本記事は、野嶋 康敬氏の著書『社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方 「顧客本位」がすべてを解決する
(画像=years/stock.adobe.com)

自立型組織の一丁目一番地は「企業理念」

社員一人ひとりが自らのモーターで駆動する「新幹線」のような自立型組織。この話を私がさまざまな講演や研修会の場ですると、必ず次のような懸念を投げかける経営者がいます。
「それでは、社員がそれぞれ好き勝手な方向に走り出して、組織がバラバラになってしまうのではないか?」
それは、至極もっともな疑問です。全員がホームランばかり狙う野球チームのようなものですね。では、なぜ私たちの会社では、社員一人ひとりが自立して行動しながらも、チームとして一つの方向性を保ち続けることができるのでしょうか。
その答えこそ「企業理念」にあります。結論から言うと、自立型組織を実践しようとするならば、まず着手すべき「一丁目一番地」は企業理念の策定です。
会社とは、それ自体は単なる「人の集合体」です。個性も価値観も多様な個人が集まっています。
その多様な個性や価値観を持つ一人ひとりの人間をつなぎとめ、一つのベクトルに方向づけるもの。その「接着剤」の役割を果たすのが企業理念であり、それに付随する「行動規範(クレド)」と「ミッション・ビジョン・バリュー」です。
すでにご紹介している通り、私たちトップ保険サービスの企業理念は、次の3つのステートメントで成り立っています。

  • 我々は常に、お客様から信頼され、頼りになる最強の「楯」としてお客様をお守りします。
  • 我々は「おかげさま」の心を大切に、互いに感謝し、尊敬し、感動を生み出します。
  • 関わり合うすべての人々の「よかった」を増やすことが我々の使命と考えます。

つまるところ、この3つをやり遂げるために、私はトップ保険サービスという会社を創ったのです。そして、この企業理念を看板に大きく書いて「一緒にやりたい人、この指とまれ!」と宣言しているのです。
その看板を見て「それ、私もやりたいです!」と、自らの意思で集まってきてくれた仲間が、いまの社員たちです。この企業理念に心から共感してくれる人だけを、仲間として迎え入れています。

「企業理念」は社員同士の「接着剤」になる

この企業理念の隠れたポイントですが、よく見ると肝心の「保険」の文字が一言も入っていません。保険代理店なのになぜ? しかし、それでよいのです。
誤解を恐れずに言うと、保険という事業はその企業理念を達成するための、現時点での最善の「手段」にすぎません。もしかしたら10年後、私たちよりすばらしいサービスを提供するライバルが登場し、保険代理店としての私たちは必要とされなくなるかもしれない。
そのときは、また企業理念に照らして新しい事業を始めればよいのです。
幸いにも2005年にこの企業理念を定めて以来、20年の歴史において私たちの経営が大きく傾いたことは一度もありません。それは決して偶然ではありません。企業理念という「接着剤」で、社員同士が固く結びついているからです。
この本を読まれたことを機に、「ウチの会社も、自立型組織を目指してみよう」と考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。志を同じくする会社が増えるのは大いに歓迎すべきことです。
ただ、表面的なしくみだけを真似してもあまり意味がない、ということはあらかじめお伝えしておきます。「プロジェクトチーム」「新規営業、ノルマなし」「TSD総選挙」といったしくみをそのまま導入しても、根っこにある理念のベクトルが揃っていなければ、社員の心は「やらされ感」であふれ、必ず失敗します。

まず始めるべきは自社の存在意義、すなわち「企業理念」を徹底的に問い直すことです。
「この会社は、なんのために存在しているのか」「自分たちは、なんのために集まっているのか」。その問いに対する、揺るぎない答えを確立すること。それが、自立型組織の構築にあたってのスタートラインです。

なお、「パーパス経営」という言葉が生まれて以降、企業理念、パーパスやミッション、ビジョン、バリューを社員同士が話しあって策定する動きも一部の企業には見られます。
しかし、企業理念とは本来、創業者や社長が策定すべきものです。
繰り返しますが、一人の経営者が理念を掲げ、その理念のもとに会社が創られ、理念に賛同した人が集まる。それが本来の企業の姿のはずです。私に言わせれば理念の策定を社員に「丸投げ」するほど無責任なことはありません。創業時の志を振り返って「なぜ、この会社を創設したのか」と、社長自身が問い直すことから始めることを勧めます。

社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方
野嶋 康敬(のじま・やすたか)
トップ保険サービス株式会社代表取締役、お客様サービス本部長。1964年生まれ、福岡県出身。上智大学卒業後、東京海上火災保険株式会社(現東京海上日動火災保険株式会社)に入社。約8年、法人営業、支店統括業務を経験。30歳のとき父の会社が破産したことをきっかけに家業を継ぎ、トップ保険サービス株式会社を設立。2002年、代表取締役社長に就任。経営品質との出会いから「顧客本位」を徹底。「自立型組織」のしくみづくりに奔走し、リスクマネジメントや幸せマネジメントをテーマに、年間40回を超える講演活動を全国で行なう。北九州地区空手道連盟理事長(公認五段)、茶道裏千家淡交会北九州支部幹事。プライベートでは3人娘の父。

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