、「同時多面的」な交渉を重ねる、といったことは今後も人間でしかできないことではないでしょうか。
体だけ使う、頭だけ使う、前例から最適解を導きだす、そして個人で完結できる、そのようなことは、今後、人間の仕事としては残らないかもしれません。
体だけ、頭だけ、ではなく、「体も、頭も、そして気も」使う仕事が人間には残ります。
先日、ある企業の法務のマネージャーからお話を聞く機会がありました。その方の若手の部下の話になったのですが、とても優秀で、特に契約書のドラフトなどはかなり良いものが書けるというのです。しかし、どこか、物足りなさを感じているのも事実だといいます。「どの点が物足りないのですか?」とたずねたら、「その契約を結ぶ『相手』が見えていない気がするのです。相手がこだわるポイント、大事にしている価値観、交渉していく相手の順番…… 当然ながら、相手の企業によってそれらはすべて変わります。そのあたりまで気が回ってないので、契約書のドラフトは書けても、その締結までは怖くてまかせられないのです……」
「7つの行動原則」は、「体と頭と気」を、言い換えれば「心技知体」を「同時多面的」に活用し、団体競技である「仕事」を、信頼をベースとして行うことを提案しています。
注文も配膳も会計も機械化されていく一方で、逆にそれらをすべて人間が心を込めて行うことでお客に価値を与え続ける世界も、私は必ず残り続けると信じています。
1989年味の素株式会社に入社。営業としてキャリアをスタートし、3年目には大きな成果を挙げ、仕事ができる“つもり”になって本社のマーケティング部門に異動するも挫折し、心身の調子を崩し、30歳で9カ月の休職となる。
復職後、その挫折と失敗をはじめて振り返り、失敗の本質を発見。自己変革に着手する。人事部に異動後は、持論をより専門的に磨きながら、他者にも役立てるべく、教育体系を再構築し自らも講師として研修に立つ。その後、広告部マネージャーを経て、2007年にプロの企業研修講師として独立する。
「20代の自分が受けるべきだった研修」をコンセプトに「7つの行動原則」研修プログラムを開発。するとたちまち大手企業を中心に、さまざまな業種、職種の企業で主に「3年目研修」として導入・定着し、現在では幅広い年齢層にも拡大し、のべ1万5千人以上のビジネスパーソンが「7つの行動原則」研修を受講している。また八ヶ岳は原村にも拠点を設け、都会と田舎との2拠点「両立」生活を開始。そして55歳で極真空手に入門し、自らも「7つの行動原則」を軸にした自己変革・成長の取り組みとワクワクするビジネス&ライフを実践中。
著書に『しなくていい努力』(集英社)、『「会社は無理ゲー」な人がノビノビ稼ぐ方法』(技術評論社)などがある。
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