本記事は、財務コンサルタント・税理士のはたけ氏の著書『なぜ、「節税」しているのにお金が残らないのか? 財務に強い社長だけが知っている“つぶれない”経営』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
どんぶり勘定から財務思考へ
経営は「税金」ではなく「財務」で判断しなければなりません。税理士は税金のプロですが、経営戦略や財務改善のアドバイザーではありません。
本当に必要なのは、経営者自身が財務の基本を理解して、キャッシュ・フローを軸に経営を考える力を身につけることです。
経営者にとっては何よりも重要な数字が、自己資本比率、損益分岐点比率、労働分配率、資金繰り、キャッシュ・フローです。
税理士ですら軽視しがちな数字ですが、これらを理解しなければ、どれだけ税理士が優秀でも、会社は安定しません。
なぜ税理士がこれらの数字を軽視するかというと、税理士の役割は「税金計算と税務申告」に限られるからです。経営者が「お金を残す」ための意思決定は、税理士には代行できません。
経営者は「税金を減らす」ことに目を奪われるのではなく、「会社にお金を残す」ことを第一に考えましょう。税理士を頼りつつも、自ら財務を学び、未来に備える力を持たなければならないのです。
■どんぶり勘定から脱却できない本当の理由
今、儲かっていますか? それとも、儲かっていませんか?
それは何を基準にして考えていますか?
今、お金が手元にどれくらい残っていますか?
そもそも、目標に向けたアクションができていますか?
これらをすぐに答えられないなら、どんぶり勘定だといえます。
「ダイエットしたい。でも体重計に乗ったことはありません」
こんな話を聞いたらどう思いますか?
「現状の体重を可視化できていないのに、目標の持ちようがない」と思うでしょう。今の状態を知らないなら、やっていることが合っているのかどうかもわかるはずがありません。
今、時代の流れはとても速くなっています。
あなたの会社でやってきたことは、今まではなんとか通用してきたかもしれません。ですが、これからも同じ手法が通じるとは限りません。
現状を把握していないと、「蓋を空けたら、倒産へのカウントダウンがすでに始まっていた」なんてことになりかねません。
ですから、定期的にポイントになる数字を把握しておくのは、経営者として必要なのです。
私の元へ相談に来られる方は、どんぶり勘定の会社が非常に多く、「確定申告が近いのですが、まだ何もやっていません」というケースがざらにあります。
これを改善するためには、経営者自身が変わらないといけません。
請求書や領収書を税理士事務所に送って処理してもらうという“丸投げ”をしている会社が数多く存在しています。さすがに年商5億円以上のクラスだと、正社員の経理スタッフが処理しているのでしょうけど。
しかし、肝心なのは、処理してもらった後です。
月次試算表や決算書を読み解いていますか?
私が税理士事務所のスタッフ時代、月次試算表を届けにいくと、それを受け取るだけで目を通さない社長がほとんどでした。質問があるかと思えば、「会社は儲かっているの?」と聞くくらい。
質問することがないので、経営者が数字を読めるようになることもありません。税理士事務所側も、社長から説明を求められることがないから、わざわざ仕事を増やすこともしません。
数字に強い社長は、税理士事務所がつくる月次試算表や決算書は「税務署向け」だと知っています。
実態や実情とは違うので、違和感があるのです。なので、様々な質問を繰り出してきます。すると、税務署向けの“よそゆき”の書類だけでなく、実態に合った書類が必要だと気づきます。
でも、税理士に任せっきりでは、税務署向けの数字しか提供されないので、実態を掴むこともなく、誰も数字を把握できません。
■顧問料が安いなら、サポートも薄い
税理士の顧問料は、年商1億円で月額5万〜10万円、年商10億円でも月額10〜20万円くらいが相場です。月20万円だとしても、業務量と見合っているかといえば、そうではありません。
年商10億円クラスの顧問税理士なら、処理するべき業務がとても多いからです。そのため、税務申告書の作成以外の仕事に手を出すことはありません。
顧問料の範囲内でしか、仕事をしようとしないのも当然です。つまり、割に合わない仕事はしません。
このような事情から、税理士は、財務に詳しくなる必要がありません。
お金を残して強い会社をつくるアドバイスをすることもありません。
つぶれない会社にできる知識もありません。
このことから、税理士に丸投げする危険性を十分にご理解いただけたと思います。
経営者が気にするべき4つの数
私が年商40億円の会社の財務部長だったころ、ある日課がありました。
毎日15時になったら、次の4つの数字を社長に報告することです。
① 本日の入金額
② 本日の出金額
③ 現金預金残高
④ 売上ゼロで何ヶ月もつか
「本日の15時時点での、入金額は〇〇円、出金額は〇〇円、現金預金残高は〇〇円、これだけあるから、◯ヶ月は売上ゼロでも大丈夫です」と報告していました。いつもより金額が多かったり少なかったりしていたら、その詳細データも毎日用意していました。
月に一度開催される経営会議では、社長がそれぞれの部署の数字をもとに、起きていることの詳細を質問していきます。社長が数字に強くなると、それぞれの部門長も意識がどんどん変わり、どこに注力すればいいのかが明確になります。製品力や商品力が高まり、利益率が上がっていくのも当然です。
■社長が数字に強くなれば会社が変わる
会社を変えるには、社長が自ら財務を学ぶのが一番です。
財務を社長が勉強して数字に強くなると、部門の責任者にも学ばせるようになります。すると、部長や課長レベルも数字を読むようになります。
さらに進んで、数字の意識が一般社員にも浸透すると、強い黒字体質ができ上がります。やはりトップダウンでしか、中小企業は変われません。中小企業が生き残れるかどうかは、社長の数字を読む力にかかっています。
とはいっても、今、まったく知識がない方が財務を学ぶのは大変でしょう。本書でもできる限りわかりやすくお伝えしていますが、個別の問題を解決するなら、やはり財務のプロに頼るのをオススメします。
私は財務コンサルタント兼税理士として、数字に強い社長を育て、黒字体質をつくり、お金を残せる会社をつくるのが、最も得意です。
私のような財務を得意とする税理士や、できれば財務コンサルタントを外部CFO(最高財務責任者)として雇うのがオススメです。“参謀役”として数字を見てもらい、常に数字の共有をするべきです。
どの数字を見たらいいのか、どこをどう分析したらいいのかを“参謀役”に教えてもらううち、自分でも数字が読めるようになっていくでしょう。
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