本記事は、野嶋 康敬氏の著書『社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方 「顧客本位」がすべてを解決する
(画像=Bojan/stock.adobe.com)

誰が電話に出ても「神対応」できる情報共有のしくみ

「担当の者は、ただいま席を外しておりまして……」
保険代理店に電話をかけたお客様にとって、電話口からこのような声が返ってくるときほどガッカリすることはありません。とりわけ不慮の事故に遭って一刻も早く助けを求めている状況において、この一言は絶望的な響きを持ちます。
保険代理店に限ったことではありません。多くの企業の営業部門やカスタマーサポート部門では、お客様とのやり取りが担当者個人の記憶や手帳の中にしか存在しない「属人化」の問題を抱えています。担当者が不在の際にほかの社員が適切に対応できず、お客様をお待たせしたり、違う窓口を何度も案内する「たらい回し」などの事態を招いています。
私たちトップ保険サービスでは、この「属人化」を徹底的に排除した、独自の情報共有のしくみを構築しています。
そのしくみの要となるのが「CTIシステム」です。コンピュータと電話機能を連携させたシステムで、お客様から電話がかかると、その電話番号に紐づいたあらゆる情報が瞬時にパソコン画面に表示されます。
画面に映し出されるのは契約内容だけではありません。過去のあらゆるコミュニケーション履歴が、時系列で詳細に記録されています。

「お電話があり、息子さんの大学ご入学について、嬉しそうにお話しされていた」
「ご自宅を訪問した際、愛犬のチワワを見せていただいた」
「最近、ゴルフのスコアが伸び悩んでいるのがお悩み」

一見、業務とは無関係に見えるような、お客様一人ひとりのパーソナルな情報。これら担当者の「気づき」を、その日のうちに必ずシステムに入力することを各社員が徹底しています。そのため、担当者が不在のときにお客様から電話がかかってきても、電話を取った社員はシステム画面を見ながら、ごく自然にこう語りかけます。

「〇〇様、いつもお世話になっております。先日は息子さんのご入学、誠におめでとうございました」
「○○様、いまお乗りになっている□□(車種)を買い替えるのですね」

いつもの担当者でもないのに、なぜそこまで理解してくれているのか。電話をかけてきたお客様はきっと驚かれるでしょう。このほんの些細な一言が「神対応」となり、お客様との信頼関係をより一層深めていきます。
なぜ、ここまで顧客情報のきめ細かい共有ができるのか。それは、私たちが新規営業やテレアポをいっさい行なわないからです。その時間を、既存のお客様一人ひとりと真摯に向きあい、大切な情報を仲間と共有するために充てることができる。これが、お客様を感動させる「神対応」を生む秘密です。
「神対応」とは、一部のスーパースター社員の個人的な能力によって生まれるものではありません。お客様を第一に考える「顧客本位」の姿勢と、組織全体で情報を共有する、地道で徹底した「しくみ」によって、新人からベテランまでどんな社員でも「神対応」が実現できるのです。

「神対応」を加速させる圧倒的なスピード感

「神対応」は、温かみのあるコミュニケーションだけにとどまりません。お客様の不安をいち早く解消する「スピード」もまた、私たちが追求する顧客本位の表れです。
先日、こんな話を聞きました。ある方が生命保険に入りたいと相談したところ、最初の話から契約まで2カ月以上かかったというのです。特に難しい要望を出したわけでもないのに、です。私たちであれば契約手続きには一週間もあれば十分です。
なぜ、そんなに時間がかかるのか。それは、多くの代理店が、お客様が求めてもいない商品を「ついでに」提案しようとするからです。「お子さんの学資保険はどうですか?」「ご主人の死亡保障もこの際に……」と、次から次へとお勧めが始まり、話がなかなか前に進まないのです。これも、「会社本位」の姿勢にほかなりません。
「顧客本位」に立脚する私たちは、お客様が「がん保険について知りたい」とご連絡をくだされば、「その不安をいかに早く、最適に解決するか」とシンプルに考えます。すぐに各社の商品を比較検討し、最もお客様のご要望に沿うがん保険のプランをご提示します。そこに「ついでにほかの商品を売りつけよう」という発想はいっさいありません。なぜなら、契約を増やしても私たちの給料は1円も上がらないからです。だからこそ、純粋にお客様の課題解決に集中でき、ご相談から一週間程度での契約が可能になるのです。

先日はこんなことがありました。お客様サポート部で自動車保険を担当するスタッフが、お客様から相談の電話を受けました。
「じつは自動車以外のことで、ケガをしてしまったの……」
一般的な組織であれば、自動車担当のスタッフでは対応できないものとして「担当外ですので、担当の者に回します」というのが当たり前の対応でしょう。しかし、彼女はあえてそうしませんでした。ほかの専門チームの仲間に助けを求めながらも、最後までそのお客様の対応に当たり、生命保険の保険金請求手続きを完遂したのです。
なぜ、自らの担当業務の範囲を超えてまで、そうした行動をとったのでしょうか。彼女はこう話しています。
「そのお客様は、私にとって長年のおつきあいのある方です。せっかく私を頼って連絡をくださったのだから、ほかの誰かに回すより、私が最後まで対応したほうがお客様をお待たせしなくて済むし、絶対に喜んでくれるはずだ、と思ったんです」
電話越しのお客様に喜んでいただきたい。その純粋な意思が、「なんとかしてあげたい」という強い思いとなって、彼女を突き動かしたのです。

社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方
野嶋 康敬(のじま・やすたか)
トップ保険サービス株式会社代表取締役、お客様サービス本部長。1964年生まれ、福岡県出身。上智大学卒業後、東京海上火災保険株式会社(現東京海上日動火災保険株式会社)に入社。約8年、法人営業、支店統括業務を経験。30歳のとき父の会社が破産したことをきっかけに家業を継ぎ、トップ保険サービス株式会社を設立。2002年、代表取締役社長に就任。経営品質との出会いから「顧客本位」を徹底。「自立型組織」のしくみづくりに奔走し、リスクマネジメントや幸せマネジメントをテーマに、年間40回を超える講演活動を全国で行なう。北九州地区空手道連盟理事長(公認五段)、茶道裏千家淡交会北九州支部幹事。プライベートでは3人娘の父。

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