本記事は、近藤 雅斗氏の著書『エンタメビジネスの不都合な事実』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

エンタメビジネスの不都合な事実
(画像=Alex_from_the_Rock/stock.adobe.com)

小さく生んで、大きく育てる

そもそも「企業」という箱のなかでのコンテンツ制作は相性が悪いと言わざるをえません。人が増えると、それだけで管理コストが膨大に増えます。
その上、実用性を求める工業製品と異なり、コンテンツが目指す先は抽象的な「面白いもの」という概念です。いくら偉い人が集まって会議をしたところで、それを決めるのは不可能ですし、その上「売れるかどうか」は博打です。

私もこれまでいろいろなプロジェクトの立ち上げに取り組んできましたが、小さなチームのほうが、何かをは始めるときの熱を強く込められると感じています。理由は単純で、人数が少ないほど「好きだから作る」という気持ちが根っこに残りやすいからです。構想が浮かんだときに「まず試してみる」ことができる自由さがあり、アイデアの芽を枯らさずに育てやすい。リスクを背負うことへの許容度も、判断のスピードも、変化への対応力も、小さいチームのほうがずっと速いのです。

一方で、大きな組織では企画が通るまでのルートが長くなります。承認や調整が増え、「まずやってみる」前にいくつもの確認が入ります。一般的な仕事であれば、この「確認」はとても重要でしょう。しかし、コンテンツを作る場合においては、これがマイナスになることがあります。

前例のないコンテンツを作る場合、作り手の感覚がとても重要です。「これはまだ見たことがない」とか「なんとなく面白そう」というのが重要な要素を作り出す要因になるからです。しかし、ここに細かく「確認」を入れてしまえば、作っている人間は冷静に「よく考えれば面白くないな」となりかねません。
もちろん、実際にやってみても面白くない場合もあります。しかし、「未体験の面白さ」というのは常に説明できない絶妙なバランスを保っていたりします。だからあえて小さいチームや個人からスタートさせるという方法がうまくいきやすいことがあります。

そこで注目されている領域には、インディーゲーム市場があります。2024年時点で世界のインディーゲーム市場は約4.85億ドル(728億円:以下1ドル150円換算)で、2029年には約9.5億ドル(1,388億円)に近づくと予測されています。
市場の年平均成長率は約14.6%ですが、これは、小さなチームや個人が作った「自分たちの好きなゲーム」が、デジタル配信プラットフォームを通じて一定の商業性を持ちはじめている証拠です。
つまり、SNSを通してファンの反応を得られれば、たとえニッチなコンテンツであっても支持を集められる時代になりつつあるということです。
ただ、もちろん「好き」だけでは続きません。
商業としての持続性を求めたり、読者やファンに知ってもらって届ける手段や、企画段階で客観的な意見を入れながらブラッシュアップをしていく必要があります。

私自身もライトノベルの編集者として作品を見る場合、「自分にとって面白い作品かどうか」だけではなく、それが世間ではどう響くかを考えながら編集します。
「自分にはこれが響く」という直感を大切にしながら、読者の反応も想像しています。これらを両立できなければ、独りよがりの創作でしかなく、世界に広く普及する作品にはなりえません。
こういった観点から、ヒット作を生み出すにはクリエイターだけではなく、編集者やプロデューサーが必要不可欠で、広く届けるためには組織の力を使わないといけません。つまり、熱狂を生むコンテンツを作りたいと本気で思うなら、「小さなチームが試し、大きな組織が届ける」という構造を作り出すことが最も重要ということです。

エンタメビジネスの不都合な事実
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エンタメビジネスの不都合な事実
近藤 雅斗(こんどう・ひろと)
株式会社BookBase代表取締役社長/ダンガン文庫編集長。20歳から起業家として活動。現在は「出版から日本のコンテンツ業界を再構築する」をミッションに次世代出版社BookBaseを経営している。ラノベを愛する編集者で、ダンガン文庫を設立する。アニメ、動画配信、ゲームビジネスなどにも詳しく、Xでは「オタクペンギン(社長)」名義でさまざまなエンタメの業界事情を発信している。

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