この記事は2026年5月20日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:高市政権の経済政策のアプローチはこれまでとはどのような違いがあるのか?」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
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目次

  1. 高市政権の経済政策のアプローチはこれまでとはどのような違いがあるのか?

高市政権の経済政策のアプローチはこれまでとはどのような違いがあるのか?

  • 高市政権は、足元の景気は十分に強くなく、需給ギャップ0%近傍では地方や中小企業まで景気回復の実感が広がらないという現状認識にたっている。「依然として『コストカット型経済』から脱し切れておらず、成長に向けた投資拡大と生産性向上を伴う『成長型経済』への移行が道半ばにある」と、昨年11月に決定した総合経済対策の基本的枠組みで記している。高市政権は、需給ギャップが+2%を十分に超えるまで、積極財政と緩和的金融政策、官民連携の投資・需要の拡大によって、「高圧経済」を目指していくとみられる。

  • 高市政権が目指す「高圧経済」では、経済・社会の課題解決のため「危機管理投資」と「成長投資」など官民連携で投資を拡大していくことを明確にしており、中長期的なスパンでの投資戦略を示すことで、企業の予見可能性と成長期待を高めることが期待される。企業の国内支出の拡大で、貯蓄超過から投資超過に回復させ、日本経済を「コストカット型経済」から「成長型経済」へ移行する。

  • 石破政権までの主流派の考え方は、日本の財政状況が悪いということを前提とした、財政健全化優先であった。日本の財政状況が悪いため、企業は将来の金利の上昇を懸念して、投資が拡大できないという現状認識であった。その軸となってきたのは、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化の目標であった。しかし、企業が「コストカット型」で縮小の力をかけている間に、政府まで財政健全化で縮小の力をかけてしまったことで、総需要は縮小し、経済の規模が拡大できないデフレ型の経済に陥ってしまった。名目GDPは平均525兆円から拡大できなくなった。財政健全化に拘るあまり、経済規模の持続的な拡大という責務を政府は果たさなかった。

  • 現在のグローバルな経済政策の潮流は、多様化する中長期の経済・社会の課題を解決するための官民連携の投資と需要の拡大に変化している。そして、官民連携の成長投資のグローバルな激しい競争になってきている。プライマリーバランスの黒字化目標は、将来の成長や所得を生む成長投資であっても、税収の範囲内で行う制約となる。財政収支が一定の赤字に収めるのであれば、経常的な支出は税収の範囲内に収めても、成長投資は国債の発行でできることになる。

  • 成長投資のグローバルな激しい競争の中、日本だけ、無用な足かせをはめて戦えば、競争に敗れ、国力の低下の原因となってしまう。高市政権では、積極財政でこの潮流の変化に乗るため、プライマリーバランスの黒字化目標から、より柔軟な財政目標に変え、競争を勝ち抜き、国力の強化に取り組むとみられる。中東情勢による原油価格の上昇の厳しい環境にあるが、これまでのような節約ではなく、厳しい環境だからこそ明らかとなった日本経済の課題に対して、果敢な投資拡大によって乗り越えようとするのが、高市政権の施政だ。


高市政権は、足元の景気は十分に強くなく、需給ギャップ0%近傍では地方や中小企業まで景気回復の実感が広がらないという現状認識にたっている。「依然として『コストカット型経済』から脱し切れておらず、成長に向けた投資拡大と生産性向上を伴う『成長型経済』への移行が道半ばにある」と、昨年11月に決定した総合経済対策の基本的枠組みで記している。景気を十分に強くするため、需給ギャップが+2%を十分に超えるまで、積極財政と緩和的金融政策、官民連携の投資・需要の拡大によって、「高圧経済」を目指していくとみられる。需給ギャップの上振れによる「高圧経済」は、単純な総需要の追加ではなく、投資が短期的には需要であることによる上振れ余地の確保だ。需給ギャップの上振れ余地がなければ、官民連携の投資の拡大はできないことになる。投資による需要の拡大によって需給ギャップが上振れても、投資がいずれ供給能力を拡大するため、インフレ圧力が持続的に高騰することはないだろう。供給能力の拡大が、インフレと為替相場を安定化させ、国力の源となる。政府は、経済・社会の課題解決のため「危機管理投資」と「成長投資」など官民連携で投資を拡大していくことを明確にしており、中長期的なスパンでの投資戦略を示すことで、企業の予見可能性と成長期待を高めることが期待される。企業の国内支出の拡大で、貯蓄超過から投資超過に回復させ、日本経済を「コストカット型経済」から「成長型経済」へ移行する。

石破政権までの主流派の考え方は、日本の財政状況が悪いということを前提とした、財政健全化優先であった。日本の財政状況が悪いため、企業は将来の金利の上昇を懸念して、投資が拡大できないという現状認識であった。企業の国内支出の拡大には、社会保障と税の一体改革によって、増税をしても、財政状況を改善させれば、企業は安心して国内支出を拡大するだろうと考えてきた。その軸となってきたのは、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化の目標であった。しかし、企業が「コストカット型」で縮小の力をかけている間に、政府まで財政健全化で縮小の力をかけてしまったことで、総需要は縮小し、経済の規模が拡大できないデフレ型の経済に陥ってしまった。投資は更に減退し、供給能力は弱い需要に合わせて弱体化し、国力は低下していった。名目GDPは平均525兆円から拡大できなくなった。経済規模が拡大しなければ、企業はリストラ・コストカットによって安い製品・サービスで、競合他社からシェアを奪うしか戦略がなくなる。財政健全化に拘るあまり、経済規模の持続的な拡大という責務を政府は果たさなかった。高市政権は、経済規模の持続的な拡大にコミットしている。経済規模が持続的に拡大すれば、企業の競争はリストラ・コストカットから投資に変化することができる。成長する新しいパイを獲得するには、投資をしなければならなくなる。競合他社が投資で魅力的な商品・サービスを提供しているのであれば、新しいパイだけではなく、既存のパイまで奪われていくからだ。

これまでは新自由主義的な思想で、経済政策の運営がなされてきた。小泉・竹中路線または構造改革路線と言われる。政府の関与をできるだけ小さくして、効率的な民間経済の自由度を高める思想だ。政府の関与を小さくするため、プライマリーバランスの黒字化目標という財政健全化路線と親和性があった。しかし、現在のグローバルな経済政策の潮流は、多様化する中長期の経済・社会の課題を解決するための官民連携の投資と需要の拡大に変化している。そして、官民連携の成長投資のグローバルな激しい競争になってきている。成長産業や新技術への政府の投資が拡大していることが、グローバルに財政赤字が減らない理由でもある。先進国でプライマリーバランスの黒字化目標という硬直化した財政運営をしているのは日本だけだ。一般的には、財政収支を一定の赤字に収めようとする柔軟なものである。プライマリーバランスの黒字化目標は、将来の成長や所得を生む成長投資であっても、税収の範囲内で行う制約となる。財政収支が一定の赤字に収めるのであれば、経常的な支出は税収の範囲内に収めても、成長投資は国債の発行でできることになる。成長投資のグローバルな激しい競争の中、日本だけ、無用な足かせをはめて戦えば、競争に敗れ、国力の低下の原因となってしまう。高市政権では、積極財政でこの潮流の変化に乗るため、プライマリーバランスの黒字化目標から、より柔軟な財政目標に変え、競争を勝ち抜き、国力の強化に取り組むとみられる。中東情勢による原油価格の上昇の厳しい環境にあるが、これまでのような節約ではなく、厳しい環境だからこそ明らかとなった日本経済の課題に対して、果敢な投資拡大によって乗り越えようとするのが、高市政権の施政だ。

図1:企業貯蓄率と需給ギャップ

企業貯蓄率と需給ギャップ
(注:バブル期を含む1995年以前の需給ギャップは+5を上乗せ
出所:内閣府、日銀、クレディ・アグリコル証券)

図2:世界的潮流を踏まえた経済政策の転換=「経済産業政策の新機軸」(経産省)

世界的潮流を踏まえた経済政策の転換=「経済産業政策の新機軸」(経産省)
(出所:経済産業省、クレディ・アグリコル証券)

図3:日本経済見通し

日本経済見通し
CACIBの見通し

会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

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