本記事は、近藤 雅斗氏の著書『エンタメビジネスの不都合な事実』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
5.8兆円市場の裏に潜む「原作枯渇」という現象
経済産業省の「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」(2025年6月)によれば、2023年時点で日本発コンテンツの海外売上は5.8兆円であり、半導体産業の5.5兆円をすでに超える規模となっています。現時点で規模が大きいことに加え、ここ10年で3倍にも伸長したことが今後の成長分野として期待される要因です。
とはいえ、「エンタメ産業」と一括りにしてもさまざまあります。ざっくり分類すると次の5つのカテゴリに分けられます。
- 映像(実写映画、テレビ、ビデオ、配信)
- アニメ
- ゲーム(家庭用、オンライン、パソコン、スマホ)
- 出版
- 音楽
これらのうち、今後の将来性も含め、エンタメ産業を牽引することになるのは「アニメ」の領域です。
アニメは収益モデルとして、映像自体で稼ぐのではなく、グッズなどを中心とするマーチャンダイジング※1による収益を上げる構造となっています。さらにアニメの主題歌などの音楽が広がり、アニメIPをもとにしたゲームなどにも広がります。
※1 小売業や流通業で顧客が求める商品を「適正な数量、価格、タイミング、場所」で提供するための商品政策や販売計画のこと。
こういった形で、エンタメ産業はセグメントに分かれつつも相互補完の関係にあり、そのなかで、中核に位置するのがアニメです。
NetflixやCrunchyroll※2(クランチロール)など、アニメの視聴インフラが世界で整いつつあるなかで、まだまだ成長余地はあります。ただ、同時に課題も存在します。
※2 世界200以上の国と地域で5万エピソード以上の日本のアニメを配信する、ソニーグループ傘下の世界最大級の公式アニメ配信プラットフォーム。
一つは、これまでも度々報じられている制作環境の問題です。
アニメーター不足の解消はなかなか難しく、国内だけで制作体制を維持できていないのは間違いなくリスクと言わざるを得ません。
今後、高齢化も進むなかで失われていく技術も多く存在するでしょう。とはいえ、これに関してはすでに問題として顕在化していることもあり、少しずつ対策も練られている状況です。
さらに大きな問題として存在するのは、「原作枯渇」の問題です。
現状、アニメの8割以上が原作付きの作品です。なぜこうなるのかはリスクの問題が大きいと言われています。
オリジナルのアニメは出してみなければ売れるかはわかりません。数億〜数十億の制作費がかかってしまうアニメ事業において、そのリスクはあまりにも大きいものです。
しかし、これが原作付きの場合、その原作がどの程度売れているかで、一定の売上見込みを立てることができますから、出資者を集めやすく、制作が進みやすくなるのです。
アニメにおける原作、いわゆる「IP(Intellectual Property= 知的財産)」の存在はとても大きなものではありますが、アニメが数多く作られるなかで、この原作自体が足りなくなるのは当たり前の話ではあります。
しかし、この「原作枯渇」という現象は、エンタメ産業におけるすべてのセグメントで同様の問題を見出すことができます。
もったいぶった言い方になりましたが、その問題とは「制作ロジックと投資ロジックの乖離」、つまり制作者と出資者のロジックの違いです。
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