本記事は、近藤 雅斗氏の著書『エンタメビジネスの不都合な事実』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

エンタメビジネスの不都合な事実
(画像=Yingyaipumi/stock.adobe.com)

成功の「型」をなぞっても、二番煎じにしかならない理由

私が現場で出会う多くの制作チームが、過去の成功モデルを次の作品でも当てるためのテンプレートとして模倣しがちでした。
「このヒット作を分析して、フォーマット転用すれば次も行けるのでは」と、期待してしまうのも理解できます。
しかし、はっきり言っておきましょう。ヒットとは簡単にまねできるものではありません。むしろ、まねようとすることでかえって、ヒットとはほど遠い結果となる可能性が高まります。
過去の成功作が持っていた熱量・接点・拡散構造・文脈は、あのときあの市場であの瞬間があって初めて成立したものです。
一点だけを抽出して別の場に置き換えても到底うまくいくことはないでしょう。
なぜなら、「ユーザーにどう強く体験させたか」「どんな物語がユーザーに訴えたか」「どのように布教者= ユーザーが動いたか」といった要素がその成功を支えていたからです。

実際、研究によれば、ヒット現象には非線形性が強く、個々の人の意思決定やネットワーク効果、環境変化などが複雑に絡みあって生じるものだというモデルも提案されています。つまり「この型を使えば当たる」という単純な方程式は通用しないということです。

模倣がうまくいかないもう一つの理由として、「既視感」が挙げられます。
ヒットとは新鮮さや驚き、文脈のズレを含んだ体験でもあるため、フォーマットだけをなぞってもその体験密度は下がってしまいます。だから、成功要因を抽象化して、自社なりの再創造を行なう必要があるのです。

私が伝えたいのは、ヒットをまねするのではなく、ヒットが持っていた因子を読み解き、自社の環境、未来のユーザーへの文脈に合わせて再構築することの重要性です。

たとえば、あるヒット映画の成功要因が「公開直後のユーザーSNS拡散+ 物語の伏線回収構造+ ライブ体験型の演出」であったとします。それをそっくりそのまま自社の企画に組み込むだけでは、当たった映画と同じ結果にはならないと思いませんか?
その映画と自社の制作体制、配信チャネル、ターゲットの行動様式、競合状況は違うからです。
また、そのタイミングも無視できません。
同じフォーマットを当てはめても、発表時期、社会状況、技術トレンドが異なれば反応は激変します。つまり、まねできない理由の一つに、同じフォーマットでも条件が変われば結果が変わることが前提にあります。

ただし、「ヒットはまねできない」という言葉は諦めの言葉ではなく、正しい設計の起点だということを忘れないでください。
模倣をやめて、成功因子を抽出し自社事業・ユーザー接点・配信経路に照らして再構築する。こうした姿勢を持つことが、ヒットを偶然から設計に変える第一歩となります。

エンタメビジネスの不都合な事実
近藤 雅斗(こんどう・ひろと)
株式会社BookBase代表取締役社長/ダンガン文庫編集長。20歳から起業家として活動。現在は「出版から日本のコンテンツ業界を再構築する」をミッションに次世代出版社BookBaseを経営している。ラノベを愛する編集者で、ダンガン文庫を設立する。アニメ、動画配信、ゲームビジネスなどにも詳しく、Xでは「オタクペンギン(社長)」名義でさまざまなエンタメの業界事情を発信している。

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