本記事は、財務コンサルタント・税理士のはたけ氏の著書『なぜ、「節税」しているのにお金が残らないのか? 財務に強い社長だけが知っている“つぶれない”経営』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

なぜ、「節税」しているのにお金が残らないのか?
(画像=moonrise/stock.adobe.com)

なぜ、あなたの会社にはお金が残らないのか?

質問です。
どのような状態になったら、会社は倒産するのでしょうか?

「赤字だからでしょ?」
このように答えたなら、あなたは経営者として失格です。東京商工リサーチ(TSR)の「倒産企業の財務データ分析」調査によると、少ない年で34%、多い年だと47%くらいが黒字で倒産しています。それもこれも、経営者の知識不足が原因です。
まずは黒字で倒産するケースを3つ紹介します。

黒字で倒産するケース❶ 先行投資のしすぎ

相談相手は、顧問先の女性経営者であるA社長です。
東京都心でカフェを開業して3年目。SNSでバズらせる戦略が当たって、前年比300%というものすごい勢いで売上が伸びています。でも、「お金が全然残らない」と言います。
私はすべてのデータを見ているので、お金が残らない理由をもちろん知っていました。でも社長本人は「こんなに調子がいいのに、なぜだろう?」と首を傾げています。
「私のお店で扱う商品は、粗利率が一般的な飲食店より10%も高いです。通常なら客単価が1,000円のところ、ここでは3,500円。売上は爆発的に上がっているし利益率も高いのに、まったくお金が残らないんですよね」

A社長にはキャッシュ・フローが見えていないのです。
「売上が上がった」という理由で、まずは店舗を拡張してフロアを増やしました。さらに2号店の出店のために保証金を不動産屋に払いました。東京都心だけに、家賃や仲介手数料も高くなります。しかも、内装工事や設備の新調が必要です。内装工事や設備の購入などで、数千万円が一気に飛んでいきます。
さらにスタッフの募集が必要です。また、売上に比例して食材やお酒の仕入も増えます。
つまり、入ってくるお金よりも、先に大きな出費がかさむわけです。
特に大きな負担となる保証金は、退去するまで戻ってきません。
さらにA社の内装工事は、耐用年数が10年や15年です。支払いはすぐしなければいけませんが、税務署に出す税務申告書や銀行に出す決算書では、内装工事の初年度に減価償却費として計上できるのはごくわずかな金額になります。
保証金も同じです。何百万円もの大きな負担なのに、「預けているだけのお金」という扱いになるので、経費にはできません。実質的に何百万円もお金が減っているのに、その分の経費はない状態になり、法人税をガッツリ納めなければなりません。

このように、売上が爆発的に上がっているのに、お金が残らないのは、先行投資が大きいのと、その支出を経費として計上できないからです。売上が伸びているから先行投資ができますが、売上よりも出費が先行するので、資金繰りが急激に悪化します。A社は、私のアドバイスを受けて様々な対策をした結果、事なきを得ましたが、税金滞納倒産の一歩手前の状態でした。
「今後の店舗拡張や出店は、キャッシュ・フローを確認してから決めましょう。まずは私にご相談ください」とお願いしてからは、キャッシュ・フローを安定させながらお金を貯め、どんどん成長し続けています。

黒字で倒産するケース❷ サイト負け

デザイン構築、SNS構築などのコンサルタント会社を経営するB社長。
取引先は法人が中心です。個人相手では前払いを要求できても、法人相手では、納品物の検収があってから1ヶ月後以降の支払いが多いとのこと。1ヶ月ならまだ良くて、相手が大手になると、検収後2ヶ月後払いになる場合も少なくありません。つまり、売上の計上から入金まで、1〜2ヶ月のタイムラグがあります。

すると、問題が発生します。請け負った仕事は、B社長の社員だけで回しているわけではありません。様々な外注が関わっているので、外注費がかかります。B社は、売上の入金よりも外注費を先に支払う場合がほとんどです。デザインが完了した時点で、外注先への支払いが発生します。
しかしその時点では、得意先からの入金がまだないため、会社のお金がどんどん減っていきます。もちろん社員への給与も、「売上が入金されてから2ヶ月後に支払います」というわけにはいきません。

これはいわゆる「サイト負け」という状態です。サイト負けとは、支払サイト(取引先へ支払うまでの期間)が入金サイト(取引先から入金があるまでの期間)よりも短いことによって、資金繰りに余裕がなくなる状況を指します。
BtoBは取引金額が大きく、売上金額も多くなりますが、意識しないとサイト負けになる傾向が高く、常に支払いに追われます。外注費を抑えているときはまだマシですが、外注費が多くなってくると、お金がみるみる減っていきます。このように、黒字にもかかわらず、資金繰りで常に頭を抱えている経営者は非常に多いのです。

黒字で倒産するケース❸ 売上至上主義

一見華やかなSNSのインフルエンサーでも、内情は火の車であることも少なくありません。
投稿を見ると、いつもたくさんの人が集まっていて盛況です。売上は十分に上がっていて稼いでいるように見えます。このように表面的にはとても華やかでも、実は利益が残っていないというケースが多いのです。
共通するのは、売上しか見ていないことです。

「月商◯千万円達成しました!」
「年商◯億円達成しました!」
「今日はこんな豪華なホテルに泊まっています!」

こうした投稿を見ると、投稿主は成功者に見えます。ですが、彼らは利益を見ていないために、まったくお金が残りません。
華やかに見える人ほど資金繰りに困っています。インフルエンサーとして影響力を保ち、注目を浴びるために、「目立たなければ」という心理が働くのも原因の1つです。他人の華やかな投稿を見ると、「自分も負けていられない!」などと無理に経費をかけてしまうことも多いのです。
自己投資の経費を使いまくっている人が多く、起業塾や出版塾に入ったり、マーケティングスクールに通ったり、未来への投資が多いのも特徴です。それらの投資が実を結ぶまでには、たいてい時間がかかるので、なかなかお金が残りません(ちなみに私は自己投資したからこそ、本書を執筆できています。経費をかけるなら、未来への投資である自己投資をオススメします)
また、このタイプは、ゴールがあるようでないのも特徴です。「こうなりたい」というビジョンを見据えず、ただ目立ちたいだけという人が多いのです。
たとえば「年商1億円を達成したい」と言う方に、「1億円を達成して実現したいこと」を質問すると、納得できる答えが返ってこないことが往々にしてあります。
売上だけを追い求めるのでは、入ってきただけ経費を使ってしまい、お金を残せません。

日本の中小企業の6割が赤字

中小企業とは、中小企業基本法に基づく中小企業者(製造業等では資本金3億円以下または従業員300人以下等、業種により基準が異なる)を指し、大企業はこれに該当しない企業を指します。
総務省の「令和3年経済センサス―活動調査」によると、中小企業は全企業数の99.7%で約336万社に対して、大企業は0.3%で約1.3万社です。ちなみに社員数で見ると、中小企業の社員数は約3,300万人に対して、大企業の社員数は約1,400万人です。

現在の私の顧問先は、黒字の会社が大多数を占めています。しかし、国税庁が発表している「令和5年度分会社標本調査結果」によると、会社の6割が赤字です。
そういえば、税理士事務所に勤務していたときに担当していた会社は、黒字の会社よりも赤字の会社が多かったように思います。税理士事務所内の空気も「赤字が当たり前」でした。
税理士の先輩からは「バブルのときは半分も赤字がなかったけれど、バブルが弾けてから赤字の会社が増えた」と教えてもらいました。
そのために、「バブル崩壊など、時代や環境のせいで赤字が多いものだ」と思っていましたが、一般企業での財務部長の経験や、様々なクライアントの顧問を経て、断言できることがあります。
赤字を解消できないのは、経営者の問題だ」ということです。
より丁寧に言えば、経営者が財務に弱いことが、赤字の根本原因です。まずは、赤字会社に共通するポイントをいくつか考えてみましょう。

■原材料やエネルギーの高騰をモロに被ってしまう中小企業

現在、物価がどんどん上がっています。円安の影響もあり、原材料が軒並み高騰しています。製造業の例では、一部の鋼材価格は5年前に比べて2倍近くになったというデータがあります。
特に大きいのは電気料金の値上がりです。産業用電気料金は、燃料価格の高騰や円安、再エネ賦課金の上昇を背景に、近年大幅な値上げが続いています。
木材価格は「ウッドショック」により2倍近くに跳ね上がり、建築価額も高騰しました。
ガソリン価格は暫定税率の廃止(2025年末)により一時的に下落しましたが、2026年2月末の中東情勢の急変(米・イスラエルのイラン攻撃)を受けて原油価格が暴騰し、再び上昇局面に入っています。
飲食業では輸入小麦価格が過去数年で大きく上昇しています。
人件費も高騰しました。政策により最低賃金がアップされたからです。

中小企業に比べて大企業は、規模を活かして仕入ルートを多様化し、コスト増を吸収できます。しかし中小企業は取引先に対する力関係が弱く、仕入値の上昇をそのまま被るしかありません。
ある印刷会社では、インク価格の上昇を販売価格に転嫁できず、売上は前年並でも利益が半減しました。大企業の下請けとして成り立つ中小企業の多くは、原材料が上がっても売価を上げるのは至難の業です。

建設業界のある会社では、「資材費が30%も上昇したのに、発注元からの単価引き上げはわずか3%。その差額を自社が吸収するしかない。このままでは会社はもたない」と危機感をつのらせています。
こうした問題は、「価格を自由に設定できない構造」からきています。

■中小企業でやってはいけない薄利多売

中小企業が赤字になってしまう理由として、価格を自由に設定できないことの他に、薄利多売に走ってしまうことがあります。
「原材料費や人件費が上がって苦しいから、値下げをして数を売ろう」という経営判断をしてしまう経営者がとても多いのです。
しかし、薄利多売は大企業だけができる戦略です。中小企業は、絶対にやってはいけません。𠮷野家やサイゼリヤなどは、大量に仕入れているから安く仕入れることができていて、安く売っても利益を出せるのです。薄利多売は中小企業にとっては命取りになります。

■「厚利少売」が中小企業の基本だ!

中小企業の戦略は、薄利多売とは逆の戦略が必要です。大企業に比べたら数は少なくても、付加価値を上げて1つひとつの商品やサービスに利益をしっかり乗せていく、「厚利少売」が必要です。
目先の売上のために薄利多売へ走ってしまうのは、真綿で自分の首をしめるようなものです。値下げすれば目先の売上が増えます。しかし売れる数を増やさなければいけません。値引きは最後の手段だと心得ておきましょう。

私の家の近所に、他の土地から進出してきた人気のラーメン屋がありました。お店はきれいで、味もすばらしい。家族向けのメニューがあり、サービスも行き届いていました。なので、ランチタイムはいつも満員でした。
開店4年目あたりから、物価高騰が報道されるようになりました。
私はそのお店に対して、「人件費、材料費、家賃、光熱費が高騰しているはずなのに、大丈夫だろうか? 席を増やせないなら、売上を上げるには価格を上げるしかないのに、これまで一度も値上げしていない。このままじゃ、経営が立ち行かなくなるのではないか?」
と思っていたら、案の定、つぶれてしまいました。うわさによると、厨房設備の故障を直すお金がなくて、撤退したとのこと。
物価がどんどん上がっていても、価格に転嫁できない。こんなことが日本全国のあちこちで生じているのです。

なぜ、「節税」しているのにお金が残らないのか? 財務に強い社長だけが知っている“つぶれない”経営
はたけ
株式会社Infinity代表取締役。財務コンサルタント・税理士。年商2,500億円のグループ企業の一角、年商40億円の会社で、40歳にして財務と経理の部長を兼任。月次決算を1日で終わらせ、財務に関する提案をした結果、どんぶり勘定の経営状態から、数字を可視化し、年間4億円の経常利益を残せる体質へ改善。知見を買われ、上場企業の専務からヘッドハンティングされる。Xを始めると、フォロワー数12.6万人を突破するインフルエンサーとなる。財務コンサルタント・税理士として独立後、書籍を出版。お金を残せる財務と税務に詳しく、絶対に倒産させない体質に改善するコンサルタントとして活躍中。著書に『【超完全版】マンガでわかる 手取り倍増!ひとり社長の世界一ゆるい節税』(KADOKAWA)がある。

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なぜ、「節税」しているのにお金が残らないのか? 財務に強い社長だけが知っている“つぶれない”経営
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