本記事は、河合 由紀子氏の著書『人を大切にするリーダーシップ これからのチームのつくり方』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

人を大切にするリーダーシップ これからのチームのつくり方
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KPIはこうすれば伝わる

KPI(重要業績評価指標)とは、目標にちゃんと近づいているかを確認するための“ものさし”です。

「今期の売り上げ目標は5,000万円」「顧客からの1件の問い合わせに対する回答時間は1営業日以内」などなど……、たくさんの数字が目標の中に埋め込まれていますよね。一見わかりやすいのですが、「5,000万円」達成の難しさは、年商10億円の会社が顧客なのか100万円の会社なのか。商材の単価が100万円なのか1,000円なのか、など環境的な要因で難易度が全く変わってしまいます。

そんな中で「妥当な目標値」はどうやって決めたらいいのでしょうか?

営業であれば年次、昨年の成績、担当顧客、担当商材など、開発者であれば売上に貢献する仕事の割合、専門的な業務であれば資格取得状況などが勘案されるかもしれません。
はっきりと、顧客と売上規模が想定できる場合はあまり問題にならないかもしれませんが、開発業務や運用保守、新規サービス開発や人材育成など、妥当性を客観視するのが難しい業務もたくさんあります。

どうやって、客観的に見ても納得感のある目標値を設定するか。そのためには、全体を眺めて、背景や根拠となるものを探します。そして、それに優先順位をつけて考えます。デザイン思考のクライテリアマトリクスを少し応用して考えてみます。難しく聞こえるかもしれませんが、クライテリアマトリクスとは、要するに「判断基準の星取表」です。
クライテリアとは、意思決定、判断、評価などを行う際の「基準」「尺度」「指標」という意味です。クライテリアマトリクスとは、まずクライテリアを決め、それに沿って判断をして物事を決定するというプロセスをとります。

たとえば、3年目の若手に新しい業務を担当させる場合の目標を考えてみましょう。まずは、4つくらいのパターンをつくってみます。1つ目は、教育という面を100%として、プロジェクトマネジャーのもとで手足として動いてもらうパターンです。

2つ目は、議事録や打ち合わせの調整など、専門的な技術や知識がなくても対応できる業務を担当してもらいながら、専門的なことを勉強してもらうパターンです。3つ目は、一部専門的なことを任せてOJTを取り入れるパターンです。4つ目は、全く人員に余裕がないので、最初から戦力として投入して、勉強しながら新しい業務に取り組んでもらうパターンです。
さて、どれが正解なのでしょうか? 教育という観点を重視して人員に余裕があれば1つ目のパターンかもしれませんが、かなりのゆとりがチームに必要です。だからといって4つ目のパターンにでは、品質や納期、コストなど守らなければならない顧客との制約を考慮すると、かなりのリスクを抱えます。顧客に対して、初めての仕事だから許してくださいは通用しません。むしろ、顧客からは他でやってくださいと叱られ、信用を失います。
塩梅の良い落とし所を探るために、顧客との制約やチームの制約、本人のモチベーションなど考慮が必要なことのTOP3〜5を書き出します。そして、書き出した考慮が必要なポイントを横軸に、先ほどの4つのパターンを縦軸に取ります。

たとえば、横軸に「納期を守る」というお題を入れた時、1つ目と2つ目はマネジャーがコントロールできるので5点、3つ目は1人で取り組む部分に遅れが発生する可能性があるので3点、4つ目は破綻しそうなので1点、というように、それぞれの案を評価して点数を書き入れていきます。点数は5点満点くらいだと足し算が楽です。最終的に縦に集計して各パターンの総得点を出し、最も高いものが、塩梅の良い落とし所となります。
KPIは正解を探す作業ではありません。
複数の案を並べ、何を優先するかについて対話することに意味があります。大切なのは、決め方に納得できているかどうかです。
最終的な微調整はリーダーとして必要かもしれませんが、これで大枠は外から見ても妥当なKPIを設定することができます。
細かな計算も時には必要ですが、その前にしっかりと判断軸をつくって納得感のある土台の作成が大切です。

人を大切にするリーダーシップ これからのチームのつくり方
(画像=人を大切にするリーダーシップ これからのチームのつくり方)
人を大切にするリーダーシップ これからのチームのつくり方
河合 由紀子(かわい・ゆきこ)
1977年、愛知県名古屋市生まれ。情報システム学修士、経営学修士。
IT業界やアドテク業界でプロジェクトマネジメントや人材育成に携わる。その後、ベンチャー企業での社長補佐やCxOの伴走、IPOを目指す企業の事業推進などを経験。
現場と経営のあいだを行き来しながら、「人が自然と動くチームとは何か」を問い続けてきた。
現在は東京情報デザイン専門職大学の非常勤講師として教壇にも立つ。
現場で感じた小さな違和感や気づきを大切にしながら、「管理」ではなく「関係」から動くチームづくりを日々探究。
理論と実務の両面から、会社員・社会人のための「ウェルビーイングな仕事学」研究会を共同主催し、対話を重ねている。

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人を大切にするリーダーシップ これからのチームのつくり方
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