本記事は、野嶋 康敬氏の著書『社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方 「顧客本位」がすべてを解決する
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

採用の決め手は「全員面接」

社員同士が仲よくなるには、「誰を仲間として迎え入れるか」、つまり採用が重要なのは言うまでもありません。一人の新しい仲間が組織に与える影響は計り知れません。企業理念に合わないたった一人の人物が、組織全体の文化を壊してしまうことさえあります。それに、企業理念に合わない人をその企業で働かせるのは、その人を不幸にしてしまいます。

かつては、私たちの会社でも中途採用を行なっていました。しかし、新規営業なし・インセンティブなしの、保険業界では“非常識”な経営方針を掲げている会社です。業界での経験が長く、「保険の仕事= 新規の契約をたくさん獲得して稼ぐ」という固定観念が抜けない人は、ギャップに苦しみ、すぐ会社を去っていきました。
その反省から、2008年頃からは新卒採用に方針を大きく切り替えました。たとえ未経験でも、保険業界の固定観念に染まっていない人材を採用し、育てていくことに主眼を置いています。

「誰を仲間として迎え入れるか」を重視するからこそ、私たちは採用のプロセスに並々ならぬ時間とエネルギーを注いでいます。その最大の特徴が「全員面接」です。
一般的な会社では、採用の最終判断は社長や役員、人事部長などが行ないます。しかし、私たちは違います。候補者との最終面接には、パート社員も含めた全社員が参加します。
そして、すべての社員が「この人と一緒に働きたい」と満場一致しないと、決して採用することはありません。どんなに社長の私が見込んだ人物でも、たった一人でも反対者がいれば、例外なくその候補者の採用は見送りとなります。
過去には、ある候補者がどうしても社員の一人から「○」をもらえず、10回続けて不合格とされた例もあります。それでもあきらめなかった彼は、手紙を書いて熱意を伝えてくれました。その結果、11回目の面接でそれまでOKしなかった社員もOKを出し、全員から「○」をもらえて、晴れて内定。いまでは管理職として当社の中心的な存在になっています。
なぜそこまで満場一致の「全員面接」にこだわるのか。新しい仲間は会社のものではなく、共に働く社員たちにとっての「未来のパートナー」です。社員が一人でも「この人とはどうも価値観が合わないな」と感じれば、仲のいいチームを築くことはできません。逆に、多少未熟なところがあっても、社員全員が「この人となら、苦労を共に乗り越えられそうだ」と歓迎すれば、その人は必ず組織の中で成長し、輝いてくれるはずです。
それに、全社員が採用の意思決定に携わることで、「自分が選んだ仲間なのだから、自分たちでしっかり育てよう」という強い当事者意識が芽生えます。人事部から一方的に配属された部下ではなく、自ら選んだ仲間だからこそ、愛情と責任をもって親身にサポートしようという気持ちが生まれるのです。

見るのは「能力」ではなく「理念」への共感

ちなみに、当社の採用基準に、世間一般でいう「能力」はいっさい関係ありません。形式的に筆記試験(SPI)は受けてもらいますが、点数が悪くても落とすことはしません。
筆記試験が苦手でも、人のために尽くすことが好きな人、周りとの協調性にすぐれた人はたくさんいるからです。
たとえば、大学までずっとソフトボールに打ち込んでいた社員がいます。SPIの点数は、彼女には申し訳ないのですが、ちょっと目も当てられないものでした。しかし、いざ採用して一緒に仕事してみると、とても献身的に周りを助けてくれ、いまではエクセルやDXシステムの達人として全社員から頼られる存在になっています。
また、ある社員は、面接の際に「就職活動で40社落ちました」と打ち明けてくれました。
聞いてみると、彼女は面接のたびに「社会貢献がしたい」と言い続けていたのだそうです。
多くの会社では「社会貢献は本業ではない。利益を上げることが優先」と考えるので、不採用を言い渡されてきたのです。しかし、彼女の仕事ぶりは私に言わせると「優秀中の優秀」。なぜこのような人材が40社も落とされ続けたのか、本当に不思議でなりません。
そう考えると、多くの企業が考える「優秀」の物差しは実にあいまいでいい加減だとつくづく思わされます。理念に共感してくれる人材を見きわめれば、彼らはポテンシャルを開花させ、「いなくてはならない人」に成長してくれるのです。

繰り返しますが、目の前の候補者に対して私たちが求めるのは、立派な経歴やスキルではありません。私たちの理念に共感し、お客様のために、そして仲間のために、泥臭く汗を流せる人間かどうか。その一点に尽きます。そんな本物の「仲間」を見つけるための手法が「全員面接」なのです。

社員が幸せと感じてくれる会社のつくり方
野嶋 康敬(のじま・やすたか)
トップ保険サービス株式会社代表取締役、お客様サービス本部長。1964年生まれ、福岡県出身。上智大学卒業後、東京海上火災保険株式会社(現東京海上日動火災保険株式会社)に入社。約8年、法人営業、支店統括業務を経験。30歳のとき父の会社が破産したことをきっかけに家業を継ぎ、トップ保険サービス株式会社を設立。2002年、代表取締役社長に就任。経営品質との出会いから「顧客本位」を徹底。「自立型組織」のしくみづくりに奔走し、リスクマネジメントや幸せマネジメントをテーマに、年間40回を超える講演活動を全国で行なう。北九州地区空手道連盟理事長(公認五段)、茶道裏千家淡交会北九州支部幹事。プライベートでは3人娘の父。

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