本記事は、吉川 ゆり氏の著書『仕事もお金も情報も手に入れる 人づきあいの戦略書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
自分のためではなく、相手のためにコミュニケーションを取る
私が長年一緒に働いていたボスは、何かあったらすぐに会議室に人を招集し、ホワイトボードに図解をしながらブレインストーミングをする人でした。忙しい時に招集されて、言葉で言ったら分かることを、いちいち図解をする手間を取るのは面倒だなあと思っていました。同僚の中にはイライラして、このボスは仕事ができないと悪口を言い出す人もいました。しかし、これも単にコミュニケーションスタイルの違いなのでした。
私たちはつい、自分にとって話しやすい方法や、自分が納得できる説明の仕方で会話を進めがちです。しかし、コミュニケーションの本質、すなわち「理解しあい、つながり、価値を与え合う」ということに立ち戻ると、コミュニケーションとは相手にとって話しやすい方法や納得できる説明の仕方で行うものです。
NLP(神経言語プログラミング)には、コミュニケーションがうまくいかない時は、伝達する側の問題だという前提があります。自分のスタイルで話してみて伝わらない場合は、相手の理解力がないのではなく、こちらの伝達方法を変えるべきだという考え方です。
本当に言いたいことが伝わるのは、「自分のスタイル」を押し通した時ではなく、「相手のスタイル」に歩み寄った時です。
どういう伝え方をされると納得できるのか、心が動くのか、というのは人によって違います。ここでは、何かを説明して分かってもらわなければいけない時、相手の理解の仕方に合わせてどういう要素を入れればよいかをお話しします。
理解の仕方は「思考のフィルター」と呼ばれます。思考のフィルターは4種類に分類されます。
- What型:「何を」で理解する人。事実や定義を知りたい。
- How型:「どのように」で理解する人。手順や具体的な方法が知りたい。
- Why型:「なぜ」で理解する人。理由や背景がないと納得できない。
- What if型:「これをどのように応用できるか」で理解する人。応用や可能性にワクワクする。
分かりやすいように、事例で説明しましょう。
【思考のフィルター別伝え方】新規プロジェクトの提案
あなたが上司に新しいプロジェクトを提案するとします。同じ内容でも、相手がどの思考のフィルターを持っているかによって、伝え方を工夫する必要があります。
(1)What型(事実・定義重視)
- 特徴:「それって具体的に何ですか?」が気になる
- NGな伝え方:「これをやれば未来が変わります!」と抽象的に盛り上げる
- 効果的な伝え方:「このプロジェクトは、顧客管理システムを刷新する取り組みです。対象部門は営業とカスタマーサポートです」
(2)How型(方法・手順重視)
- 特徴:「どうやるの?」が分からないと不安
- NGな伝え方:「とにかくやるべきです!」と結論だけ押す
- 効果的な伝え方:「最初の3カ月は現行システムの調査を行います。次にパイロット導入をし、半年後に全社展開します」
(3)Why型(理由・意義重視)
- 特徴:「なぜそれをやるのか?」が分からないと納得できない
- NGな伝え方:「このプロジェクトはA社との協業です。予算は……」と詳細から話し始める
- 効果的な伝え方:「今の市場ではデジタル化が急務です。このプロジェクトは、会社が3年後も競争優位を保つために不可欠なんです」
(4)What if型(可能性・応用重視)
- 特徴:「もしこうしたら?」「応用は?」にワクワクする
- NGな伝え方:「計画通りにやりますので、質問は後で」
- 効果的な伝え方:「もしこれが上手くいけば、海外市場にも展開できますし、AIを取り入れる余地もあります」
相手の普段の質問などから、相手の思考のフィルターを推測してください。そして、次に何かをしてほしい時は、まずその思考のフィルターを使って説明してみてください。もし普段よりスムーズにいったら、それが、相手が一番重要視している思考のフィルターです。
プレゼンなど、複数の人に話す場合は、あらかじめこの4つを組み込むと、そこにいる全員に対して説得力が生まれます。私がプレゼンを作る時は、この4つを書き出し、どういう順番で話すかを考えます。もしあなたがマネージャーだったら、この4つでプレゼンテンプレートを作っておけば、新人でも納得感のあるプレゼンができるようになります。
実は本書も、このフレームを使って書かれていることに気づいた人もいるかもしれませんね。
社会を変える土台としての「人の変化の構造」を体系化し、経営者・リーダー・医療者・教育者・芸術家など変化を起こす人材を育てている。
大阪大学人間科学部卒業後、米国の大学院で国際行政学修士号取得、米国の金融業界にてメガバンクヴァイスプレジデント、フィンテックシニアディレクターを歴任後、コーチとして独立。
現在は国内外の管理職・経営者・専門家に向けて、変容的リーダーシップと人間成長の技術を提供している。
著書に『なぜ、あなたは時間に追われているのか「時間がない」から解放される15の仕組みと思考法』(日経BP)。
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