本記事は、吉川 ゆり氏の著書『仕事もお金も情報も手に入れる 人づきあいの戦略書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

仕事もお金も情報も手に入れる 人づきあいの戦略書
(画像=Bbuilder/stock.adobe.com)

難しく感じる相手こそが、あなたの可能性を広げてくれる

私の会社員としての最後の職場は、サンフランシスコのスタートアップでした。入社した時はまだプロダクトを世に出したばかりの小さな会社で、時価総額の評価も低く、みんながとにかく会社を軌道に乗せることに必死になっていました。スピードを上げて成果を出すことだけを考えていれば良い、といった感じで、社内の文化のようなものは特にありませんでした。しかし、会社が大きくなるにつれ、だんだん社内政治のようなものが生まれてきました。そして、ある時入社してきた若い社員Xの登場で、空気が変わりました。
その人は、周囲の人たちの不満や期待をとても上手に拾い上げるタイプでした。気が付くと、チームの中に様々な対立が生じていました。
当時の私はとにかく不平不満が多く、かつ自分の能力にも限界を感じていたので、その政治争いみたいなものに完全に巻き込まれてしまいました。Xも嫌いだし、Xを重宝している会社もだんだん嫌いになっていきました。毎日会社に行くのが辛くてたまりませんでした。私自身も長年お世話になった人に対して酷い態度をとってしまい、人間としての弱さが浮き彫りになった事件もありました。
私は、価値観が全く違い、頭も切れるし口もたつXに対して、とにかく難しさを感じていました。彼と話す時はいつも気を張っていました。そういう自分を守るために、相手の倫理観を責めて悪者にすることで自分を保っていました。でも、実はこのXこそ私の人生の恩人だったのです。

というのは、この人がいなければ私はいつまでもずるずると得意ではないことを仕事にし、好きでもなく価値観にも合っていない商品を売る会社で、全く誰の価値にもならないような作業を繰り返して毎日を終えていたと思うからです。彼のおかげで、「私はこの業界でこれから何年もこういう人と戦っていくのは無理だ」とはっきり分かり、ではこれからの人生どうしたいのか? という根本的な問いを毎日自分に投げかけるようになりました。その答えが出るまで、突き詰めざるをえない崖っぷちに立つことができました。そういう場所に立って初めて、これまでの快適な生活よりも、これからの未知の世界のほうが何倍も大事であるということに気づき、行動を起こすことができたのです。

また、そういう心持ちになったからこそ、先にお伝えした「認識は投影」というコンセプトがすんなりと納得でき、Xではなく自分自身に集中することができたのです。彼のおかげで、自分が無意識に持っていた制限的な思い込みや恐れに気付くことができました。
その結果、その後数年間で、全く未知の業界、市場で、未経験の仕事をゼロから立ち上げて事業を軌道に乗せることができました。
この数年にできたことを振り返ると、Xにも当時の会社にも、感謝してもしきれません。それまでの20年以上、眠ったように生きていた私を揺り起こし、自分の望む人生へと舵を切ることを可能にしてくれたからです。
今まで色々な人間関係を築いてきて、素晴らしいアドバイスをくれるメンターにもたくさん出会いました。しかし、いつも人生を根こそぎ変えてくれたのは、苦手だと感じる人、難しいと感じる人だったかも知れません。人間は、未知の快よりもよく知っている不快の中にできるだけ長くいたいという性質があるため、難しい人が出現しない限り、いつまでも、もうぬるくなってしまったお湯の中にいたいと思ってしまうのです。

あなたの周りで、難しい人がいるならば、その人たちはあなた自身の中にある何かを見つけるための鏡であり、先生であり、恩人です。これがこの章の冒頭でご紹介した、ルイーズ・ヘイさんの言葉の意味です。
難しいなと思う人は、私たちの中にある何かを呼び起こします。その呼び起こされたものが、あなたにとって、人生で本当に大切なことだったりするのです。だから周りに難しいなと思う人が現れたら、まずは「認識は投影」を思い出して、「自分の中に何があるのだろう? ここから自分に関して、何かを学べるだろうか?」と、好奇心を持つ癖をつけていただけたらと思います。それは相手のためではなく、あなた自身のためです。あなたが自分自身の中にある本心や、まだ見ぬ可能性の種に気付くことができたら、難しい人は、役目を終えてあなたの人生からいなくなる、またはその人が変わらなくても気にならなくなる、ということが起こります。コーチングのクライアントの中には、そういう難しい人が難しい相手ではなくなり、自分の最大の理解者になった、という人もいます。そこまでいかなくても、みなさん口を揃えて「もう会いたくない人でも、自分のことを教えてくれた相手に感謝している」とおっしゃいます。

ぜひ、今日からオープンマインドで苦手な人との関係性を築いていってください。

仕事もお金も情報も手に入れる 人づきあいの戦略書
吉川 ゆり(よしかわ・ゆり)
エグゼクティブコーチ/Mental Breakthrough Coaching™ スクール代表。サンフランシスコ在住。
社会を変える土台としての「人の変化の構造」を体系化し、経営者・リーダー・医療者・教育者・芸術家など変化を起こす人材を育てている。
大阪大学人間科学部卒業後、米国の大学院で国際行政学修士号取得、米国の金融業界にてメガバンクヴァイスプレジデント、フィンテックシニアディレクターを歴任後、コーチとして独立。
現在は国内外の管理職・経営者・専門家に向けて、変容的リーダーシップと人間成長の技術を提供している。
著書に『なぜ、あなたは時間に追われているのか「時間がない」から解放される15の仕組みと思考法』(日経BP)。

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