本記事は、永井 竜之介氏の著書『13歳からのマーケティング』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング
(画像=phaitoon/stock.adobe.com)

便利にも不便にも「理由」がある
〜ショッピングモール〜

お店はお客に喜んでもらいたい

人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング
(画像=人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング)

あなたが普段よく訪れているショッピングモールが、どんなつくりをしているか、思い浮かべてみてください。
ショッピングモールのなかにはいろいろなお店が入っています。飲食店や雑貨店、洋服店は定番ですね。書店やおもちゃ店、マッサージ店、ドラッグストアなども多いでしょう。
食品スーパーマーケットは、ショッピングモールのなかで駅や駐車場の近くに置かれやすい店です。その理由は、お客にとって便利だからです。
肉や魚、野菜、卵などの生鮮食品は、暑い日に長く持ち歩いていると鮮度が落ちてしまいます。重い飲み物や油、かさばるトイレットペーパーやティッシュペーパーなども、長く持ち歩きたいものではありません。
だから、買ったらすぐ電車や車などの交通手段を利用できる場所にスーパーが配置されているわけです。帰る前に一休みできるよう、隣にカフェが置かれていることも多いですね。
このようにショッピングモールは、お客ができるだけストレスを感じずに、快適に利用できて、また利用したいと思えるよう、便利につくられています。

お店はお客に長く歩いてもらいたい

人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング
(画像=人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング)

今度は、ショッピングモールにあるエスカレーターの向きを思い浮かべてみましょう。
エスカレーターがジグザグに配置されていることが多いですよね。つながっていれば、そのまま乗っていけるのに、ジグザグだとフロアごとに反対側まで歩かなければいけません。余計に歩くことになって不便に感じたことはありませんか?
これは、実は、あえてお客を余計に歩かせようと狙って、エスカレーターの向きをジグザグに作っていることがあります。
その理由は、お客を長く歩かせて「衝動買い」を起こそうとしているためです。
ショッピングモールは「何を買うか」を決めずに訪れるお客が多い場所です。「良いものがあったら買おう」と考えているお客がたまたま通りかかった店で「良いものを見つけた!」と思って衝動的に買う…… そんな衝動買いを少しでも増やすために、わざと不便に作って、余計に、長く歩かせたいのです。

このようにショッピングモールは、お客が利用しやすいよう「便利」につくられている一方で、お客がお金を使いやすくなるよう「不便」にもつくられています。
ショッピングモールの“便利”と“不便”の不思議の裏にはビジネスの仕組みをつくる“マーケティング”があります。

「あったらいいな」を叶えよう
〜スマートフォン〜

人は「いまの便利」と「未来の便利」がほしい

人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング
(画像=人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング)

スマートフォン(スマホ)は、みんなの生活になくてはならないものです。携帯電話が賢くなって多機能になった…… つまり、携帯電話が「スマート化」したスマホには、沢山の便利がつまっています。

“話す/連絡する”といったコミュニケーションの「つながる」はもちろん、“検索する/時間・天気・予定を確認する”といった「調べる」、“写真・動画を撮る/音楽を聴く/動画を見る/ゲームで遊ぶ/買い物をする”といった「楽しむ」など、スマホは私たちが「あったらいいな」と求めるたくさんの便利を叶えてくれます。
しかし、不思議なことに、こんなに便利なスマホを実はほとんどの人が最初は欲しいと思っていませんでした。
2008年にアップルの「iPhone 3G」が発売され、初めて私たちの前にスマホが現れました。そのとき、日本の会社たちは、すぐにスマホをつくろうとは考えませんでした。
なぜなら、当時の日本の消費者の大半が「スマホを特に必要とは感じない」と答えていたからです。だから、「ガラパゴス携帯(ガラケー)」と呼ばれた日本独自の携帯電話にこだわり、人々が「いまの便利」として好んだガラケーを日本の会社はつくりつづけました。
でも、日本の消費者は少しずつスマホを知り、その便利さに驚き、すぐにすごい勢いでガラケーを手放してスマホを選ぶようになっていきました。
人は「未来の便利」を知らないだけで、新しい便利さに気づくと、すぐにそれを求めるものです。

スマホは「未来の便利」として現れ、「いまの便利」になりました。新しい「未来の便利」として現れた人工知能のAIも、すぐ「いまの便利」になっていっていますね。これからも「便利」は更新されつづけていくでしょう。

13歳からのマーケティング
永井 竜之介(ながい・りゅうのすけ)
高千穂大学 商学部 教授
専門はマーケティング戦略、消費者行動、イノベーション。産学官連携活動、企業団体支援、企業との共同研究および企業研修などのマーケティングとイノベーションに関わる幅広い活動に従事。主な著書に『人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング』(総合法令出版)、『マーケティングの鬼100則』(ASUKA BUSINESS)、『分不相応のすすめ 詰んだ社会で生きるためのマーケティング思考』(CROSS-POT)などがある。

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