本記事は、河合 由紀子氏の著書『人を大切にするリーダーシップ これからのチームのつくり方』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
チームに届ける伝え方で、動き方が変わる
ここまで、チームの目標を作成し、メンバーにどう伝えるかのシナリオを練り上げてきました。このプロセスをAIに任せれば、論理的で美しい文章をあっという間につくり出すことができます。しかし、それだけでは足りません。
なぜなら、AIは論理を整えることは得意ですが、熱量や感情までは乗せてくれません。
メンバーを動かすためには、情報を単なる事実ではなく、相手の心に響くメッセージに変えることが不可欠です。
声の震え、表情の変化、目の輝きといった非言語的な情報は、言葉に説得力を与え、熱意を伝えます。また、相手の反応を見ながら話すスピードを調整したり、冗談を交えたり、質問を投げかけたりするリアルタイムのコミュニケーションも、メンバーを巻き込むためには欠かせないスキルです。
では、熱意を持って、そして相手に伝わるように話すには、どうすればいいのでしょうか。
その答えは、練習と工夫を重ねることです。
たった数分の面談のために練習が必要なのかと疑問に思うかもしれませんが、プレゼンテーションの天才として知られるスティーブ・ジョブズも、時間をかけて入念に練習をしていたという話は前に書いた通りです。
プレゼンの名手は、決して天性だけで名を成したわけではなく、見えないところで努力をしています。チームのために、メンバーのために練習をすることが、ここまで築いてきたシナリオを、彼らの心にきちんと届けられるか否かの分かれ目になります。
まずは、一度声に出して話してみましょう。
面談時間の中で何分間で何を伝え、どれくらいの時間を質疑応答や調整に使うかを事前に検討します。
プレゼンの時間を決めたら、特に何について力を入れて話すのか作戦を立てましょう。書いてあることをそのまま読んでも、言葉の真意は伝わりません。リーダーは時間をかけてつくってきた内容ですが、メンバーは初めて聞く話です。
初めての人でも理解できるように話すには、複雑な表現を避け、できる限り簡潔な言葉で語ることを心がけましょう。
また、一方的に話すのではなく、メンバーからの質問や意見をもらう時間を組み込み、対話によって理解を深めるようにします。
あえてすべてを語らず、質問を促すポイントを設計することも有効です。対話から生まれるメッセージは、より強く相手の心に残ります。
複数のメンバーに個別に話す場合には、使う言葉に一貫性を持たせることも大切です。話す相手によって内容を変えることはなくても、言葉が異なると、チームとしてのまとまりがなくなってしまう原因になります。
また、同じことを何度も話していると、だんだん言葉を省略してしまいがちですが、全員に同じように伝えるように注意しましょう。メンバーに伝える前には、文章で練り上げたストーリーを、実際に声に出して語る練習をしましょう。
ストーリーにあなたの熱意を乗せることが、メンバーの心を動かす一番の力になります。
熱意を持って話すために、言葉のチョイス、ジェスチャー、声のトーン、話すスピードなども考慮しながら練習をしてください。
練習の際には、バディや上司に一度聞いてもらう、あるいは自分の語る姿を録画して見返してみることをおすすめします。
どんなに良いストーリーも、相手に伝わらなければ意味がありません。そして、伝えるためには、生身の人間が持つ「想い」と「熱量」が不可欠です。
ここでしっかりと伝えることができれば、メンバーは目標を単なるノルマではなく、自分ごととして捉え始めます。そうなれば、後は彼らが自ら動き始めるのを見守り、サポートしていくだけです。この数分の対話が、チームが自ら動き出すきっかけになるのです。
IT業界やアドテク業界でプロジェクトマネジメントや人材育成に携わる。その後、ベンチャー企業での社長補佐やCxOの伴走、IPOを目指す企業の事業推進などを経験。
現場と経営のあいだを行き来しながら、「人が自然と動くチームとは何か」を問い続けてきた。
現在は東京情報デザイン専門職大学の非常勤講師として教壇にも立つ。
現場で感じた小さな違和感や気づきを大切にしながら、「管理」ではなく「関係」から動くチームづくりを日々探究。
理論と実務の両面から、会社員・社会人のための「ウェルビーイングな仕事学」研究会を共同主催し、対話を重ねている。
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